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さらに歩いていると花屋の前で花束を持ったボルノックさんに出会った
ボルノックさんは俺の姿を見掛けると笑顔で話しかけてくれた
「拓殿もお出掛けかな?」
「はい、ご飯を食べてきました」
「それはよかったですな
お腹いっぱいになりましたかな?」
「はい、いつものお肉屋さんの横でお腹いっぱい食べてきましたよ」
「あそこは安くてボリュームありますからな」
ボルノックさんは笑いながら話してくれた
「ボルノックさんはこれからどちらへ行かれるのですか?」
「今から妻と子供の所に行くのですよ
御一緒にいかがかな?」
(へ〜、ボルノックさんは結婚してたんだな)
ボルノックさんの誘いに俺はのった
「ボルノックさんがお邪魔で無ければ、ぜひ行きたいです」
「そうですか、妻と子供も喜んでくれるでしょう」
そうして、俺とボルノックさんは歩き始めたのだが
何だかだんだんと家がまばらになってきたな
そして、お城からも少し離れて来たぞ
前を見ると大きな教会があった
(まさか...)
ボルノックさんはどんどん奥に進んでいく
そして裏手に回ると1つの石の前で足を止めた
「拓殿、私の妻と子供です」
俺は何だかいたたまれなくなってここから離れたくなった
ボルノックさんは片膝をついて優しくそのお墓に花束を供えた
「ルチア、ショーン
今日は勇者殿のお孫さんの拓殿も一緒に来てくれたぞ」
ボルノックさんはお墓に話しかけて、その後手を合わせて祈りを捧げていた
俺も一緒になって片膝をついて祈った
(ルチアさん、ショーン君...
これからもボルノックさんと一緒に頑張っていきたいと思ってます
どうか見守っていて下さい...)
その時微かに声が聞こえてきたが俺は目を開けずにずっと手を合わせ祈っていた
ここは見ないのがマナーだろう
少しした後にボルノックさんが立ち上がる気配がしてやっと目を開けた
「ありがとうございます拓殿
妻と子供も喜んでおりましたよ」
「良かったです
今日はお2人に会わせていただきありがとうございました」
俺は立ち上がりお辞儀をした
「いやいや、滅相もない
私の方こそお付き合いいただきありがとうございました」
教会を後にして俺とボルノックさんはグランデルさんの家に向かって歩き始めた
行く時と違い、帰りはお互いになぜか無口なままだった