ドキドキワクテカの勉強会 8
「え〜っと、確か…加納姉妹の屈辱、だっけ?関係した人名は…駄目だ!もう加納姉妹しか出て来ない!」
「正解はカノッサの屈辱、ローマ教皇グレゴリウス7世、ローマ王ハインリヒ4世ね。語呂合わせで覚えてもホントの答えが出なきゃ意味ないよ?」
「ぐぬぬ…」
「でも一応読んでたのね。あーーーっ!」
「ど、どうしたんだ?」
「ケンちゃん騙したわね!」
「え?」
バレた?
「速読法だったら私だって出来るのよ。ザーッと斜め読みして漢字や公式だけ拾い、ひらがなの部分は推測で埋める。でしょ?」
そんな超人的な事やっとるんか。
「でもそれでコレ全部1秒で読めるわけないよね?」
お…仰る通りでございます。頼むからそれ以上突っ込まないで!
「つまり!こうなると予想して昨日全部読んで来たのね!」
人差し指をビシッ!と立てて俺に向け鋭く指摘する真由美。違います。
「なーんだー。ケンちゃん結構やるじゃな〜い」
真由美は腕組みをして、うん、うんと頷いている。何か勝手に納得している様子だ。
「本当はやれば出来るとは思ってたけど流石ねー」
まるっきり違います。
「でもケンちゃんが本気出して、私が一緒の所に行けなくなったらソレはソレで困るかな〜」
「何のこと?」
しかし真由美が答える前に、驚いた事に襖がメキメキと音を立てて部屋の中に倒れて来た。
「あーっ!お父さんお母さん覗いてたわねー!もー信じられなーい!」
「おほほ…ケンカしてるみたいだから心配したのよ〜」
「賢人君もシッカリ勉強して来たようだし、昔みたいに下で何か飲まないか?おじさんの淹れたコーヒー、もう飲めるようになっただろ?」
「ええ…あの時はすいません」
おじさんがサイフォンで淹れてくれたレギュラーコーヒー。魔法みたいで目が釘付けになったけど、小学生の俺には苦過ぎて一口で地面に吐き出しちゃったっんだよな。
「お昼ご飯、食べてくわよね?おばさんず〜っとケンちゃんに来て欲しかったのよ〜」
「じゃあウチに電話しときますね。食べてくから昼はいらないって。もしもし…」
「また処分品のお肉じゃないでしょうね?恥ずかしいったら!」
「おほほ〜大丈夫〜今日のは半額じゃなくて3割引きのだから〜」
真由美とおばさんが何やらコショコショ言ってる横で、俺は手早くウチに電話を入れた。美奈は『お兄ちゃんだけご馳走なんて狡いズルーい!』なんて騒いでたけどね。
小学生の頃…土日には父さんは仕事、母さんはパートで出払ってウチには誰もいなかった。あの頃はいつもこうしてたっけな。
ああ…俺は本当に帰って来たんだ。真由美といつも一緒にいた、懐かしいこの家に。




