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幼馴染のツンツンな委員長が、異世界では俺にデレデレなんです  作者: 松林ゆきひろ
女の子の部屋に誘われるって最高だよね
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ドキドキワクテカの勉強会 1

この前に『大脱走』を追加しました。未読の方はそちらから読み直しお願いします。

「お早うございまーす」

 ここは真由美んちの母屋の手前に隣接する、倒壊寸前・築年数不明・木造平屋建てのあばら家『我楽多堂古書店』


 長年の間に黒い屋根瓦は歪んで所々が落ち、コゲ茶色に変色し痩せて木目の浮き上がった壁板は節が抜けて節穴があき、何枚かは剥がれたまま放置され隙間からペールオレンジの土壁を見せている。

 その土壁も所々、大きくひび割れて中に練り込まれたワラでかろうじて繋がっている始末。本当にいつ建てたんだろう?


 右奥には半透明の、今では若干薄茶色に変色したプラの波板の(ひさし)の下に粗大ゴミ置き場から拾って来た年代物の木のテーブルと、折れた足を継ぎ直して長さが変わり座るとカタカタいうこれまた年代物の木の椅子やベンチ。

 小学生までは俺と真由美と美奈の3人で古本屋の中を隠れんぼしたり、うっかり崩した古本や古物の山から掘り出した宝物を清水のおじさんに鑑定して貰ったりしてたなー。

 長い長い長い時間いっしょに遊んだ後で、と言ってもたかが数時間のハズで今となっては何故(なぜ)あんなに長く感じたかもわからないんだけど、喫茶スペースから声がかかるとおやつの時間。

 古本の間を我先に走り抜けると、そこにはエプロンを付けた綺麗で優しい清水のおばさんが、スイカとか、毒々しい緑色の安物のメロンサイダーにこれまた安物のバニラアイスを載せた特製クリームソーダとかを3人分用意してくれてて。美味しかったな…

 この建物は本当に何も変わってない。いや、一つだけ変わった事があるな。あの頃、この古本屋は3人で1日中探検したり走り回ったりするほど広かった。本棚は身長の何倍も高くそびえて。それが今では全てがすっかり小さく縮んでしまった。

 もちろん変わったのは俺達の方だ。大人と変わらない体になった今、思い出と現実のギャップには驚かされる。テッペンまで得意げに登頂したあの高かった棚に、今では手が届くんだからな。

 ああ、その後で棚を倒しちゃったんだよな。おじさんが崩落した古本の山から俺を救助し、おばさんが絆創膏を貼ってくれた。ゴメン。二人とも何も怒らないで片付けしてくれたね。


 そう。俺達はあれから三人三様に変わってしまった。だが俺は今再び帰って来た。真由美のいない我楽多堂古書店じゃなく、いつも真由美が俺を待ってくれていた、あの懐かしい我楽多堂古書店に!


 と、ここまで思い出に浸っていたが中から返事はない。所々割れてテープで継いだガラスの(はま)った立て付けの悪い格子戸をガタピシ言わせながら横に引いて中に入ると、古本や古雑誌や、訳のわからないブリキの玩具やソフビの怪獣人形や最近の美少女フィギュアやテレビでも見た事のない謎のプラモの箱の山。

 ソフビ怪獣の鼻先のツノが折れてるのは俺が遊んで折った時のままだ。箱から出したのも俺。箱付き完品ならテレビの『とんでも鑑定団』で高値が付いたかも知れない。

 その奥には自作のデスクトップパソコンとスパゲッティーみたいなコードが収まったパソコンラック。つけっぱなしでボンヤリ光る液晶画面の前で拾って来たゲーミングチェアに座り、つっぷして寝てるバンダナとエプロンを付けたボサボサショートカットのおじさん。散髪代を浮かせるため自分かおばさんがカットしているのだ。今回は自分でやったな。鳥の巣みたいだ。

 この人が清水のおじさん。真由美の父である。


「おじさん、おーじーさーん」

「おや、賢人くんか、お早う。昨日もあのまま寝てたのかー」

 親指と人差し指て作った四角くらいの小さいレンズの眼鏡。その奥のニコやかな糸目。変わらないな〜

「これ『いちゃラブ♡おりゅんぽす』のプログラム画面ですか?」

「ふあぁ〜あ、そうなんだよ〜昨日寝落ちしちゃってね。え〜っと、でもクレタ島のマップとイベントは出来たよ」

「こんな凄いゲームを1人で作るなんて凄いですね」

「いや〜それが裏技があってね。あ、イラストは絵師さんに発注してるから実質2人だけどね」

「にしても凄いですよ!クレタ島のイベント、楽しみです!」

 その時、母屋の方から階段を駆け下りる音が聞こえた。

「ケンちゃん!」

 期待に満ちた、ぱあっと輝くような笑顔で俺を迎えに出て来たのは当然、俺の彼女、真由美。俺の彼女。そう!俺の彼女!

「ふあ〜ぁあ、おはよう、真由美」

「もう、お父さんたら〜ケンちゃんの前なのにだらしないんだから!」

「ゴメンゴメン」

「いや〜昔のままのおじさんには癒やされるよ」

「だろ〜?ところでその様子だとケンちゃんを呼んだのは真由美かな?さてはデートだね?」

 おじさん急にニヤニヤし始めたよ。

「なっ、なっ、ナニ言ってるのよ!私とケンちゃんは関係ないんだから!勉強が遅れてるから教えて欲しいって、泣き付かれたから仕方なく入れるんですからねっ!」


 俺の彼女はプライドが高くて物凄く物凄く物凄〜く恥ずかしがりなんです。

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