海王宮にて
「まったくエリクトニウスめ。ワシの事をどう説明しておるのだ」
「うふふ、間違ってはおりませんわ」
「これは参った。アレは若気の至り、今はお前一筋じゃ」
「さあ、どうですかねぇ」
「しかし茶菓子でも食って行けば良い物を」
「若い人はせっかちですわねぇ」
「何ぞ手土産でも呉れてやるがよい」
「そう仰ると思い使いに持たせてありますわ」
「卒がないな。む、奴だ。目を閉じろアムピトリーテー」
スタン。
軽い音を立て奥の襖を開き現れ出た女。かきつばた柄の紫の浴衣を着たその者は誰あろう、賢人と真由美が温泉で出会った女占い師てある。
「どう?ポセイドーン。気に入った?」
「ふむ、察しは悪い、思い込みは激しい。そこは気にかかるが久々に骨のある奴だ」
「じゃあ合格ね?」
「ふむ。あれなら孫の婿がねには申し分ない。良かろう。うわーはっは!」
海王の哄笑が大洋に響き渡る。その神気を受けるや三叉戟の亀裂は自然と塞がった。いや、そればかりではない。勇者ケントとの激闘で2つになった大理石の座卓は再び繋がり、抜けた床や畳は元通りとなってそれを支え、ケントの後方、三叉戟の力で吹き飛んだ壁も柱も玄関も、いや、その彼方で粉々になっていた海底山脈までもが、あっと言う間に元通りになった。
ここは神界。全てが見せかけの人の世とは、異なる真理の支配する世界なのだ。




