番外編 後日談
樹さんはふざけて私をモデルに変な女の子の人形を作った
ヒョロ〜っとして地味な服着て…白いシャツとベージュのスカート…幸薄そうな
それがふざけた人間の吹き溜まり、女玩事業部の人たちに好評で、シャレで商品化された
一部の女子中高生に「シュールでブサかわいい」って受けてそこそこ売れてる
シュール!
ブサかわいい!!
私やっぱり樹さんきらいっ
それと広報の小沢さんのことがどおしても気になって、樹さんに聞いたんだけど、ふふとか言って答えてくれない
よけい気になるんですけど…
ぴょん子にその怒りをぶつけたら
「あー大丈夫、大丈夫、たっちゃんは昔から女のローテション早いから付き合ってたとしても、別れてる別れてる」
ってめんどくさそーに言った
それはそれで考えてしまう…
樹さん最近変なもんばっかり買ってるから、この前冗談で、通帳見せてって言ったら
「プロポーズされたら見せる」
って言われた
げっ、こんな変な人と結婚なんかしたくない
スクランブル交差点の真ん中で突然動かなくなるし…
あの時は押しても引いても動かなくて困った
そうこうしてる間に信号が赤になっちゃって、近くの派出所からお巡りさん出てきてびびった
なぜか私が怒られた
押したり引いたりしてるのがはためには無抵抗の樹さんに暴力ふるってるように見えたらしい
交差点のど真ん中での痴話喧嘩
で、私がなんか始末書?みたいなの書かされた
交通妨害っていうの?
私前科一犯になっちゃったの?
樹さんはその間派出所で出してもらった麦茶を被害者面して飲んでいた
樹さん、車のない国で暮らしたほうがいいんじゃないかな
いつかひかれるよ?
モンゴルの大草原なんかどうだろう
きっと似合う
大草原のなかで夕日を浴び微動だにしない樹さん
うん、素敵素敵
パチパチ
私は一生日本で暮らすから、その姿が見られないのが残念だよ、樹さん
回らないお寿司も食べに連れて行ってくれたけど…
四国まで
まあよく聞くよね、バブルの時代にラーメン食べに北海道とか、蕎麦食べに信州とか
でも私はその前に瀬戸内海で船に乗らされて魚釣らされた
八時間も
もう船酔いしちゃって…
持ち込んだ魚でお寿司握ってもらったけど
気持ち悪くってお寿司どころじゃなかった
あんな思いしなきゃカウンターでお寿司食べられないなら私はもう一生食べなくていい
ああ…
多分同じようなことして速攻小沢さんに振られちゃったんじゃないかな…
そういえば、樹さんの家族も少し変だった
初めてお家に遊びに行ったとき、
「とりあえず籍だけでも先に」
と言ってお茶より先に朱肉と婚姻届出された時には驚いた
その間たまたまアメリカから帰ってきてた妹さんが走って玄関の鍵締めに行ったし
あのガチャって音、怖かった〜
『北風と太陽』の話をしてなんとかその場を切り抜けたけど…
なんかあの家族私に押し付けようとしてない?
私と樹さんは
洋服の趣味も違うし
食べ物の好みも合わないし
快適温度も違う
絶対結婚とか無理
無理無理っ
だけど…
昨日、体育座りでうつむきがちにどら焼き食べてる姿を見たら、いつもの自信満々の樹さんとは別人に見えて、庇護欲くすぐられた
なんでどら焼き食べる時だけああやって丸まるのかしら
私に背を向けちゃって
誰も取りゃあしないって
でもああゆう姿見ると胸がきゅうーっとなって抱きしめたくなる
危ない危ない
うっかりプロポーズしちゃわないように気をつけなくっちゃ




