夜の浜辺(異世界編) 3
「私が独自に聞き取り調査をしたところ、リラ達が遭遇した最初のクラーケンも本体真由美が遭遇した2体目も勇者ケントが遭遇した3体目以降も、全てこちらが先に接触・攻撃・逃亡などのアクションを起こすまで本格的な攻撃を仕掛けていません」眼鏡クイッ
「そう言えば3メートルのクラーケンなんか後ろで待ってて肩トントンして来たな。催促するみたいに」
「最初の子はおとなしかったよ。リラが腰の玉に触ったら噛み付いて来たの」
「あれは〜 目玉だからね〜」
「そっかー、痛かったんだね」
「そこで私は仮説を立てました。クラーケンは私達の1ターン目に反応し反射的に攻撃を開始しているのではないか、と」眼鏡クイッ
「それで2人をストーキングしてクラーケンの出方を観察してたのさ。いざとなれば助けに出る前提でね」
“ケンちゃんが浮気しないかハラハラしたわ”
「心配しなくても〜 砂が付いてヤスリみたいになってるから〜 入れられないって〜」
「何をだよ!」
「海水が付いたらどんな匂いになるのかな? 嗅ぎた〜い」
「いやだから何が!」
「勇者ケントが寝てからにして下さい。今は巨大クラーケン攻略が優先です」眼鏡フキフキ
「君ら俺が寝たら何してんの?」
「それは〜 ナニを…」
「砂で眼鏡に傷が!」ガーン
確かにクラーケンは俺達が喋ってても見てるだけで動かない。その間に作戦を考えなきゃな。
ポンコツ真由美は身長150センチくらい、中学の時の真由美って感じでマッコウクジラの着ぐるみを着ている。エロ真由美と匂いフェチ真由美も中学生くらいでシャチの着ぐるみ。3人とも委員長真由美のタイトでエロいイルカ水着と違って丸っこいプニプニの着ぐるみなのは限界突破だけしてて上限開放してないからか。それでも4人ともヒゲクジラでなくハクジラ類、つまりイカの天敵。攻撃力に上乗せの特効が期待できる。
問題なのはリラと、金鉱石の精霊に一体化したストーカー真由美だ。特効はないし、半ば霊的な存在のストーカー真由美と違ってリラは一撃受けたらペシャンコになる。
「リラだけダッシュで逃げる、残り6人でクラーケンを押さえる、リラはアレキを起こして交代する、この作戦でどうだ?」
「押さえそこねたら? 逃げるリラにワンパンが来て終わりです」眼鏡クイッ
「どうすればいい?」
「リラは物理打撃無効に入れて下さい。1ターン目に戦力外のストーカー真由美は逃げてアレキを起こし交代、勇者ケントと特効4人は攻撃、リラは待機。反撃は1回だけなら物理打撃無効で押さえられる。2ターン目にアレキを含む総攻撃で撃破、これしかありません」眼鏡キラーン
「それで行こう!」
俺は左手でリラの腰を抱いて引き寄せた。小柄な少女が寄り添う感触。このか弱い命を、幸せを知らぬまま終わらせはしない!
“ねえ見て! 昼間のクラーケンとは何か違わない?”
「言われてみると色々違うな。ホタルイカみたいに光ってるし」
ダイオウイカって光るんだっけ? 浜辺に打ち上げられた奴のニュースは見た事あるけど、こんなに大きくて光りまくったら壮観だな。
「蛍ってこんな感じなんだ…」
リラに水を差したくないから黙っといたけどカナリ違う。30メートルの蛍とかいたら怖い。
「額に珊瑚の王冠が付いてますね」眼鏡クイッ
“空にオーロラまで出てる”
「昼間のと違ってアンモニア臭くないよ。潮騒の匂い。少し磯の匂いがする」
「きっと〜 特別な〜 クラーケンね〜」
だからって引く事は出来ない。もうやるしかないんだ。
リラの肩がブルッと震えた。
「リラ、怖いか?」
リラは、それには答えずにこう言った。
「ケンちゃんと一緒なら、死んでもいい!」
リラと話せるのは、これで最後かもしれない。そんな気持ちを吹っ切るために俺は叫んだ。
「死なせやしないぜ! 俺がな! 行くぞ!」
俺の叫びと同時に、ストーカー真由美の姿がすうっと消えた。次の瞬間、俺の振り上げた右の手刀から迸った光の刃がクラーケンの上半身もろとも海を、オーロラを、そして沖合いで光る巨大なクラーケンのうち何匹か、いや何十匹かを真っ二つに両断した。
そして特効を持つ委員長真由美たちの特殊攻撃によって出現した巨大なマッコウクジラやシャチやイルカが水面から跳ね上がり、上半身を切り裂かれた巨大クラーケンの肩に、腕に、足にかぶりついたのだった。




