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思い込みで僕も生きている

 最近、ライブ配信をしながら自殺を試みた女性の動画があがっているらしい。その話を知人から耳にした。実際に動画の一部分を僕もみた。その真偽については調べていない。個人的には、そういうことはいつか起こることだと想定できたし、すでにそういう出来事は起こっていただろう(調べていないが・・)。知人は衝撃を受けたらしいが、僕は「しばしば、電車に飛び込む人はいるから、珍しいことでもない」と感じた。


 その知人によると、生放送に写っている女性は、ホームから電車に飛び込むまで別れた彼氏との関係について話をしていたらしい。素直に話を受け入れば、恋愛に関することで悩み、それを理由にそのような行為に至ったと推測できる。ちなみにその女性は高校生らしい。


 学校にいると世界が狭く感じる。これは大学生活を送っているときに感じた。義務教育や高校という環境は、いつも同じ人間と寄り添い、嫌でも空間を共有しなければいけない。畢竟、学校が自分にとっての世界のように感じてしまう。そこでいじめられると、もう自分には逃げ場所がないように感じるのも想像できる。その女性も、彼氏に振られたことで、もうこれ以上自分に合う人はいないと感じたのかもしれない。これまた想像だが。


 ただ、気になるのは「どうして、死ぬことで、自分の苦しみから解放されると感じたのだろうか」だ。これまでにも、この類の話はしてきた。僕の考えていることとしては、人間が死んだあとの世界は誰もわからない。だから、死んでもラクになるかはわからない。これだけ。死後の世界は考えても結局のところ「わらかない・・」。でも、わからないと気づいただけ、よいではないかと僕は思っている。


 電車に飛び込んだ彼女は、きっと「死んだ先の世界が何かわかったつもりでいた」のだろう。だから、飛び込んだ。いまの自分の世界よりも、きっともっとよい世界が死後に待っていると考えたのだろう。世俗な言い方だと、「いまの人生よりはマシ」と思った。

 こういう言い方をする、ある人は、「それは逃げる行為だ」と主張する。だけど、もし死の世界が現世よりもよりよいものだとしたら、それは「逃げ」ではなくて、積極的な表現でも言い換えられる(たとえば、「向かう」「探求する」)。つまり「死の世界に向かう」と言った途端に、それを「逃げ」と表現するのは、自殺を抑止として僕には説得にかけるように思える。


 ただ、勘違いなさらぬように。僕は自殺を擁護していない。可能であれば、自殺する人がいなくなることを望んでいる。僕が思うのは、やっぱり死の世界をわかった気になることはできない、ということ。女子高生は、死生観をもっていた。よりよい世界が死後にある、という死生観をもっていた。もし、自分が抱く死生観を疑うことができれば、彼女の行為は違ったものになったのではないか。僕にはそう思えてならない。


 日本人の多くは、自分は宗教を信仰していないと思っている。だけど、人知が及ばない死の世界を知ったつもりになるためには、ある種の「信仰」が必要だ。だけど、日本人は死の世界を漠然なイメージとして持っている。「無の世界」「天国」というのがそうである。そういうものだと思っている。それはある種の思い込みだ。思い込みは一概に否定できない。僕も思い込みのなかで生きているからだ。思い込みから完全に逃れることはできないとすら思う。だけど、思い込みに疑問符をつけることはできる。死後の世界にも疑問を投げつけられる。そんな疑問を投げつけた、「自分とは何か?」と疑問視することもできる。この疑問視が世界を変える。いや、正確に言うと自分を変える。そのとき、その人の人生も変わる。


 そのことをもし彼女が知っていれば、彼女の人生は変わっただろうか。知人の話を思い返しながらそう思いを馳せた。

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