自立とは何か?
私事でありますが、一般的に「自立している状態」になりました。
今年から働くようになり、自分の収入で自分の生活を送るようになりました。世間ではこれを「自立している」や「社会に出た」と言うようです(個人的には、小学生も社会に出ているとは思います)。
「自立」という言葉で一般的に言われているのは、要するに親からの支援がなくとも生活を行える状態を意味するようです。その意味からすれば、僕は「自立した」といえます。
で、大きく変わったことはあるでしょうか?
正直にいって、無いです。たしかに、掃除や洗濯を自分で行う必要があるので、その分の時間が必要となります。あと、働く時間が増えたので家にいる時間が圧倒的に短くなりました。義務や責任も増えましたが、その分だけ収入も増えます。つまり、変わったものは”たったそれだけ”ともいえます。
つまり、自立したことで僕個人が素晴らしい人間になったとか、偉くなったとは思えません。これは、僕だけではないでしょう。「自立」できたとしても、何かが変わるのではないのです。強いて言えば、親に迷惑をかけずに生きることができます。つまり、家族というプライベートな領域で変化が起きるのであって、他者からみれば何も変化がないはずです。
ただ、一般的に「自立する」というのは、一つのステータスのように扱われています。「1人で生活しているのは、すごいですね」、と。
僕には不思議に思えます。「自立」は何もすごくはないのです。
すこし考えてみると、働き出して1人暮らしをすることは、厳密には「自立」と言えません。というのも、もし今の生活が続けられなくなったとしても、親が存命である限り(あるいは親と疎遠でないかぎり)、親を頼るという選択肢が残っているからです。
言い換えれば、親という存在が「一つのセーフーティネット」であり続けているのです。そうであるかぎり、現在も僕は、見えない安全装置に守られています。この状況を「自立している」といえるだろうか。
「自立」しているとはいえないとすれば、「自立」は、両親がいなくなったときに否応無く生じることです。だから、僕はまだ自立していない。親を看取った先に、「自立」が向こうからきっとやってくる。そのときになると、僕に変化が起こるかもしれません。




