3話
「どうかされましたか。」
思わず声のした方を向いた。
皮で出来ているのだろうか、焦げ茶色のマントを羽織り、フードを深く被った背の高いガッシリとした体の男がそこにいた。
男はしばらく此方を伺っていたが、スッと無造作に近づき、手を差し伸べてきた。
「立てますか。」
そう問いかけながらも、身を寄せてくる男。
「あ、ああ、ああ。」
ドモリながらも思わず手を取る。
筋肉質なゴツゴツとした手だ。
そのまま引き上げられ、目を合わせる。
フードの中に見えたのは、黒髪に茶色の瞳、鼻筋の通った堀の深い、だが筋張った顔。
イケオジがそこにいた。
こんな状況でもなければ嫉妬で目を逸らしたくなるようなイケオジ。
見ているだけで、人を安心させるような微笑みを浮かべながら、彼はさらりと、名はヒュー、旅の僧であり、何かあったのであれば話を聞くといってくれた。
戸惑いながらも、言葉にしようとするが、言葉が出ず、エズくような感じになってしまった。
それを見てか、ここでは何なので、と彼に導かれて歩き始めた。
歩みを進める。ただそれだけの事だが、誰かと歩いているという状況のおかげか、少しだけ心が落ち着いた。
余裕が出てきたお陰か、周囲に目を向けられる様になってきた。
石畳の道から想像もできたが、石造りの家々が並ぶ街並み。テレビで見ていたヨーロッパの風景に似たその光景には、やはり先ほども見かけた三本指の小鬼の様な人や、トカゲ人間とも言う様な人、あとあれはケモ耳か?頭部に獣の耳の様なものがついた鬣の印象的な人。
今までみた事のなかった、いや二次元の画面越しには見たことがあったが、現実にはありえない人々が雑多に道行く。
自分の頭がおかしくなったので無ければ、これは、いや、まさかと自問自答していると、ふと歩みが止まった。
「こちらです。一休みしましょうか。」