表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/127

第18話 呪われたエルフ

「そうか。あの牛共は失敗に終わったか。で、そっちはどうだ?」

「問題ない。それより約束は守るよなぁ?」

「ああ。奴の領土は半々に分ける。後は俺達が軍を指揮するだけだ。あいつには大した戦力も無いはずだ」

「ああわかってる。楽勝だな」


 密かに会ったミサワ国とランカ国の王2人はほくそ笑んだ。




 ミノタウロスの襲撃以来、まだまだ力不足である。と痛感したマコトは更なる戦力増強を狙って商人から高い金を払って仕入れた神霊石を1個(ちなみに高くて1個しか買えなかった)使い、召喚の儀を行う。

 魔法陣が「金色」に輝いた。


「おお!SR(スーパーレア)か!?」


 初めての大物にマコトは大いに驚く。光が静まると、魔法陣の中央に現れたのは、弓を背中に背負った男だった。


「呼び出したのはあなたですね?」


 男は問う。

 スラリと伸びた身体に芸術的なまでに整った顔立ちは、世界に名をはせる彫刻家が手掛けた大理石像かと思わせるほど。

 銀色の髪はつややかでコシがあり、黄金色に輝く瞳と組み合わせると幻想的な美しさがある。

 耳はピンと横にとがっており、それだけを見ればエルフなのだろうと思う。

 だが1点、普通のエルフと決定的に違う所があった。彼の肌は夏の太陽に焼かれたような褐色であった。つまりは、ダークエルフだ。


「お前、ダークエルフか?」

「やはり、何かしら問題でも?」

「いや、聞いただけさ。とりあえず自己紹介してくれないか?」


肌の色は特に気にせずマコトは召喚した者に問う。


「はぁ。珍しいですね。肌の色を気にしないなんて。前に2回ほど王に召喚された事があるのですが肌の色を見ただけで追い返されたんですがね……と、無駄話はこの辺にしますかね。

 私はエルフェン。とあるダークエルフの部族を率いています。60名ほどいる私の部族の安全な移住先が欲しい。それさえできれば私だけでなく部族全員があなたに協力しましょう」


「分かった。ただ、俺だけの判断じゃ決められないんでちょっと話し合いする必要があるな。お前の事はしばらく客人としてもてなす事にするがそれでいいか?」

「分かりました。それで構いません」


 1時間後、部下数名と共にダークエルフの受け入れに関しての緊急会合が開かれた。


「アタシは別にいいんじゃないのか、って思うよ。ゴブーにアタシにトロルにマンドレイクまでいるこの国じゃあ、何を今さらって思うけどな」

「ダークエルフってぇと弓の達人じゃないですか! オイラ一度でいいから本職の腕前を見たかったんですぜ! オイラも受け入れに賛成しますぜ」

「私も賛成! ダークエルフって超イケメンなんでしょ!? 見たい見たい!」

「私は出来るだけ関わりたくないですな」


 ゴブーとお虎、それに薔薇の騎士団副団長が賛成する中、ディオールがそのムードに水を差した。


「確かにダークエルフの弓の腕は素晴らしいですし、魔法の技術も高い。我が国にとってはのどから手が出るほど貴重な戦力となりましょう。

 ただ対外的な印象は確実に悪くなるかと。トロル程度ならまだ奴隷だと言い張れば何とかごまかせますがダークエルフと関わるとなるとさすがに言い訳のしようがありませんぞ。

 閣下。最終的な判断は閣下にお任せしますし、どんな内容だろうと私達は従います。ただダークエルフを受け入れるとなるとそれなりの覚悟は必要だとは思いますぞ」


 彼にしては珍しく険しい顔で王に忠告した。




 その日の夜、急きょ設けられた客室にいたエルフェンを訪ねた。


「エルフェンだっけか? 今後の処遇について部下と話し合った。最終的な判断は俺の一存で決める事になった」

「そうですか。まぁ期待はしてません。たった100年も生きれない人間に1000年間約束を守れなんて酷な事はしません。ほんの30年でも約束を守ってくれればいいですよ。裏切られるのには慣れていますし」

「!! ずいぶん悲しい事言うじゃないか」

「悲しい事? 何がですか?」

「……」


 沈黙が流れる。それを破ったのはマコトだった。


「よーし決めた! お前の部族を受け入れる! 何としてでも俺の国にお前らを定住させてやるぞ!」

「良いんですか?」

「気にするな! ここは俺の国だ! 俺が仕切ってるんだ! 誰にも文句は言わせねえ!」


 マコトはここぞとばかりに職権を使い、半ば強引にエルフェンの部族を受け入れることを決めたのだった。



 翌日



 城の前の広場、と言ってもただの開けた土地だったが、そこに神霊石を持ってマコトとエルフェンがやって来た。


「エルフェンの部族を呼び出せ!」


 マコトはシューヴァルの商人から買った神霊石の力を開放する。石は粉々に砕け粒子となり周りに霧のように広がる。

 霧は辺りにしばらく漂い、その後消え去するとあらかじめ準備をしていたエルフェンの部族の者たちが姿を現した。


「族長、ここが安住の地なのですか?」

「ようやく落ち着ける場所が見つかったんですね」

「フン。どうだか。人間はすぐ約束を破る。たった20年程度でコロリと忘れるじゃないか。今回も一体何年続くことやら」


 感想は色々だがおおむね好意的に迎えてくれたようだ。


「俺は約束を果たしたぞ。今度はお前の番だ」

「良いでしょう。これより私は閣下の忠実な(しもべ)。例え大地がその姿を変えようとも、決して変わらない忠誠を誓いましょう」


 彼の胸から金色の光が飛び出し、マコトのスマホの中に入っていった。

 パラメータを見てみるとディオール程ではないが非常に高い。かなりの逸材だ。


「さあみんな、私と同じように新たな王に忠誠を誓ってください。大丈夫。悪人ではないでしょうから」


エルフェンはそう言って皆に忠誠を誓うよう促す。

何も知らない子供と女、人間に明らかな敵意を見せる老人たちを除いた約30名のダークエルフが配下に加わった。




エルフェンの部族が呼び出されたのを見て女たちが集まりだした。

薔薇の騎士団団員2名がエルフェンに狙いを定める中、彼女らは彼と親しそうに会話する美しい女のダークエルフと子供が2人いるのを見た。


「あなた? その方は?」

「パパ、このおんなのひとたちだーれ?」

「あ、あなた?」

「パパ?」


唖然とする2人。


「ああ、紹介します。妻のアリシアに息子のエルル、娘のアイーシャです。よろしくお願いします」

「は、はぁ。こちらこそよろしく」


2人の恋はいともあっけなく終わったのは、言うまでもない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ