第111話 首都防衛戦
ハシバ国首都地域を守る城壁に防衛兵が集まっていたがその表情は重苦しい。
多くはこれが初陣であるというのに、戦う相手が不死者という普通の戦いの常識が通用しない不気味な相手だったからだ。
死者の群れが城壁を囲み、生者にとっては重苦しい攻城戦が始まった。
「ディオール様。何とかかき集めた軍勢はおよそ3000。ただ、半数近くが実戦経験の無い予備兵です」
「敵軍は?」
「推定ですが……少なく見積もっても10000から12000かと」
「……10000だと? 間違いではありませんね?」
「……私も間違いだと信じたいのですが、各地からの情報をつなぎ合わせるとこれが事実です」
「ううむ……」
正直、戦う前から結果はおぼろげながら見えている戦だ。この戦い、我々が負けると。
「抵抗するのなら容赦はしない。降伏するか、それとも戦って苦しみながら死ぬか、どちらかを選べ。10分だけ時間をやる。その間に賢明な判断をしてくれることを祈る」
司令官と思われる首なし騎士の女が降伏勧告を送ってくる。当然、飲めるわけがない。
「ディオール様、いかがいたしますか?」
「当然飲むつもりはありません。出来るだけ時間稼ぎをしてくれませんか?」
「ハッ。かしこまりました」
ディオールは使者を出して交渉に臨む。
「何? もめている、だと?」
デュラハンの女はハシバ国の使者と話をしていた。
「はい。今現在降伏派と抗戦派でもめていて、とても10分以内には結論が出そうにないんです。2~3時間ほど時間をいただければ、結論は出ると思います」
「なるほど……なら仕方ない。3時間だけ待ってやる。その間に結論を出せと伝えなさい」
「あ、ありがとうございます!」
あまりにも簡単に自分たちの時間稼ぎ作戦が上手くいって拍子抜けするほどであった。吉報を手に帰ろうとした、次の瞬間!
使者の背中から胸にかけて女の持つ剣が突き刺さった。無論、心臓を貫通する致命傷だ。彼は訳が分からないまま血とともに力が抜けていき、その場に倒れ込む。
しばらくして彼は立ち上がる……不死者として。ティアラの忠実なしもべとして。
「お前たちの思い通りにはさせんぞ。相手の司令官はディオールといったか? そいつの入れ知恵を教えてほしいんだが?」
「はい。お教えいたします」
かつてハシバ国の使者だった者はティアナに「入れ知恵」を教える。
「……そう。やはり時間稼ぎね。予定通り10分経ったら攻め込めと伝えて頂戴」
ディオールの策はすぐに見破られてしまった。
「……もうすぐ10分が経つというのに使者が帰ってきませんね」
「交渉する気は無いのでしょう。多分彼はもう殺されているでしょうな。各員にいつでも戦えるよう指示をしてください」
10分が経つと、ディオールの言葉通り戦闘が始まる。
相手は骨の巨人という攻城兵器を持っており、それを中心に不死者の群れが城壁へと向かう。
せっかく作ったのにバラすのはもったいないと建国初期に築かれた木の城壁と、後年になってその内側に築かれた石の城壁という2重の守りに加え、ドワーフ謹製の大砲が木の城壁に2門、石の城壁に4門配備されていた。
「砲撃用意! ……撃てぇ!」
合図と共に砲兵が砲弾を放つ。聖別された砲弾はボーンゴーレムの身体を直撃し風穴というには大きい穴をあけ、そこを起点にヒビが入りやがてボキリと折れるように傷が裂け、ズズーンという轟音を立てて崩れ去った。
「いいぞ。その調子だ! 巨人どもにたらふく食らわせてやれ!」
大物を仕留めたことで活気が少しだけ戻る。あとは兵と兵とのぶつかり合いだ。
死者の群れは相手がボーンゴーレムを倒せるほどの武器を持っているのを知っていたため、それが無くても大丈夫なように攻城ハシゴも持参してきており、それをかけて襲ってきた。
対抗するハシバ国防衛隊はハシゴを押し返すが、不慣れなためか手際が悪くぽつぽつと侵入を許してしまう。
「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ァ゛……」
剣を振り回すように襲い掛かってくるゾンビを、銃弾が貫く。幸い、聖別した銃弾は予備兵にもいきわたっており不死者との戦いでは有利だった。
だが物量は圧倒的に相手の方が上で、質より量と言わんばかりに頭数で強引にグイグイと押してくる。
徐々に城壁の上にいる者の中で不死者の割合が多くなり、各所で銃が苦手とする乱戦も起こり始め押されていく。このままでは城壁陥落も時間の問題であった。
「クソッ! 数が多すぎる!」
防衛隊がその物量に圧倒されようとした、次の瞬間!
聖別された矢の雨がヴェルガノン帝国の兵士たちの背中に降り注いだ。
「!? 何だ!?」
【次回予告】
突如降り注いだ矢。それを放った主とは?
第112話 「法王の使い」




