いまさら! クラーケン討伐イベント攻略会議 1
「ふぃ〜 ヤバかった〜 まさか物理打撃無効が破られるなんてな」
いやアレはホントにビックリした。普通に死ぬかと思ったよ。
「昼間から出て来るのも話が違うよね」
真由美も首を捻ってる。
「なし崩しに戦ってたら危ないな。一旦撤収して作戦を練り直そう」
これにはローザ、リラ、カティーも乗って来た。
「じゃあ海の家に行きますか!」
「リラ喉かわいたー」
「いっぱい泳いでお腹すいちゃったよアハハー」
カティーはハイになったまま、いつもと違ってよく喋る。
俺達は船より手前の浜辺から少し離れた安全なルートを辿って俺達の泊まる宿屋、つまりマリン親っさんとアクティーが切り盛りする海の家を探す事にした。
そうだ、道すがら俺がいない間に浜辺で何があったか聞いとこう。
「みんな先に海に行ってさ、何かあったの?」
「それが真由美によく似た女の子に会ってよ〜、今思うとアレもクラーケンだな」
「真由美とそっくりだったね。最初のは小さかったけど」
「私がやっつけたのは中学生くらいかな」
「あはは〜 最初は異世界から真由美の妹が召喚されたと思ったよ」
みんなの話をまとめると、最初に3人が小学生くらいの真由美… 似のクラーケンを見つけたらしい。真由美は中学生くらいの。俺が高1、つまり今の真由美そっくりのクラーケンにエンカウントしたわけだ。一匹倒すごとに少しずつ大きくなってる感じ? 倒すたびにレベルが上の奴が仕返しに来てるのかな。
「アタイは真由美の娘説だったんだけどねー」
「何言ってんの? 私まだ16なんだから。最初のクラーケンLv1って8歳くらいだったんでしょ? 私が8歳の時の子供になっちゃうじゃない」
「あちゃ〜 惜しかった」
「惜しくない!」
え? ちょっと待って。今サラッと言ってたけど、真由美って俺と同じ16歳なの? 俺がゴールデンウイークに16歳になったんだから…
「あの… つかぬ事をうかがいますが… 今年の真由美の誕生日って…」
「ああ、コッチ来て日付けとか曜日の感覚なくなっちゃったけど8月1日だから。多分もう過ぎちゃったね」
「ごっごごごゴメン! 誕生日忘れてた!」
「え? いいよ〜 そんなの」
「いや良くないし! ほんとゴメン!」
俺はマズいと思って必死で謝ったんだけど、真由美は笑って俺の手を握った。5本の指を絡ませて…
「だってコッチにはケーキ屋さんもないし、プレゼント貰っても向こうに持って行けないからいいよ、帰ってからで。それに、こうして一緒にいてくれるだけで最高のプレゼントだから。本当に、夢みたい…」
「そっか… 冥王を倒したらケン坊とマユミは異世界に帰っちまうんだったね」
「寂しくなっちゃうね」
「い… いなくなっちゃうの?」
ああっ、変な雰囲気になった! あんなハイだったカティーまで通常モードに!
最短で攻略しても、俺達が日本に帰るまでまだまだ時間がかかる。それまでに3人とも幸せになって、笑顔で見送って貰えるようになるだろうか。なるといいな。
「あ、この岩の向こうじゃないか? ホラあれだ、急ごう!」
きっとそれはまだ先の話。今大事なのは腹ごしらえと作戦会議だ。
砂浜は結構長く続いている。しばらく歩くと、大きな岩場を回り込んだ所に船の泊まっていないひときわ眺めの良いキレイな砂浜があって、浜から離れた所に子猫亭と似た大きさの建物があった。
と言っても山際のアルケー村と違い、ここらへんでは木が採れないので石造り。あちこちに白い漆喰を塗ってある。1階は壁の所々がオープンになっていて、風通しが良くて涼しそうだ。マリン親っさんは何かを焼いていて、アクティーは棚から何かを出したり、椅子を並べたり目まぐるしく働いている。
入口の上には横長の看板がかけてあり、こう書いてある。
「海の家 ぽせいどん」
「すごーい! ケンちゃん字読めるんだー」
「リラ達は読めないの?」
って言うか漢字とひらがなで書いてあるよ古代ギリシャ風の世界なのに。
「男共はアタイら女奴隷が知恵を付けるの嫌がるからね。読み書きなんかより男に奉仕する事ばかり教えたがるのさ」
「ケ… ケントにいちゃん達は異世界の… 学校に行ってたって… エリクトが…」
「トップクラスの都市にしかない学校に行ってるなんて余程の有力者のボンボンってワケさね」
ローザは不愉快そうに言うけど… 2人ともごく普通の一般家庭ですが何か?
「ギリシャ文字も読めるなんて流石だね!」
「アレをギリシャ文字って言い張っちゃうかリラは」
「どう見ても漢字とひらがなよね」
真由美にもそう見えるか。うーむ。文字もそうだけど、そう言えば俺達、普段何語で会話してるんだろ?
A、ギリシャ語やギリシャ文字が女神の魔法で自動翻訳されてる
B、ゲームシステムがガバガバの手抜きで雰囲気出したい時以外は日本語で通してる
何かBっぽい予感。ソコ突っ込んだら駄目なんか? 異世界や異星が舞台のゲームって気張って異世界語とか作る場合もあるけど全部ソレで通されたらコッチはチンプンカンプンだからむしろ迷惑だな。
考えてみればAにしろBにしろ俺達には日本語に見えたり聞こえたりするわけで区別のしようがないんだよ。悩むだけ無駄かもしれない。
俺達が騒いでるとマリン親っさんは顔を上げてコッチを見て、向こうから声をかけて来た。
「おう、どうだいここの海は、綺麗なモンだろ。楽しかったか?」
「いや〜? それが大変だったんスよ」
「昼間っからクラーケンがいっぱい出て来たんです」
「それがこのマユミそっくりでよー」
「どんどん大きいのが出て来たの」
「た…立ち上がって襲って来たり… 大波を起こしたり…」
「いや、お前らの言ってる事は、おかしい」
「確かにクラーケンが女体化とか変だけど」
「私達、見たんです!」
「有り得ねえだろ季節的に。なあアクティー」
「春でもないのにねぇ」
いや突っ込むとこソコ? 季節だけの問題ですか?




