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第68話 領土拡大の真意

「閣下、グーン国が陥落いたしました。いかがいたしましょうか?」

「うーむ……我々の中で最も国力が弱いとはいえ、こうも簡単に国1つが落とされるとはな……アーノルドも討死してしまったし、かなりの難敵だな」


 ハシバ国包囲網の元締めであるイシュタル国王は徐々に敵の強さが分かってくるにつれて眉間にしわを寄せる日々が明らかに増えた。

 正直な話、敵は強い。だがこのまま負けっぱなしでいるわけにはいかない。何か手を考えなくては……。




 戦争が終わりグーン国陥落後、諸々の手続きも終え、起伏の少ないが心が落ち着く日々が戻ってきたある日、1通の手紙がやってきた。


「閣下、アッシュル国からの使者と名乗る者が国王からの手紙を持参してきたとの事ですが、いかがいたしましょうか? 署名と捺印(なついん)を見る限りは、本物と言っていいでしょう」

「アッシュル国? 確か包囲網参加国だったよな? それがまた何で? まぁいい。手紙は受け取ろう」


 アッシュル国

 ハシバ国包囲網参加国の中で中堅どころの勢力で、良くも悪くもそこそこの国だ。

 事前に軽く調べたところによると統治こそしっかりしてるものの、今ひとつ信用に欠けるともっぱらの噂で、国としての総合評価は低めである。



 その国の王が直々に書いた手紙の内容は要点を押さえて言えば、

「包囲網ではマコト様のハシバ国を押さえつけるのは不可能だと思いまして、マコト様の側に付こうかと思っております」

というものだった。


 ……要するに、グーン国があっけなく落ちたのを見てビビッて包囲網を裏切るつもりらしい。


「ディオール、どう思う? 俺はこのまま泳がせておいたほうが良いとは思うんだが」

「それでいいでしょう。いざという時に使えそうですからな」


 マコトはアッシュル国に対して出来る限り好意的な内容の手紙を書いて使者に渡す。とりあえずは使えそうな駒だし、生かしておこう。と思ったのだ。




 その日の仕事を終えて、マコトは家に帰ってきた


「あなた、お帰りなさい」

「ぱーぱ。ぱーぱ。おかえり。おかえり」


 メリルと、立って歩けるようになり言葉も少しずつ覚え始めたケンイチが出迎える。

 オーガの成長は早く、魔物に詳しいクローゼが言うには人間のおよそ3倍の早さらしい。生後3か月でもう立って歩けるようになり、言葉も覚え始めた。

 また、メリルは第2子を妊娠中で来年の冬か春ごろの出産予定だ。


 メリルとケンイチ、それにクルスが加わり家族そろっての夕食、マコトはクルスと話をしていた。


「オヤジは毎年夏になると戦争してるんだな。もしかして未来から来たオヤジの言った事、マジで信じてるのか?」

「ああ。本当は俺だって半信半疑だが信じざるを得ない。10年後の俺が持っていたスマホは俺が持っているの物と全く同じで操作もできたし、この世界の人間には読み書きできない日本語も使っていた。多分本当の事なんだろう」

「だとしても、だとしてもだよ? ちょっと軍拡や領土拡大が急すぎやしねえか?」

「まぁありていに言えばお前やメリルの為かな」

「俺や、母さんのため?」

「ああ。もし本当にヴェルガノン帝国が襲って来ても大丈夫なように対策をしておきたいのさ。お前たちが死んでいく様をただ指をくわえて見ているのは嫌だからな」




「国を大きくできなかった」



 未来からやってきたマコトが生前出来ずに後悔したことのリストの最も大きなものだ。

 彼によると西大陸北部は死者の国、ヴェルガノン帝国が統一支配して凄まじい国力を持っていた一方で、大陸南部は帝国の侵攻開始まで小国が小競り合いをして体力を消耗していたらしい。


 1枚岩の大帝国 対 有象無象が群れているだけ


 こんな対決では帝国側が勝つなんて10歳にもならない子供ですら分かる。だからこそ彼は国を大きくしろ、と強く強く書き残していた。それに従いマコトは軍拡、それに領土拡大にひた走っている。

 制圧した国や地域に圧政を敷くことや民の奴隷化も無く、税制も本国と同じにするのはヴェルガノン帝国に対する抵抗勢力を作るためだ。


 全ては国を、そして家族を守るため。であった。




【次回予告】


「あなたはいつまで盗みを繰り返すおつもりですかな?」彼は言った

「しょうがねえだろ。俺の取り柄はこれだけだ」男は返す。

「ではあなたを雇うとなるとどうでしょうか?」彼は男にそう返した。


第69話 「盗賊アズール」

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