俺と幼馴染と妹のトコトン残念な日常
今日もいい天気だ。こういう日はやはり洗濯に限る。
父さんは仕事、母さんは今日は朝からパートに出ている。美奈が起き出した気配は…ない。ヨシ!
昨日ベッドの下に押し込んだ洗濯物の袋を手早く取り出す。厳重に隠したパンツの袋を極秘の隠し場所から取り出して、朝まで穿いてたパンツを追加で押し込む。
準備完了!タイムアタックスタート!
部屋の扉を開き、両手に袋を持ち、音を立てないように階段を最速で駆け下りる!大きい袋は洗濯機の前に放り投げ、風呂場に飛び込む!ここまで25秒!
小さい方の袋に入ったパンツを風呂場にブチまけ、蛇口を捻って水で濡らす!同時に液体せっけんのボトルを手に取りシュッ、シュッ、シュッ、シュッ!
たっぷりと石鹸を付けたらガッシュ、ガッシュ、ガッシュ、ガッシュ!ここまで50秒!自己ベスト!
「お兄ちゃん、何してるの?」
「ひいいいいいいーーーーー!」
「わ、ビックリした!朝から何してるの?」
「みっ… 見ればわかるだろ、洗濯だよ」
「風呂場で?」
落ち着け俺!ここは兄の威厳を示しつつ事態を取り繕わなければならないっ!
「美奈。お前は汚れの激しい物を洗濯機にそのまま放り込むのか? 違うだろ? 汚れ物は手洗いするのが常識ッ! 俺の事はもういいっ! お前こそ何やってんだ!」
「朝ごはんだよぅ。お兄ちゃんの分もチンするから、洗濯は後にして一緒に食べよ!」
しまった油断した!ダイニングにいたのか!
「わかった!ちょっと待て!」
俺は流水ですすいだパンツを手早く絞ると2階に駆け上がり、自室のベランダの物干しに手早く吊るす。
ここまで洗ったら他の洗濯物と一緒に洗濯機に放り込んでもいいとは思う。しかし以前、下洗いをせず洗濯機に放り込んでシャツに匂いが移った時のトラウマがあって、どうにもその気になれない。
これでよしっ!作戦完了!
さわやかな達成感に満足しつつ顔を上げると、洗濯カゴを持ってベランダに出て来た真由美とバッタリ出くわした。
思わず思い出す、夢でキスした真由美の、あの唇の感触、甘い舌…
『おはよう』の一言も忘れて、ついじっとその口元に見とれていると、真由美は顔を真っ赤にしてプイと向こうを向いてしまった。
「じろじろ見ないでよ。エッチ」
テレパシー、テレパシー、テレパシー。うん、怒りしか感じない。そりゃそうだ。夢の中の真由美はイチャラブ恋愛ゲームをやってて寝落ちした俺が夢に見た、俺の夢の登場人物。あれは俺の願望が生み出した俺に都合がいいだけの架空のキャラクター。現実はこうなんだ。
「あのさ、そんなとこに干してたら不用心じゃない?」
「だから、女の子の洗濯物を何でそんなにジロジロ見るの?スケベ」
「そうじゃなくてさ、ここって風が強いから、たまに飛ばされてなくなる事もあってさ…」
「山田君には関係ないでしょ!」
「あぁ!あぁ!俺はどうせエッチでスケベですよ!」
どうしようもなくムカムカした。エッチとか、スケベとか、それはどうでもいいんだ。『関係ない』って何だよ。俺が話しかけても、アイツときたら最後には決まってそうだ。これが出たら本当に俺と真由美は何も関係ないって思い知らされるんだ。
「お兄ちゃん聞いてる?それでね!」
俺の朝飯をチンしながら美奈が熱心に話しかけて来る。でも俺の頭の中は真由美の事ばかりで話半分、いくらも頭に入らない。いくら夢の中で真由美と愛を深めても、現実とのギャップが激し過ぎて目を覚ますと落ち込まずにいられない。
「ごめん。何か今、気分が乗らなくて」
「落ち込んでるの? 美奈、心配しんぱーい!元気出して! ほらっ!キラーン☆ お兄ちゃんは元気になるー、元気になるー、元気になるー」
美奈はいつものように派手な格好でベルトをキラキラ光らせながら横ピース。こいつを見てると本当に元気が出るから不思議だ。
「ありがとな、心配してくれて。少し元気が出たよ」
「良かった。美奈、本当に心配してるんだからね! でさ、さっきの話だけどー、アフロディーテさんって、すっっっごく綺麗な占い師さんがいてー、恋占い専門でー、すっっっごく良く当たるんだって! 『月刊モー』の来月号で特集するくらいだから本物だよ! 真由美おねえちゃんと一緒に行くといいよ! キラリーン☆」
「わかったよ、考えとくな」
美奈よ、あの雑誌に載るのはホンモノはホンモノでも違う方向性のホンモノだと思うぞ。




