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4月の花時雨  作者: うみがめ
7月
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7月 −1−

ー7月ー


雲ひとつない突き抜けるような晴天の下、本村沙也加はゲンナリしていた。暑い、とにかく暑いのだ。日本の肌にまとわりつくような湿気を含んだ暑さとは違う、ジリジリと肌を焼く暑さは正に常夏のものだった。周りを見渡せばほとんど水着のような姿で闊歩する観光客の姿が目につく。10代であろう男女の若者のグループは浮き輪片手にビーチへとのんびりと向かっている。昼間から大ジョッキを傾け、日本であれば周りから白い目を向けられそうな露出の高いワンピースを来た初老の女性の前には、同じくビールを飲んでいる老人がサングラス越しに通りを眺めていた。耳をそばだてるとそこかしこから上がる喧騒はどこかひとつの国ではなく、色々な国から来ているであろうことを示していた。


沙也加がゲンナリしている理由は暑さに以外にも理由があった。出発する前日まで仕事をこなしていたため、楽しみにしていた旅行の準備もままならず、空港でかった日焼け止めがどうやら合わなかったようで顎にいわゆる白ニキビがいくつか顔を出していた。とは、いってもせっかくこうして憧れのキャッチフレーズである、青い海、白い空のバケーションを過ごしに付き合って4年の恋人ときたのだから楽しむべきなのだろう。といっても乙女心はいくつになっても複雑なのである。


「お、あそこにある果物でも買ってビーチでのんびりしようか。」高村貴文(たかふみ)はそう言って道路を挟んだ向かいに出ている屋台に向かって歩いて行った。慌ててその後を追う沙也加。


「エ、エクスキューズミー」慣れない英語を使う貴文を横目に沙也加はためらうことなく話しかける。

「すみませーん、このパイナップルとそっちのチェリーをください」注文を受けた老人は笑顔で応じ沙也加たちに手渡すまえに果物ペットボトルの水をかけ代金を受け取った。

買ったさくらんぼをさっそく口に入れ沙也加はビーチのほうへと顔をむけた。

「やっぱ伊達に留学してだけないね」

「えー、今のはめちゃくちゃ基本の基本でしょ。パイナップルとチェリーなんて日本でも普通に使う単語だし。高村君、基本からやりなおしてきたまえ」最後の一文を今流行りのCMの決め台詞と一緒に声色を使う沙也加に貴文はこれまたCMと同じように殊勝にイェス、サーなどと返していた。

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