うそつきは死ぬみたいです
うそつきな勇者のお話です。
調べないで投稿したら、全く同じタイトルが有りましたので、タイトル変更しました。
そんなにうそをついてたら、泥棒になるからね。
そのうちだれも信じてくれなくなるよ!
うそつきなんてうちの子じゃありません!
親にも呆れられるほどの嘘つき。
あだ名はもちろんオオカミ少年。
でも、身の危険を感じるとついつい嘘が口から出てしまうのは
もう生まれついての癖としか言いようがない。
「ちゃんと宿題やったの?」
と言われれば
「やったよー」
と答えて、それから宿題をやる。
基本は辻褄を合わせてるのでそんなに迷惑をかけたことがないが
それでもばれた時は怒られる。
友達にも、冷たい目で見られることが多い。
けれど、とっさに嘘が出てしまうのだから仕方ない。
どうせオオカミ少年ですよーだ。
オトナだって、嘘で固めて生きてるくせに。
こんな世界大嫌いだ。
政治家なんてうそつき集団じゃないか。
なんか、ああいう汚いオトナを見ていると、同じく嘘つきな自分が小さい生き物な気がして、いやになる。
あーあ、消えてしまいたいな。
とは言ったけど。
「まさかほんとに死ぬことになるのかぁ。」
病室の天井を見つめて言う。
突然学校でぶっ倒れて、病院に運ばれたら、余命半年だって。
なんなのそれ。
いやー、びっくりだね。
いざ死ぬとなると、死にたくないもんだ。
16歳なったとこだよ?
親もさー、必死に取り繕って笑ってるけど、もうさ、涙ぽろぽろ流してんの。
嘘なんてつけないくせに、すぐよくなるからね、だって。
母親が嘘をついたところを見るのは、初めてかもしれない。
本当に嘘が嫌いで、誤魔化しの嘘さえつかない母が。
「あんなに若いのに、もう助からないんだって。」
噂話なんて、いくらでも聞こえてくる。
看護師さんも、もう少しうまく嘘つけばいいのに。
うちの母の嘘が、完全に無駄になるじゃん。
毎日寝てる俺を見るたび、母が泣くんだ。
代わってあげたい、神様、代わりに私を殺してください、って。
いいよ別に、母さんは死なないで。
俺は、こんな奴だけど、本当に母さんを尊敬しているんだから。
おれがこんなになるのは、嘘をつき続けた罰かもね。
だから、俺は知らないふりして、また嘘をつくんだ。
「大丈夫、今日は調子がいいんだよ。痛みもそんなにないし、だいぶ良くなったかも!
退院したら、肉食いに行きたいなー」
全身が痛くて、痛み止めも効いてる感じがしない。
食欲なんてないが、無理やり飲み込んでる。
こんな状態で肉なんて食えない。
幸い、嘔吐することはないが母がいなくなれば、残りはごみ箱に捨てたりトイレに捨てたり。
食べ物を粗末にしたくはないが、これ以上母が泣けば、母は脱水で倒れてしまうんではなかろうかと思うので許してほしい。
「じゃぁ、お母さんは帰るね。」
「うん、また明日ね。」
入院してから、一日も欠かさず母は通ってくれている。
幸い、妹もいるし、俺が死んでも生きる支えを失うことはないだろうけど。
「どうせなら、波乱万丈な人生を全うしてみたかったなー。」
『あ、じゃぁ、死んだらこっちに来る?』
なんか変な声が聞こえた。
『死んだ後、うちの世界に来る?』
気のせいではなさそうだ。
『暇だから別の世界に遊びに来たんだけど、僕とゲームしない?』
そういって、目の前に現れたのは俺より少し下くらいの男の子だった。
「お前誰?」
『神様だよー!』
いよいよ俺も終わりなのか?
「神様がいきなりなんなんだよ。」
『波乱万丈な人生生きてみて。僕を楽しませてよ。楽しかったら大サービス!』
「何をしてくれるってんだ?」
『君のお母さんの涙を止めてあげる。』
「ああ、それは最高だ。」
あの涙を止められるなら、俺は正直、悪魔に魂を持っていかれてもいいとさえ思った。
なんか夢だか幻だかよくわからないが、夢の中ででもいい。
もう、母さんを泣かせたくない。
「どうすればいい?」
『今ね、神友と勝負してんの。強い魂見つけてきて、勝負させて、どっちが勝つか!』
本当に、ゲームの駒にしたいようだ。
『僕は白。友達は黒。』
「オセロ?」
『ううん。僕が勇者側。友達は魔王側。』
「ああ、そういうのね。」
『初期ステータスは決まってるから。あとは、どんな能力になるかだけど・・・。正直それは異世界に飛ばしてみないと分かんないんだよねー。』
「本当にゲーム感覚だな。」
『神様は暇なもんでー』
けらけら笑うと、俺の腕に指先でバツマークを付ける。
するとそこが一瞬光ったのち、薄いあざのようになった。
『これで、僕の駒決定!じゃ、あとの生をのんびり過ごしてねー。ま、あと38日だけど。』
「余命宣告とか勘弁してくれよ。」
そんなこんなで、どうやら俺はあと38日しか生きられないらしい。
できるだけ母さんを悲しませたくないが、あと38日も泣かせることになるとか気が重い。
更には、死んだらもっと泣くんだろうなぁ。
あーあ。
早く母さんの涙を止めてくれねーかな、あの神様。
もう少しで死ぬみたいです。