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幼馴染のツンツンな委員長が、異世界では俺にデレデレなんです  作者: 松林ゆきひろ
【幼馴染と異世界へ】
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せつない現実

「お兄ちゃん、お兄ちゃん、起きて。もう着いたよ!」

 小1時間寝てたろうか、美奈に起こされた時にはもう家に着いていた。夢の中では1か月近く冒険してたような気がする。

 こっちの世界では街の明かりにかき消されて天の川なんて見えやしない。隣に真由美がいないという現実がせつない。

「洗濯物、出しといてね」

「自分の分は自分で洗うよ、母さん」

「あんまり溜めないでね。今の季節、カビちゃうから」

「あれー?お母さーん、お湯出るよー?」

「あらやだ本当ね、美奈ちゃん。おかしいわー。母さん何勘違いしてたのかしら?」

「明日は修理屋さんに断りの電話を入れないとな。壊れてなくてよかったじゃないか。母さんのおかげで温泉も楽しめたし、給湯器は壊れてないし、結果オーライだよ」

「あなたの優しい所が好き」

 はいはい勝手にして。


「美奈はさ、夢の中で何日も冒険するなんて体験ある?」

 階段を上がりながら美奈に聞いてみると、美奈は突然真面目な顔になった。珍しい事もあるもんだ。

「お兄ちゃん、部屋で待ってて。すぐ行くから」

 部屋に帰って洗濯物をいつもの場所に押し込んでいると、美奈は何かの雑誌を大事そうに胸元に抱えていそいそと俺の部屋に入って来た。

「これを見て!」

 その雑誌は『月刊モー』。表紙にはデカデカ、『総力特集!!アストラルトリップ全力解明!!』と書いてある。何か見覚えのある記事だ。


挿絵(By みてみん)

 (イラスト:着道楽さん)



「はい、ここ座って、すわって!」

 美奈は勝手に俺のベッドに腰掛け、隣をバンバン叩く。しかたなく隣に座ると、美奈は雑誌を開いた。

 確か、この記事は小学生の時に見たような。ずいぶん古い号だ。あちこちのページに付箋(ふせん)が付いてるが、雑誌からハミ出た部分は全部切れてなくなっている。何年も前に貼られたものだ。

 美奈は記事を指差しながら熱心に語り始めた。

「人間は肉体、エーテル体、アストラル体などで出来てるの。寝ている時はアストラル体が肉体から離れてアストラル界に行ってるのよ」

「はい?」

「夢まぼろしって言葉があるけど、夢は単なる幻じゃない。アストラル界で実際に起きている事なの!」

 デタラメもいいとこだな。

「アストラル界で重要な使命を与えられて長く働くと、夢の中で長期間活動する場合もあるのよ。お兄ちゃんの体験は、この事例と見て間違いないわね。この本に詳しい科学的根拠が書いてあるから読んで!」

「中2にもなって、まったく…どっからこんな本持って来たんだ?」

「もちろん、おねえちゃん()の古本屋さんで買ったのよ。お兄ちゃんが高校に上がる時にまとめて持ち込んだって、おじさん言ってた」

「俺の黒歴史を勝手にほじくるなーーーー!」


 えらく懐かしい物が出て来たもんだ。確か小学生の頃にドはまりして毎月読み漁ってた記憶がある。特にこの『アストラルトリップ特集号』は俺の大のお気に入りだった。

 俺の剣幕に逃げ出した美奈が放り出して行った『モー』を開くと、あったあった。

『人体の階層構造!肉体と(エーテル)体と星幽(アストラル)体の関係とは』

『世界の霊的構造!物質(マテリアル)(プレーン)精霊(エレメンタル)(プレーン)星幽(アストラル)(プレーン)、そして神界(イデアルプレーン)へ』

『アストラルトリップの魅力と危険性』

『アストラルトリップ入眠の姿勢(ポース)を示す古代アステカの石像!』

 この写真は傑作!もちろん何の関係もない石像だ。だが小5の俺は真に受けて懸命に練習してたな。もちろん俺達だけの秘密だが。

 そして特集のラストページ。

『ダブルアストラルトリップの秘儀!』

 このページだけは特大の付箋(ふせん)が貼ってあって、もちろん端はちぎれて取れているんだが、ページに挟まれて残った部分にデカデカと書いてある。『3人でれんしゅう!』と。俺の字で。

 やったなーコレ。真由美を無理やり誘って挑戦した記憶がある。もう1人は美奈だったっけ?

 パートナーと2人で仰向けに寝た後、膝を立てて向かい合わせにコロンと倒れて、お互いの膝をからめてオデコをくっつけながら入眠すると、一緒にアストラル界を冒険できるのだ!もちろん、お医者さんごっこをするみたいなヤマシイ気持ちで誘いました!出来心でやった。今は反省している。


 しかし考えてみれば、お馬鹿な記事もあったもんだ。そもそも2人でベッドインして足をからめてオデコをくっつけた時点でほぼ作戦成功。次にやる事なんか決まっている。アストラル界とやらに行く必要なぞ微塵もないし、ぐうすか寝る意味がわからない!

 結局その時は何も起きずに、狭いシングルベッドに3人ギュウギュウでスヤスヤ眠っただけだったんだけど。でもまー、これも懐かしくも甘く切ない思い出ってヤツだ。今となっては真由美と1つのベッドで寝るなんて()()()()()()()()事なんだから。


 何だか馬鹿らしくなって来た。そんな事よりゲームの続き。ログインしてみると、経験値はそこそこ上がってるしアイテムも溜まってる。半分寝ながらゲームは進めてたみたいだ。とりあえずギルドに討伐結果を報告して、道具屋でドロップアイテムを売って整理… 眠い。ぐうぐう。すやー

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