第三話:拾ったのは元魔王さんでした
角が生えてきた
なんで、一体どうしてこうなった?
昨日、毛むくじゃらを拾って治療した後・・・眠くなったからそのまま寝て
さっき朝ご飯食べて、部屋片付けて鏡見たら生えてました・・・
やっぱ、わからん!
毛むくじゃらが何かしたのかと思ったけどこんな小っちゃい毛むくじゃらがどうこう出来るとは思えない
じっーと、見てたってなにもわからないか
《ステータス鑑定をします》
へぇ?今頭に変なの流れてきたような
〖ゼールヴァイス・S・クルルメレフ〗
種族:魔族(元魔王)
レベル:36
状態:呪い
HP:431/535
MP:460/460
攻撃力:298
防御力:364
攻魔力:429
素早さ:537
スキル
【飛翔】【プチファイヤー】【プチアイス】【プチサンダー】【プチダーク】【プチランド】【耐幻惑】【耐属性魔法】【半魔】【ステータス鑑定】
「は、犯人お前かー!!」
吞気に飛んでいた毛むくじゃら、いや元魔王さんを捕まえる
なんか、変な異常状態引っさげてるけど、元魔王ってヤベぇよ!
こんなに元気ならもう大丈夫だろ、外に出さねば!
「おい、リデル!!仕事の時間過ぎてるぞ!」
家の外から大声が響く
タ、タイミング悪い!
最悪だ、あの声は村長の息子のイーバルだ
僕と同い年だけどいつも命令ばっかり
昨日のモンスター退治だって、ホントはイーバルがやらなきゃいけないのを僕がやったんだ
「い、今すぐ行くから待ってて!」
握りしめた元魔王さんを思わず肩掛けカバンに押し込みフードを目深に被って外に出る
「遅いぞ!まったく俺を待たせるなんていい度胸だな」
「本当ですよね、まったくよそ者は礼儀がなってません」
「誰のおかげで暮らせてると思ってるんだよ」
イーバルの側には必ずアドンとバイザーが居る
アドンは村長に古くから仕える者の子で村で沢山の本を読んでるため魔法の知識量が村1番だ
ま、小さな村だからたかがしれてるけど
対してバイザーは、根っからのいじめっ子タイプ
イーバルとつるんでやりたい放題してるだけの馬鹿な奴
何時もながら色々言ってくるけどほぼ無視
頭の角と元魔王さんを如何するかでいっぱいいっぱいだ
カバンに押し込んだせいか暴れてるし
「まぁ、いいや。さっさと行くぞ」
カバンには気づいていないようでちょっと安心した
注意力散漫な奴らで助かった
今日の仕事はイーバルの畑を耕すこと
まぁ、アイツらがやるわけ無いから僕が全部こなさなきゃいけない
モンスター相手するよりマシだからまだいいけど
「おら、ここ終わったら苗植えろよ」
「さっさとやれよ!日が暮れるまでやるつもりか?」
「ノロマですね」
頼むから、静にしてるかどっか行ってくれ
毎回、毎回煩いヤジしか飛ばさないくせに
カバンは木の枝に掛けてきた
時折動いてるけど中から出てきてはない元魔王さんに少しホッとしつつ作業を続けた
全部終わって家に帰ってくる
畑に生えてた食べられる野草をこっそり持ってきてるから晩ご飯はこれと朝のスープを一緒に煮る
カバンから出てきた元魔王・・・長いからまーさんでっか
まーさんの分もお皿に入れてやる
「・・・明日には出ていってもらわないとな」
スープをちびちび飲んでるまーさんを見ながら小さく溜め息をつく
吞気でいいな元魔王さんよ