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ぽわぽわ話してるばあちゃんに、慌てて首を振りながら
「いえいえお礼なんて、ほんとこれくらい大したことないですから」
少女もパタパタと手を振りながら遠慮をしている
しかし、実際問題
俺たちに出来ることは何も無い
それどころかほんとに無一文の宿無しなのだ
「あっ、自己紹介が遅れました
私は牧野詠美と言います
よろしくお願いします」
詠美さんはフードをとり、軽くお辞儀をした
(牧野詠美...どっかで聞いた気がするな...)
「私は滝井夕子です〜
そして、こっちは孫の滝井拓です〜」
ばあちゃんもそれにならって自己紹介をした
俺も軽く会釈をする
(そうだ、思い出した!!
昔、某教育番組に出てた人だ)
間違いない詠美さんは俺がまだ子供の頃に観てたテレビ番組に出てた人だ
でも、どうゆう訳か今は俺よりも年下に見える...
何故だ?
俺が色々考えてるうちにばあちゃんと詠美さんで話が進んでいた
「今はこちらに来たばかりで何も分からないでしょうから私の住んでる家に来ませんか?
色々とお話ししたい事もありますし」
詠美さんに促されるまま、俺とばあちゃんは行くあても無いのでお言葉に甘える事になった
(それにしても...
ほんとにここはどこなんだよ...)
しばらく歩いて林を抜けると建物が見えてきた
大きな石造りの塀が目の前にそびえ立つ
まるで中世のヨーロッパを連想させるような雰囲気がある建物だ
門の所には西洋風の鎧を身につけた兵士もいる
正しく中世のヨーロッパのようだ
詠美さんは何やら兵士たちと話している
あっ、ばあちゃんまで混ざっていってるし
何か世間話でもしてるのか?
俺が周りをキョロキョロしてると詠美さんに呼ばれた
「拓さ〜ん、中にはいりますよ〜」
詠美さんとばあちゃんは普通に、俺は何故か頭に手をやりながら、どうもどうもと愛想笑いを兵士に振りまきながら通った
中に入るとこれまた驚いた
目の前には大きな通りがありその両サイドを石造りの建物が並んでいる
そしてその通りのはるか先にはここからでもわかるほど立派なお城が建っていた
それにここは大きな街なのだろう通りも人人人...
見渡す限り人で埋め尽くされていた
「なんなんだここは?」
「ここはエリントン王が治めるエリントン王国の首都、エリンですよ」
街の全てに圧倒されていた俺に詠美さんが教えてくれた
「こっちですよ」
詠美さんの先導で人混みの通りを歩いていく
ふと、ばあちゃんが心配になり後ろを振り向くと
(あれ?ばあちゃんいない...)
「すまん、詠美さん
ばあちゃんがいない」
「えっ?
まだ、街に入ったばかりですよ?」
「ばあちゃんを後ろにしてしまった俺の責任だから探してくる」
と、走り出そうとした俺の手がグッと握られる
「そんなことをすれば二人とも迷子になってしまいます
ここは二人で一緒に探しましょう」
詠美さんの提案により二人はとりあえず来た道を引き返した
すると、通りに布を広げてその上で何やら不思議な置き物とかを売っている人としゃがんで話し込んでいた
「こいつはね、はるか東の国で仕入れてきたとても価値のある置き物なんですよ」
「あら、ほんと素敵ね〜」
(何かいかにも胡散臭い商人だな
それになんだあんな質の悪そうな置き物は)
とにかくばあちゃんが見つかって良かった
このまま声をかけて連れていこう
「ばあちゃん、お店覗いてないで
こんなに人が多いんだから迷子になっちゃうよ」
「あら、拓ちゃんごめんなさいね〜
そしたら行きましょうね〜」
ばあちゃんが立ち上がった時に急に商人がすごんできた
「ちょっとお客さんただ見は困るな〜
ちゃんと見学料払って貰わないと〜」
「は?
何言ってるの?
見るのくらい金なんて要らないだろ」
俺はおばあちゃんを背中にまわし庇いながら商人に言い返した
「兄ちゃん困るな〜
価値のある物を見るには拝観料ってのがいるだろ〜
うちもそうなんだよ」
商人が汚い笑を浮かべてると横から詠美さんが入って来た
「また、そんな汚い事をやっているのですか?
あなたも懲りない人ですね」
そう言いながら杖先を商人にむけた
「え、え、え、エイミー!?
また、お前か...」
「前の一件で懲りたのではなかったのですか?」
詠美さんが杖を強く握ったと思うと杖先がボッと燃えだした
「わ、わ、わ、わかった...
わかったから許してくれ
もう、こんな事しないから...」
商人も慌てて弁解をする
どうやら、これが初めてでは無いらしい
「この方達は私の大切なお客様です
次は躊躇う事なく撃ちますからね」
「それだけはごかんべんを〜」
商人はその場で土下座して謝っている
その姿を見て俺たちはその場を立ち去った
次からはこんな事が無いように俺はおばあちゃんの手をしっかり握っていた
しばらく進んだ所で俺は詠美さんに、声をかけた
「詠美さん助けていただきありがとうございました」
すると、詠美さんはいきなりその場にへたりこんでしまった
「ど、どうしたんですか?」
「ご、ごめんなさい...
こ、怖くて今更ながら腰が抜けてしまいました...」
詠美さんは目に涙を浮かべながら震える声で訴えかけていた
その姿がさっきとのギャップでなんだか可愛らしく思えて、思わずプッと笑ってしまった
そんな俺に詠美さんは顔を真っ赤にして
「わっ、笑わないでくださいよ〜
私だって、恥ずかしいんですから...」
最後はよく聞こえなかったが、とりあえず頭をポンと軽く叩いた
そんなへたりこんでる詠美さんをばあちゃんは抱きしめながら
「ありがとうね〜
怖かったのに私の為に頑張ってくれたんだよね〜
ほんと、詠美ちゃんは偉かったね〜」
詠美さんは抱きしめられながら声を出さずに涙を流していた
緊張の糸が切れ感情が溢れ出したのだろう
ばあちゃんも抱き締めながら頭を撫でている
俺はなるべく二人を隠すようにして立っていた
(落ち着くまでしばらく待つか)
空の様子もいつの間にか夕暮れに近づいているようだ
少しだが空がオレンジに染まり出していた




