第四話:腹が膨れると眠くなるよな
あれからなんだかんだで一週間
目の前にはのんびり飛んでいる元魔王、通称まーさんが居る
村から追い出さなきゃ行けないのに結局できなかった
「なにやってんだ僕は・・・あ、ここに置いといて。ありがとう」
まーさんが食べ終わった食器を持ってきてくれる、ありがたい
朝ご飯のスープ作りも、まーさんが手伝ってくれるようになり、かなり楽になった
皿洗いもたまにしてくれたりする・・・毛だらけになってるからもう1回洗い直してるけどな
でも、元魔王なんだよなぁ・・・いい奴っぽいけど
「今日はゴブリン退治に洞窟か」
イーバルに洞窟でゴブリンが数体、発見されたから退治に行けって命令された
行かなかったら、この家も燃やすと言われたから渋々承諾した
ここしか僕が住む場所は無いから仕方ない
「お前は留守番な」
ボロい剣と怪我をしたときの応急処置用の軟膏を持って行く
準備が終わって家を出る前にまーさんに言っておく
いい聞かせれば素直に従ってくれるまーさん
知能はしっかりあるみたいでモンスター退治の時は留守番させている・・・だけど
「キュー!!」
何故か今日はついて来たがる
袖を噛んで引き止めたり、カバンに潜り込もうとしたり大人しくしてくれない
いくら元魔王でも、今のまーさんじゃ確実にやられるだけだから留守番してて欲しいけど・・・
「・・・はぁ、カバンの中で大人しくしとくなら着いてきていいよ」
僕が折れた
このまま続けていたら日が暮れてしまうかもしれない
そんなことになれば厄介だ
嬉しそうにカバンに潜るまーさんを確認し洞窟に向かう
村からちょっと離れた場所にある洞窟
そこまで広く無く、奥は行き止まり
昔は貯蔵庫に利用していたらしいがモンスターが根城にしやすいからと使わなくなったらしい
草むらからソッと洞窟の入口を見ると2体のゴブリンが見張りをやってた
ゴブリンは知能が低いって聞いたけど、見張りをやってる2体のゴブリンはそんな感じがしない
丁寧に作られたであろう槍と剣
程よく鍛えられた筋肉と明確な理性を宿す瞳
普通じゃないと頭で警鐘が鳴る
一人じゃ絶対に無理・・・それだけじゃない、村人全員でやったって敵わない
体が無意識に震え、後退りをする
パキンッと小枝を踏み、割れる音がしてしまう
バッとこちらを見るゴブリン達
冷や汗が流れ、腰を抜かす
ヤバい死ぬ!
近づいてくるゴブリン達から逃げようにも体が上手く動かない
剣を持つゴブリンが僕めがけ高く振り上げるのを見て咄嗟に目をつぶる
「うわぁああ!」
「キュイ!!」
あれ、・・・いつまで待っても衝撃が無い
それに、今まーさんの声がしたような
恐る恐る目を開けるとゴブリンが土下座をしていた
なに?
なんで土下座してるの?
しかも、どうしてまーさんが満足げなの
訳わかんないまま様子を見てたらゴブリン達がこちらを見た
また、剣を振りかざすのかと身構えたが慌てた様子で武器を離すゴブリン達
「なにも、しない。おまえついてこい」
たどたどしい言葉で話しかけてくる
数回瞬きしたあと、まーさんを見る
フヨフヨとゴブリンより先に洞窟に入っていってた
はぁ・・・行かなきゃ駄目か
まだ、絶対に襲われないとはわかったわけじゃないから一応警戒はする
洞窟は思いのほか明るかった
壁に簡易的な松明置きが設置されていた
どうやら彼らが設置したらしい
しかも、地面にはモンスターの毛皮を敷きつめてる
フワフワしてそうで洞窟を歩いてる感覚が無くなりそうだ
「ついた。りーだー、あえ」
唐突に歩くのを止めればそう言って背中を押された
少し広い場所は洞窟の最奥で大きな椅子があり案内してくれたゴブリンより背が高く筋肉質のモンスターが座っていた
「そうか、下がって良いぞ」
一礼をした後、2体のゴブリンは入口に戻っていった
僕とまーさん、得体の知れないゴブリンの3人、(正確に言えば1人と1匹と1体だけど)になってしまった
「まぁ、そのように固くならないでもらおうか」
座れと指差すので近くにあった椅子に座る
まーさんは僕の近くを飛んでいた
いったい何をされるのかと落ちつかない
いっそ、殴り合いとか斬り合いの方がマシかもと考えてたら、いつの間にか目の前にご馳走が並んでた
「さ、遠慮無く食べると良い」
豪快に笑い食べ始めたゴブリン
まーさんも嬉しそうに食べていた
美味そう・・・
でも、ゴブリンが用意したものだし
「なんだ、食べないのか」
毒とか入ってないのかと疑い手をつけずにいたら睨んできた
「い、いただき、ます」
食べなきゃ殺される
とにかく食べるしかないと改めて料理を見る
肉系の料理が多く、脂っこそうだけど久方ぶりの肉だ
匂いを嗅ぐとお腹が鳴ってしまう
ちょっとだけなら大丈夫だろう
鶏肉の様な料理に手を出す
「・・・美味い!」
味付けとかはほぼない
ただ茹でただけの鶏肉だけど美味いと感じる
気づけば手が止まらなくなりどんどん食べていく
鶏肉、豚肉、牛肉・・・どれも茹でたり焼いたりしただけの簡素な料理だけど、とっても美味しかった
両親以外で料理を食べさせてくれたのはこれが初めてだ
・・・ゴブリンなのがちょっとアレだけど
出された料理を全て食べ終わり、満腹になった
まーさんも満腹になったようで僕の膝に乗ってリラックスしてる
温かいし、フワフワしてるし腹一杯だし・・・
「さて、少年よ。本題に・・・・寝ておるのぉ」
最後に、ゴブリンがなんか言ってる気がしたけど眠けに負けて寝た