夜の浜辺(異世界編) 5
手こずった巨大クラーケンだが全力でぶっ叩けばこんなもん、俺のワンパンでバラバラのコナゴナになってしまった。ポンコツ真由美たちも大喜びだ。
「よっしゃー」
“ケンちゃんケンちゃん、ハーイ、タッチー”
「おぉタッチー」
「こっちにもタッチー」
「わっ、引っ張るな胸じゃない」
「わたしにも〜 タッチ〜」
「股間はもっとダメ!」
結構ヤバかったけど、やって見ると意外と行けるもんだ。
「待って下さい勇者ケント、残心を解いてはいけません」眼鏡クイッ
「えっ?」
委員長真由美の声に海を見ると、真っ二つになり海中に沈んだ珊瑚のティアラからピンクの小さな玉が無数に湧き上がり、空中に漂っていた。いや、それだけじゃない。沖合いの青い光が、こちらに向かい凄まじい勢いで集まっている。
水中に、空中に、煌めく光が舞う。その光に導かれるように水面が盛り上がり、さっきのクラーケンより一回りもニ回り大きい水柱となって、再び形を成した。
真由美に似た巨大な海の女神… ツンと突き上げるように張り出した豊かな胸。ヘソのあたりでキュッとくびれた腰。艶めかしい下半身に、すらりと伸びた足。それら全ての形を成すのは青く澄みきったエーゲ海の海水。
水の女神像を内側から照らす青く輝く無数の光。宙に漂うコーラルピンクの光球、そそり立つ天の川、降り注ぐ流星雨、揺らめくオーロラ。
美しい… なんて綺麗なんだ。俺は今までの人生で間違いなく一番美しい光景に一瞬、心を奪われた。だがこれはマズい。恐らく次に来るのが最大の攻撃だ。構えを取らなければ…
しかし俺の腕も、いや指一本すらも全く動かなかった。動かなければ死ぬとわかっているのに。
やられた! これは魅了の状態異常だ! 俺達は今までで最大・最強の敵を前に、ピクリとも動けなくなってしまった!




