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ぴょん子  作者: 川本千根
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浦島太郎vs亀

亮太のママは女の子のいない母親の常で、息子の彼女である私と遊びたがった


亮太のママは音大出身で、薬局は手伝わず、趣味でピアノの先生をしている


私は亮太の家に初めて遊びに行った時、猫足の家具で統一されたリビングに小さいパイプオルガンがあったのに驚いた

初めて見たよ、民家でパイプオルガン…


私は県の中部に住んでいるからそんなに頻繁ってわけじゃなかったけど、お付き合いをした

一緒にミュージカルを観に行ったこともある


亮太がひとりっ子や長男だったらいやだったかもしれないけど、彼は三男だったから私は気楽にママと付き合った




2月末のある日、私は暇つぶしで亮太のママのフェイスブックを見ていた


そこにぴょん子登場


なぜっ!

どおしてっ!


私は寝っ転がっていたベッドで真上に飛び上がった


投稿された写真にぴょん子が写っていた

パイプオルガンの前でママとツーショットで

「可愛いお嬢さんとお友達になりました。ハート。」




その時私ははっきりわかった


これはぴょん子の復讐だ


大和と映画に行ったのも私に打撃を与えるためだったのだと


あの時のことを恨んで私に復讐しているのだって…


すごく些細なことで、恨まれたりするほどのことじゃないと思うんだけど、それ以外考えられない!





それは高校に入ってすぐの部活でのことだった


4月の終わり頃

まだグループもはっきり出来てなくて、探り探り気の合う娘を探しているころの話


数人の一年の部員と私とユーフォの美咲はミーティングだけで早く終わったから、カラオケ行こうって話をしていた


私は部室の隅にいたぴょん子にも声をかけた

「宇佐さんも行かなーい」


そうしたらちょっとピリッとした空気が流れた


あれ、まずかった?

宇佐さんは美咲と同じ中学出身でいつも一緒にいたから仲良しだと思ったんだけど…


「ごっめーん、今日親と約束がある」

「また今度ねー」

っと言ってそそくさと帰って行った


後からわかったんだけど、美咲は二人だけだとぴょん子と仲良く喋ったり一緒に遊びに行ったりするのに、決して自分の所属する集団にぴょん子を入れようとしない


私はその時何かを浮き彫りにさせてしまった


実力者でもないのに一人でいる子に声をかけてしまうのは幼稚園のころからの悪い癖


あのときぴょん子は私に恥をかかされたと思ったに違いない


私は所属してるグループが違うだでぼっちじゃないのよって


だけどぴょん子よ、私もあのあと大変だったのよ

あ〜こいつ空気読めないんだーみたいになっちゃって、それを挽回するのにどれだけ気と労力を使ったか!




浦島太郎は亀を助けてお爺さんにさせられた


助けられた亀はお前ごとき冴えない漁師が俺様を上から助けてんじゃねーぞっ、俺様を助けていいのは村一番の美女とか殿様だけなんだからなって思ったに違いない


自分を上から見た浦島太郎に復讐すべく、亀は太郎を竜宮城に連れて行き、彼の所属していた社会と若さを奪った




ぴょん子はあのとき一人でいるぴょん子を私が助けようとしたと思ったんだ


で、お前ごとき地味で冴えない女が上から私を見てんじゃねーぞー


バカにしやがって

復讐してやる〜って思ったに違いない


私…

気がつかないうちにぴょん子の宿敵になってたんじゃないだろうか

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