-3-
家の近くに来たとこで薬草取りから帰ってきた詠美さんを見つけた
どうやら、あちらもこっちを確認したようだ、手を振りながら走ってきた
(詠美さんの行動は一つ一つ微笑ましいな)
詠美さんは俺たちの前まで来て
「拓さん、夕子さん、龍二さんには会えましたか?」
「ははは...
残念ながら門前払いでした...」
俺は頭をかきながら答えた
詠美さんも何だか残念そうに
「そうでしたか...
こうなったら私の魔法で強行突破しますか!!」
コラコラ、何物騒な事言ってるのですか?
それよりも何よりもあなたの魔法ではあの城門は壊せませんよ
「まあまあ、詠美さん落ち着いて落ち着いて
なんでも明日には凱旋式が行われる予定みたいなのでそこで会えるかも知れないのですよ
だからまた明日出直す事にしたんですよ」
「そうですか...
なら、仕方ないですね...」
詠美さんはばあちゃんの方にも行き、何やら話しかけているようだった
ばあちゃんも詠美さんには心配かけまいと笑顔をとりつくろいながら話している
(本当に...
どうしたもんかね〜...)
俺たちは家に入ると詠美さんは採ってきた薬草などを乾燥させに、ばあちゃんはお昼の準備にそれぞれ向かった
俺は居間にいたグランデルさんに城門での事を話した
何かしらアドバイスがあるかもしれないからな
ただ、結果はそう甘くなかった
「ほうほう、その様に言われてしまったか...
まあ、衛兵の言う事ももっともだからな
これは難しい事になってしもたな〜...」
グランデルさんも頭を悩ましてる感じだった
えているうちにお昼ご飯かが出来たのかばあちゃんが運んできてくれた
「お昼ご飯ができましたよ〜
もうひと皿は後から来ますから先に準備してましょうね〜」
(ん?後から?)
いったい、何が出てくるのだろうか、俺はばあちゃんの配膳を手伝いながら考えてると詠美さんが最後のひと皿を運んできた
「みなさんお待たせしました〜
さて、温かいうちに食べましょう〜 」
詠美さんは料理がのった大皿をテーブルの真ん中に置いた
「お〜、とても美味しそうな匂いがするの〜」
グランデルさんは興味深そうに大皿をみている
「夕子さんに教えてもらったお料理ですよ
温かいうちに食べてくださいね」
グランデルさんはさっそくその大皿の料理に手を伸ばし口に運んだ
「お〜、とっても美味しいじゃないか
詠美も料理の腕を上げおったの〜」
それを聞いて詠美さんはぱっと笑顔になり
「どんなもんです
私だってやれば出来るのですよ」
えっへんと言う感じで胸を張っている
「ほんとだよね〜
詠美ちゃんはいつでも一生懸命頑張ってるよね〜
偉いね〜」
頭をばあちゃんに撫でられてはにかむ詠美さんはほんと可愛いな
さて、グランデルさんも褒めた料理を俺も手を伸ばして一口食べる
「うん、詠美さんとっても美味しいよ」
これは、野菜の肉巻きだな
ボフボフの肉で長く切った野菜を巻いて焼いたものの様だ、味付けもしつこく無くていい
「ほんとですか、拓さん?
喜んでもらえて嬉しいです」
詠美さんはさらに照れ臭そうに笑った
でも、実際問題かなり頑張ったんだと思う
こちらの世界にスライサーなんて言う便利な物など無い
当然肉は包丁で切ったのだろう
完全に厚さは揃ってないが詠美さんの見えない努力が詰まっている料理だ
そう思うとさらに美味しく感じる
(詠美さんはこれだけ頑張ってるんだ、俺もしっかり頑張らなければ)
そう、心に誓いこの後もう一度出掛ける事にした
みんなには少し散歩に行ってくると伝え再びお城の方に向かった
お城の近くもこの時間になるとある程度の人で賑わっている
そして、数分置きに衛兵に話しかける人も居るがその度に追い返されている
(なるほど、朝に衛兵が言っていた事は本当だったんだな)
俺はなるべく不審者に間違えられないようお店などの客を装いながら城門の様子を伺っていた
そこで気がついたのだが時々、荷馬車が入っていく
何かの荷物の搬入なのだろう
(明日の凱旋式に備えての事かな?)
一台、また一台...
時には数台重なって来る時もある
(本当に大きな式典になりそうだな...)
そこで俺はふとひらめいた
(あの荷台に紛れ込んだら中に潜り込む事が出来るかも)
そう考えて様子を伺った
狙うのは複数でやってるく荷馬車の荷台だ
そんな時、いっぺんに四台の荷馬車がやって来た
俺は通行人を装って近づいていった、幸い衛兵は朝の眼力の強い人ではなく、のんびりと人当たりの良さそうな人に変わっていた
衛兵と御者が話し込んでいるうちに荷物を調べ終わった荷台に潜り込み隠れる
(何とか荷台には入れた、これから龍二さんを探さないといけないが
果たして上手く出会えるだろうか...)
俺は心臓がバクバクするのを抑えて荷馬車が動き出すのを待っていた
動き出すまでどれくらい待っただろう
緊張しているせいか凄く時間が長く感じる
そんな時、御者の話し声が聞こえてきた
(いよいよ動くのか)
馬の蹄の音と共に荷馬車が動き出す
途中、金属の擦れ合う音と大きい物が動く様な音もした
(城門が開いていよいよ中に入るのか)
俺は注意しながら外の様子を伺った
ちょうど、城門をくぐった所だった
再び城門が閉められていく
俺は次に降りる機会を伺う
あまりにも変なとこで飛び降りたら不自然だ
なるべく自然に、疑われないように降りなければならない
城門の中は大きな道があり両側には綺麗な花が咲き誇っていた
そしてその後ろには三階建ての石造りの建物が立っている
(本当に立派な建物だな〜)
俺はテレビの中でしか見た事無い様な建物を目の当たりにし、いつしか緊張も消えて何だかわくわくしていた
荷馬車は途中で方向を変え裏の方に回るのだろう
建物の間の道を進んでいた
そして、しばらく行って止まった
(よし、今だ)
俺は急いで荷馬車から飛び降り近くの木の影に隠れた
幸い誰にも見つかってないようだ
その先にはさっき入っていった荷馬車が何台も置いてあった
どうやらここで荷降ろしをするらしい
俺は他の荷馬車から荷物を降ろす手伝いをするように見せかけて建物の中に入るのに成功した