25.私と一緒に行きましょう
――目を閉じれば、今でも思い出せる。
彼女と出会った、その時のことを。
記憶も意識もなにもかもが曖昧で、混じり合う。
まるで眠りについた時に見る、夢のような空間に、ずっとクロムはいた。
そんな世界から剥離して、目覚めたばかりだった頃、初めて認識した存在が彼女だった。
あの空間に長い間いたせいで、クロムは記憶の大部分を失ってしまっていた。
自分が何者なのか。親は誰なのか。なんのために生まれたのか。
世界のすべてが朧げで実感がわかない中、自分が何者なのかを求め。
そしてエルフィリアは、クロムという名を与えてくれた。
その時クロムは、ただ、とても嬉しかった。
あの手紙を読んですぐに家を飛び出したクロムは、今、旧魔王城でエルフィリアを抱えたニーナと対峙していた。
たどりついてすぐにニーナの視界外からファイアボルトを撃ち込んだのだが、早々にそれを察知したニーナはクロムが放つよりも早く、ファイアボルトを躱してしまった。
エルフィリアは縄で体をぐるぐる巻きにされ、今はニーナに横抱きに抱えられ、口を塞がれていた。
今、ファイアボルトで攻撃することはできない。エルフィリアを盾にされる危険がある。
「待っていたわ。私が残したあのお手紙、読んでくれたのよね? ちゃんと一人で来たかしら?」
「……誰かに話してきたって言ったら」
「いいの? あなたの答えは本当にそれで」
ニーナは指先に火を灯すと、そうっとエルフィリアの顔にそれを近づけていく。
エルフィリアの顔が強ばる。クロムもまた、慌てて口を開いた。
「は、話してない! 誰にも言ってない……一人で来た」
「ふふ、そう。その言葉を信じましょう、我らが同胞よ」
指先の火を握りつぶし、ニーナは朗らかに微笑んだ。
今まで見てきたそれと同じ、人の良い優しそうな笑み。
だからこそ、異常だ。
この状況で、つい最近まで友達だと言っていた少女を殺す素振りをしながら、それを平然と浮かべられる彼女は。
「ニーナ……どうして、ニーナがこんなこと……」
「それ、さっきもエルフィリアちゃんに説明したんだけどね。実は私、魔族なの」
「っ、魔族……」
「私たち魔族の悲願は、人類を滅ぼすこと。そのためにはね、あなたが必要なの。だからあなたをここまで一人でおびき出すために、エルちゃんを利用させてもらったのよ」
「わたしが……? どうしてわたしなんか……」
本気で困惑するクロムを観察し、ニーナは小さくため息をついた。
「はぁ……やっぱり、記憶をなくしているのね。自分の生まれた意味すら忘れてしまったの?」
「わたしが生まれた意味……?」
「そう。あなたは――」
「や、めろなのです……!」
口を塞がれていたエルフィリアがニーナの手を振り切って、叫ぶ。
ニーナはそれを笑顔のまま見下ろすと、横に抱えていたエルフィリアを前方に吊るし、膝で蹴り上げた。
「あっ、ぐ!?」
「エルちゃんっ!」
思わず駆け寄ろうとしたクロムに、ニーナは脅すようにして指先に小さな火を灯した。
いや、ようにじゃない。本当に脅している。
クロムはすぐに立ち止まって、悔しげにニーナを、そして不安げにエルフィリアを見つめた。
「私は今、器と話をしているの。エルフィリアちゃんはちょっと黙っててくれる?」
「ニ、ーナ……」
「あなたにもまだ聞きたいことはあるけれど、それは後回し。今は器に自覚してもらうことの方が先だから」
エルフィリアの耳元に口を寄せ、言い聞かせるようにそう告げたニーナは、ある魔法をエルフィリアにかけた。
それは一時的に声が出せなくなる魔法だった。
黙り込むしかなくなったエルフィリアを見て、満足そうに頷いたニーナは、再びクロムへと向き直る。
今すぐにでもニーナからエルフィリアを取り返したいクロムだったが、今の状況でそれができる手段が存在しない。
今はただ、ニーナの話を聞き続けるしかできなかった。
「あなたが生まれた意味。それはね、魔王の器よ」
ニーナは語り出す。クロムという存在の正体を。
「魔王の……器?」
「そう。かつて存在した七人の魔王。その中でも最強と謳われた、憤怒の魔王の依代になるべく生まれた存在。それがあなたなの」
――あなたは私たち魔族の希望。私たちの過去を断ち切り、未来を切り拓く、大切な大切な、王の器。
ニーナがなにを言っているのか、クロムにはわからない。
だってクロムが覚えていることは、なにもない白い部屋で、なにもせずに過ごしていた日常だけだから。
そう。わからない……はずなのに。
頭が、痛い。
ニーナの言葉を通して、頭の奥底が刺激されているような……無理矢理記憶を呼び起こされようとしているような、そんな感覚。
(これ、は……魔法?)
クロムはまだ魔法の腕は未熟だが、才能は人並み以上にある。
だからわかる。クロムの優れた感受性が、ニーナがなんらかの魔法を行使していることを感知する。
ひどく淡く、弱い。直接的な事象を起こすことは不可能だろう。
だが、言葉を介して精神に微小な影響を及ぼす。それくらいのことはできる、そんな程度の魔法。
「魔王様の魂は他の存在とは格が違いすぎるの。ゆえに、その復活に使う依代は魔王様と同等の魂でなければいけなかった。あなたはそのためにつくられたのよ」
――あなたは魔王様になる。かつて強大な力を世界に示した、私たちの偉大なるご先祖さま、七人の王の一人に。
――あなたは、そのためにつくられたの。私たちを迫害し、暗く光のない世界へ追いやった人間……そのすべてを滅ぼし、私たちを救ってくださる魔王様になるために。
頭の中に響く声。
それは、いったい誰の言葉だっただろう。
大切な……そう、大切な、誰か。大切に思っていた、誰かだったはずだ。
「でも、あなたは『心』を持ってしまった。ただの器のくせに、中身を持ってしまった。そして七年前の戦争で、イクリプスという魔法を発動するための魔力供給源としてだけに使われた」
――立派ね。きっとあなたなら、私たちの世界をつくることができるわ。
知っている。覚えている。
そう言って頭を撫でてくれた感触を、クロムは覚えている。
喜びも悲しみも、なにもなかった場所で、唯一温もりをくれた、母親のような人。
クロムはただ、その人に笑っていてほしかった。
その人に、ただ頭を撫でてほしかった。
だから、クロムは……。
「その後、あなたがどうなったかは知らないわ。でもね、そんなあなたでも本来の役割を果たせる時が来たのよ」
この場所。この言葉。この魔法。
あらゆる要素が絡まり合い、クロムの記憶を刺激する。
――やっとの思いでここまで来たのに……なぜ?
真っ白な部屋。なにもない、いつもいた場所。
そこで、ただ一人愛していた温もりをくれた人に、クロムは冷徹な視線を向けられていた。
――どうしてあなたは『心』を持ったの?
この人の役に立とうと、今までずっと孤独に耐えてきた。
頑張って頑張って、なにもない部屋で過ごすだけの日々を生きてきた。
なのにそんなクロムにかけられた言葉は、侮蔑と否定。
――空っぽになるように育ててきたのに。大切に大切に育ててあげたのに。
どうして。なんで。
おかしい、おかしい。
笑顔でいてほしかっただけなのに。もう一度、頭を撫でてほしかっただけなのに。
そのために、今までずっと……。
――しょせん、魔王の器でしかないあなたが。
親代わりだった人に拒絶され、結局、クロムはまた一人取り残された。
――此度の戦争では多くの犠牲者が出た。たとえあなたが無知なる者だとしても、魔族であり魔王でもあったあなたを敵視する者は後を絶たないでしょう。
――ですから、私はあなたを封印します。この世界の平穏のため、そしてあなた自身を守るため……あなたを死んだこととし、時の概念さえ曖昧な辛苦のない空間にあなたを隠秘する。
――いつか、人と魔族の諍いがなくなるその時まで。
そして最後には攻め込んできた人間の一人、賢者と呼ばれていた者に、誰にも気づかれないような地下の空間に封印された。
……皮肉な話だ。
心を持たないよう、ずっと大切に育てられてきた。
ただ人間への復讐の絶対的な道具として向けられる、歪んだ愛情。
でもいくら歪んでいようと、負の感情をもとに生まれたものだろうと、それは確かに愛情だった。
その愛情が、クロムという存在の中に心を作り出してしまった。
「私と一緒に行きましょう? もう一度あなたの魂を創り直しさえすれば、今度こそあなたは完璧に依代としての役割を果たすことができる。そして私たちと一緒に、人間どもをすべて駆逐しましょう?」
優しげな笑みを浮かべて、ニーナが手を差し出してくる。
クロムは猛烈に痛む頭を抱えながら、記憶の中から意識を剥離して、そんなニーナに視線を向ける。
まだ、すべてではない。しかし、もうほとんどのことを思い出していた。
自分は、人間を滅ぼすために生まれた存在。人間を滅ぼす、魔王の依代となるべく生まれた存在。
かつてはその役割を果たせなかった。
でも、ニーナはついてくればそれができると言っている。
そうすれば……今度こそ、あの愛情を。あの温もりを、もう一度手に入れることができるかもしれない。
ずっと欲しかった。そのために毎日に耐えて、生きていた。ただもう一度、頭を撫でてほしかったから。
エルフィリアと同じ、願い。
ニーナについていけばそれが叶う。
たとえ創り直した先にいるその『自分』が、今のクロムとしての意識や記憶をなに一つとして内包していないとしても……。
(……わたしは……)
クロムは自分の手を見下ろし、それをぎゅうっと強く握りしめると、意を決してニーナをまっすぐに見つめた。
「……わかった」
頷いてみせたクロムに、ニーナはやはり、にっこりと嬉しそうに微笑んだ。
「よかったわ。全部思い出してくれたのね。てっきりすっかり人間にほだされてて、本来の役割なんて投げ出して断られちゃうかと思っちゃった。ごめんなさい、あなたも魔族なのにね。同じ悲願を掲げる仲間なのに」
「別に、いい。それより……エルちゃ、エルフィリアはどうするの?」
「あぁ、そうねぇ。聞きたいことがあったのは確かだけど……あなたがこっち側に来るなら、別にそれもどうでもいいわね」
ニーナはエルフィリアを床に置くと、笑顔のままクロムに、言う。
「それじゃあ、器の魔族ちゃん。この子にファイアボルトを撃ち込んでくれる? ちゃんと顔めがけて、殺す気でね」
「……ど、どうして?」
「どうしてって、当たり前でしょう? エルフィリアちゃんは人間よ? そして、私たちは魔族。生かしておく理由がないじゃない」
「…………」
「それとも、できないの?」
やはり、笑顔で。
ニーナはここ数日、エルフィリアとクロムを完璧に騙し続けてきた。わかりきっていたことだが、ニーナはポーカーフェイスがうまい。いくら観察しようと、その奥底にある本音を探り出すことは至難の業だ。
だが、今のニーナのこの行動の目的だけは明白だった。
試されている。ニーナについていくと言った、クロムの返事。それがクロムの本音なのかどうか。
「……わかった」
深呼吸をして、宙空に魔法陣を描いていく。
(大丈夫……できるはず)
慎重に、一つも間違えないように。
(わたしはずっと、エルちゃんに魔法を教わってきたんだから。エルちゃんの魔法を見続けてきたんだから。だから……)
魔力を込めすぎてはいけない。今欲しいのは威力じゃない。
(……エルちゃんに当たる直前で軌道を変える。そして、ニーナに……)
ニーナの返事に了承で答えたことも、ファイアボルトを撃ち込むことを承諾したことも、すべてはニーナからエルフィリアを救出するためだった。
あそこで断っていたら、まず間違いなくエルフィリアを助けるチャンスは巡ってこない。どうにかニーナから信用を得て、その上でエルフィリアに近づける状況を作り出すしかなかった。
ニーナは賢く、そして用心深い。
クロムがエルフィリアを慕っていたことを知っている彼女は、クロム自身の手でエルフィリアを葬ることでのみ、真なる意味でクロムを信用する。
だからおそらくこれが最初で最後の、一度切りのチャンス。
絶対に失敗はできない。
「……ファイア、ボルト!」
手の中に生み出した火球をエルフィリア目がけて放つ。
(大丈夫。いける……!)
迫りくる火球にエルフィリアはぎゅっと両目を瞑ったが、当たる寸前で、ぎゅんっと急激に行き先を変えた。
その先にいるのは当然、ニーナだ。
軌道の変化に気がついてから避けられるような速さではない。火球は間違いなくニーナの胴体に命中し、そして。
爆発も爆音もなにも起きることはなく、あっけなく煙のようにかき消えた。
「……え……?」
「はあ……やっぱり、嘘だったのね。せっかく同胞として信用してあげる機会を与えてあげたのに……しょせんは作り物の魔族ってことなのかしら」
「な、なんで……」
「なんでって、当然でしょう? あなた程度の拙い魔法が私に通じるはずがないわ」
ニーナがやったことは簡単だ。
エルフィリアが得意魔法として掲げている、反魔法。それを行使しただけ。
反魔法は高度な技術だ。一流の魔法使いですら手を焼くそれは時間をかけて行うならまだしも、目まぐるしく変化する実戦の場で使える者は皆無に等しいとまで言われている。
だが事実、ただの下級魔法であるファイアボルトとは言え、ニーナはそれをいともたやすくかき消してみせた。
それはつまり、ニーナが一流をはるかに凌ぐ魔法使いであることの証明にほかならない。
「もういい。あなたはしょせん、人間の味方をする裏切り者。話し合いでどうこうする方が間違っていたわ。今すぐに、あなたも捕らえてあげ――っ、これは……!?」
クロムに手を掲げ、なんらかの魔法を行使しようとしたニーナが、唐突に驚きの声を上げた。
「クロム! もう一度ファイアボルトなのです!」
「っ、エルちゃん!」
声を封じられていたはずのエルフィリアが叫ぶ。
ここで躊躇している暇はない。即座に全速力でファイアボルトの魔法陣を形成し、最大速のファイアボルトをニーナ目がけて放つ。
一つで終わりではない。その後すぐに二つ目、三つ目と形成して連続で撃つ。
「くっ……」
床に置いたエルフィリアを抱えての回避では間に合わない。
そう判断したニーナは、ファイアボルトを躱すために左後方、右後方への移動を繰り返す。
どういうわけか、彼女はさきほど行使した反魔法を今は使うことができないようだった。
その間にエルフィリアに駆け寄ったクロムは、すぐにエルフィリアを縛っている縄を切ろうとする。
しかしすでにエルフィリアは自分の魔法でそれを終えていたようで、エルフィリアはさきほど膝で強打された腹を押さえながら、よろよろと立ち上がる。
「助かったのです、クロム……クロムが時間を稼いでくれたおかげで、どうにかなったのです」
「う、ううん。そんなことより怪我は……」
「これくらい問題ないのです」
そんな会話を交わす二人のうち片方、エルフィリアを、ニーナは訝しげに見据えていた。
「……どういうこと? どうして魔法が……声だって封じたはず。それに今、私にかけられた魔法は……」
エルフィリアは縄に付与された魔法、魔力の波長を乱す魔法によって魔法を使えない状態にされていた。
しかし魔力の波長を乱すと言っても、その乱す側の魔法の波長は一定だ。
エルフィリアはその乱す魔法の波長をもとに一定のパターンを自力で解析し、乱されることを前提とした魔法の形成を行った。
本来ならなんの意味もないはずの魔力の流れ。しかし乱されることによって魔法の形を成すように仕組まれていたそれが反魔法を行使し、波長を乱す魔法を打ち消した。
その後、自身にかけられていた波長を乱す魔法をニーナへとそっくりそのままお返しして、声を封じられる魔法も反魔法で打ち消した。
波長を乱す魔法は持続的にかけ続けなければ効果が発揮されない魔法なので、今はもうニーナは魔法を使えてしまう。しかし、かけられた直後はそうはいかない。彼女はクロムのファイアボルトを打ち消すことができない状態にあり、躱すしかなかった。
「魔力がないからって、あんまりなめるなってことなのです」
エルフィリアがやってのけた芸当は、非常識極まりないことだ。
尋常でない、魔法に対するセンス。
そして魔力がほとんどなく、いかに効率的、そして効果的に魔法を使うかを突き詰めてきたエルフィリアだったからこそできた芸当である。
「……ふぅ」
ニーナは少しめんどくさそうに肩を竦めた後、しかし意地悪そうに口の端を吊り上げた。
「さすがは……ヴァイスィードハーツの姓を受け継ぐだけのことはあるってことかしら?」
「……ヴァイスィードハーツを、受け継ぐ?」
「クロム。耳を貸さなくていいのです。さっさとここから逃げるのですよ。クロムにはファイアボルトで牽制をお願いするのです。私はニーナが使う魔法を反魔法で全部打ち消すので」
「で、でもわたしのファイアボルトじゃニーナには」
「熟練度が違うだけなのです。クロムは習ったばかりだから術式が教科書通りで素直すぎるのですよ。だから、撃つ直前に私がその術式に手を加えるのです。そうすればニーナはクロムの魔法を無効化できなくなるのです」
他人の魔法に手を加える。エルフィリアにだって、こればかりはそう簡単にできることではない。
だが魔法を直接教え続けたクロムにのみ、エルフィリアはそれが可能だ。
エルフィリアの指示に素直に頷いたクロムは、素早くファイアボルトの魔法陣を形成する。
さきほどはエルフィリアを巻き込まないようにする必要があったが、もうその必要はない。自分の内側にある莫大な魔力をこれでもかというほどに詰め込んで、上級魔法にも匹敵する巨大な火球をいくつも作り出す。
その隣でエルフィリアはクロムの術式に手を加えつつ、魔力への感覚を研ぎ澄ませてニーナの魔法の発動に備える。
そんな二人の様子をしばらく眺めた後、ニーナは深々とため息をついた。
「はぁ……なにもわかっていないのね。あなたたち程度の実力で、本当にこの私をどうにかできると思っているの?」
ニーナは常人の八百倍程度の魔力を持っていると言っていた。
それが嘘である可能性もある。しかし嘘であるとしても、口にしたその数字よりも少ないということはありえない。
仮に嘘であるとしたら、間違いなく八百倍以上の魔力を持っているということだ。
一方で、こちらには八百なんて目じゃない何兆という膨大な魔力を誇るクロムと、卓越した魔法技術を備えたエルフィリアがいる。
条件だけで見れば、クロムとエルフィリアの方が有利に見えるかもしれない。
しかしそうではない。魔力量と魔法技術は、その両方が一つの存在に宿ってこそ真なる力を発揮する。
クロムには魔法技術がない。エルフィリアには魔力量がない。だが、ニーナはそのどちらをもその身に宿している。
しかも彼女は魔族だ。あの魂の融合魔法の研究にはエルフィリアは非常に手を焼いている。
もしも魔族の術式を使われたりしたら、その無効化は容易なことではない。
「力の差を思い知らせてあげる必要があるようね」
ニーナの全身に魔力が滾る。
クロムがそんなニーナに巨大ファイアボルトを撃ち込み、大爆発を引き起こした。




