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揺れる心(前半)


望美の視点



目が覚めると見知らぬベッドに居た。隣には彼が寝ている。


時間を見ると朝5時半だ。今日は仕事に行かなければならない。彼を起こさないようにベッドから抜け出して服を着る。

スマホで場所を確認したところ、勤め先の近くで、家からは2駅の場所だ。


「近いのね。十分に間に合うわ。」


支度を整えてから寝室に行く。ベッドに寝ている彼を見る。


「またね。」


玄関に向かいドアを開け外に出る。向かいの手摺によりかかり、ドアが閉まるのを待った。

マンションから出るときに建築日が目に入る。6年前だ。わたしが今の事務所に所属したのは5年前になる。


「偶然なのね。」


少し寂しくなった。





家に帰りシャワーを浴び、身支度を整えてから出勤する。いつも通りに仕事を始めた。部下がいつもよりざわついているのが気になったが、いつもの通りに仕事をこなした。


昼休みに給湯室にて、物怖じしない若手女子が聞いてくる。


「課長、嬉しそうですけど、なにかあったのですか? みんな気にしちゃって。」

「特にはないけど、不自然かしら?」

「いつもはピリピリとして近寄り難いのに、上手く言えないけど、今日は優しい感じがします。」

「そう。」

「あれ?、課長これ。」


わたしの胸元を見ている。


「キスマーク?、ああ~、おめでとうございます。」

「な!?」


彼との昨晩の情事がフラッシュバックし、顔が上気した。



胸元を隠しながら仕事をし、定時で退社する。


「今日は疲れたわね。」


彼の家のほうが近いのに、と思いながら自宅に向かう。

郵便受けに封筒が入っている。母からだ。切手は貼られていないから直接持ってきたのだろう。中には硬いなにかが入っている。

何の用だろう、昨日会ったのだから言えばいいのにと思いながら封を開ける。

手紙と封筒が入っていた。手紙には、どうするのかはあなたが決めなさい。母の字でそうあった。

封筒には彼の名前がある。封を開けるとなにか落ち、拾うとカギだった。手紙はとても短かい。


----


望美さんへ


君を愛している。


住所と部屋番号

電話番号

メールアドレス


正史


----



「そう。」


ひと言つぶやいて、手紙とカギをテーブルに置いた。

さきほどまでの気持ちは隠れ、空虚さを感じる。自分は何がしたいのだろう。何をしてきたのだろう。自分の気持ちが分からなかった。




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