漁業権には気を付けよう
「ぷっはー」
「凄いねー、海底が一面、珊瑚だらけだよーホラ見てーケント兄ちゃーん!アハハー」
「父さーん、見なー!こんな赤珊瑚がいっぱいだよー!」
「おぶ、おぶ、お前らよくそんな深く潜れるな」
ここらへんは足が着かない。見た感じ水深3、4メートルはある。俺なんか潜っても1〜2メートルが限界だけど、カティーとアクティーは底までスイスイ潜って、いとも簡単に赤珊瑚を採って来る。
「あったりまえだろー。浜生まれ浜育ちをナメんなよー?」
漁師町の朝は早い。明け方になるとマリン親っさんと漁師達は目覚まし時計もないのに朝日が昇る前からゾロゾロ起き出して来て、そこかしこが赤く染まった海に目を見張った。
もちろん、昨晩の海の女神像との死闘、そして復活の玉で蘇った珊瑚の事は説明した。だけどみんな、こんな話は実際にその目で見ないと信じられないって言うんだ。と言っても女神像は水に戻ってしまい、証拠といってもリラの金色の鍵と海底の珊瑚くらいしかないんだなコレが。それで赤珊瑚を浜のみんなに見せる流れになったってワケ。
“せっかく蘇ったのにほとんど枯れてるねー”
「もっと深い所に生えてるモンだからね、たまに折れたのが打ち上げられたら凄い値が付くんだ」
「復活の玉の力で蘇ってもHP1ですから。魚に突っつかれたら終わりですよ」眼鏡クイッ
「おぶ、おぶ、委員長真由美、眼鏡したまま泳いでサビないか?」
「チタン製だからサビなど無縁です」眼鏡クイッ
「へー、ティターン12神の金属かい?勇者様のパーティーはアイテムの素材も違うねー」
「おぶ、おぶ、アクティー、12神ってオリュンポスの?」
「その前に世界を治めてたのがティターン12神さ。その前が天空神と大地母神。今はみんな追放されて地獄の底に封印されてるって。まあ神話だけどね」
「おぶ、おぶ、足つった!」
「これだから都会のチャラい陸サーファーは。ホレ暴れない!アタシが浜まで運んでやるよ」
「ガボ、ガボ、済まないアクティー」
“わたし達は枯れた赤珊瑚を回収するね”
「頼むポンコツ真由美〜」
“オリジナル真由美よ!”
「ふー、助かったー」
「ケンちゃん、お疲れ様ー、はいカキ氷」
「メロンジュースもあるぜ、ケン坊」
「イカ焼きにサザエの壺焼きも!」
「ありがとう真由美、ローザ、リラ。ホラ、アクティーの持ってる赤珊瑚見て」
「こんな宝石珊瑚が手の届く所にビッシリあったよ、父さん」
「話は本当だったんだな」
「さすが兄貴!」
「お前らヒトの事オールで殴っといて掌クルックルだなー。ホレ、手ぇ出して」
俺は浜の若いのに赤珊瑚の枝を何本か渡してやった。
「これ丸く削って婚約指輪にでも付けたらどーよ」
「きゃーー!」
「ステキー」
「こんな高価な物を…あんな事した俺達に!兄貴!」
「兄貴〜〜〜〜〜!!!」
「俺達の兄貴はタダの兄貴じゃねー!超兄貴だ!」
「超はやめろ超は」
「これは大したもんじゃのう」
「村長」
「海なんぞロクに見た事もない都会の駆け出し冒険者じゃ、クラーケン様に食われるかと思っとったが、なかなかどうしてどうして。大したモンじゃわい」
「てめー俺達をイカのエサにする気だったんか」
「ふぉっふぉっふぉ、都会の冒険者は浜の娘相手にいい思いをする、クラーケン様は腹が膨れて海の底に帰る、ワシらはギルドの手数料だけ払えば済む、三方1G得じゃ。現に今まで一度もクレームはないぞ」
大王イカに食われたんでは漁協にクレームなぞ入れようがない。報酬が高いと思ったら踏み倒す前提か。このジジイ意外と食わせモンだな。
「さて、この浜の漁業権はワシら地元の漁協にある。オヌシらさっきからワシらの珊瑚を勝手に採っておるようじゃが、違法操業とわかっての事かの?」
極太の白眉毛の下でジーさんの目がギラリと光った!
「珊瑚が生えたのはケン坊のおかげだろ!」
「ずるいよねー」
ローザとリラは憤懣やるかたないって感じだけど…
「ローザ、リラ。山と海ではルールが違うんだ」
「待って、ケンちゃん」
「真由美」
「ケンちゃん、暴力はダメ。私に任せて。おじいちゃん、アッチで話をしましょう。私が話し合いで解決して見せるわ。委員長として!」
小柄ながら鋭い眼光で俺を相手に凄んでいた村長は、組みし易しと思ったかセクシーなエロ水着を着た真由美に肩の力を抜いて相好を崩した。
「それがよかろう」
真由美は村長と海の家の方に歩いて行く。
「おいおい、わかってんのか?村長、ああ見えて荒事も慣れてるんだ。いざとなりゃあ血の気の多いのがゾロゾロ出て来るぜ」
「あっ、ホントだ」
「サザエ1個でも無断で採る奴は村総出でフクロだよ」
う〜ん。怒った真由美の怖さを知らないのは村長の方だと思うんだけど。
ぶばーーーーーーーっ!
「マリン親っさん危ない!」
「うわっ、火柱が横に!」
ほらね。火炎耐性ないとキツいよコレ。
「ケンちゃんをイカの餌にする気だったなんて!絶対に許せな〜〜〜い!」
ホラ切れた。
「うひーーー!」
おーおー、ジーさんも漁協の男達も砂の上なのに走るの早い早い。
「がーんばーれよー!」
「爆裂Lv30!」
ちゅどーーーーーーーん!
「村長さん、そこに正座」
「うわ焼けた砂の上に」
「これは熱い」
「マユミはケン坊の事になると…」
「怖いからね〜」
真由美と村長の話し合い(物理)の結果、俺達を名誉村民として漁協に迎えた上で、採取した珊瑚の7割を漁協に納める事で話が付きました。地元民とWinーWinの共生を図る。これも勇者の大切な使命である。




