放課後、それぞれの思惑
「じゃあ私ペン入れで忙しいから。また来週ね」
「あーったく、何で真由美まで○なわけー?」
「賢人、秘密投票は民主主義の基本だよ。誰が何に投票したか暴いて追求するのはルール違反さ」
「お前もだよ出、この裏切り者ー。じゃーな」
「出、うまくハメたわね。でも負けたらどうする気だったの?」
「ほら」
来生がポケットから出した☓の紙。一瞬、指がシュッと動く。指の間にあるのは○の紙。さらに指をずらすと、それが2枚になった。
「僕と君の2枚は○で確定。残り4枚が☓なら、2枚を○にスリ替えれば○4、☓2で僕らの勝ちさ」
「みんなが何に入れたか話したらバレるわよ?」
「『秘密投票だ』って言えばいい。飯田さんと優介は☓2枚は自分らの票だと思うし、山田と清水さんも自分らの票だと思うだろ」
「さすがね」
「でもまさかスリ替えるまでもなく山田以外全員○かー」
「ふふっ、清水さんは固そうに見えて欲求不満でムッツリだから食い付くと思った」
「ムッツリ?」
「ムッツリスケベ」
「まさか」
「あなたは付き合い浅いもんね」
「キミと同じ筈だけど。中1から」
「そうね」
「でも飯田さんをあんなに悪く描いたのはどうして?」
「牽制球…かな」
「清水さんは本人そのままなのに?」
「わかってないわね。でもコレで決まり。タイムテーブルは暗記したでしょうね?印刷やメールは全て破棄。山田に見られたら台無しよ」
「キミらしくもないな」
「何が?」
「なんで今週末、2人を放っとくんだい?今仕掛けないと後手に回るよ?」
「山田が本物だって急にわかったから… 書き直しにはソレなりに時間がかかるのよ。それに山田の心を折るには天国から地獄への落差が大きければ大きい程いいのよ。ククク…せいぜい楽しむがいいわ。真由美との最後の週末をね!アハハハハハ…アーハッハッハーーー!!!」
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「あれ、ビックリしたね」
「何が?」
「部長の漫画」
「私達が山田くんの悪い噂を広めてるって話?わたし気にしてないよ」
「…」
「山田くんカッコ良かったねー。『あの頃からマユミの事、好きだったんだ』『マユミ愛してる』だってキャー!」
「もうやめようよ」
「なんで?」
「飯田さんは僕が守るから」
「谷くん、助けてくれなかったじゃない」
「もう逃げないから!」
「私を助けてくれるのは山田くんだけ。いつだって、どこだって。あ、わたしバイトだからココまででいいよ」
「飯田さん…」
「また来週!じゃーね!」
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「加藤さんまたねー」
「ちょって待って」
「なに?」
「あのね、言いにくいんだけど… ほら、私言ったでしょ?むかし山田の事狙ってたって」
「お…おう」
真由美の前では、したくない話だけどな。
「あの晩ね、変な電話があったの。あ、でもその子はウチのクラスで変な子じゃないんだけど。山田のシャツの襟にね、いつも縮れた毛が付いてるって」
「え?え?ホント?」
自分じゃあ見えない!
「そんなワケないじゃない!私、毎日見てるし!ホントに付いてたら私が… ぁ、ぃゃ…」
「私が?」
「そっちの組の誰かから聞いたって言ってた。その話が物凄く面白くてね。噂になってるって」
「ウチの組でそんな噂ないわよ」
「でさ、ああいう話をした後だったから何か気持ち悪くて。誰かがあれ聞いて、私が山田を嫌いになるように噂を流してる気がしたの」
「またかよー。小学校ではよくあったけどなー」
「あったねー」
「そんな事あったっけ?」
「加藤さんは中学からだから知らないかー。中学に入るとパタッとやんだんだけどなー」
「2人とも、気を付けてね。誰が聞いてるかわからないから。じゃあ!」
「うーん。加藤さんが俺を嫌いになって得をするのは真由美だけなんだけどなー」
「わっ!私じゃないわよ!」
「わかってる、わーかってるって掴むなよ」
「なんだか怖いね」
「あ、じゃあさ、気分転換に遊びに行かない?明日!」
「うん。行きたいけど明後日は七夕祭りだしアフロディーテさんの占いに行くんでしょ?」
「もちろん!」
「勉強はいつするの?」
「し、宿題は今日中にするから!」
「期末テストの順位、どうだった?」
今その話をするかーーーっ!




