千鳥足
「それでお茶してる時こりゃ私に気があるなと思ったから、私、一度吉○家とかで、牛丼食べてみたーいって言ったら亮太くんが一緒に行きましょうって」
くう〜ぴょん子もぴょん子なら亮太も亮太だ!
「あ、脈があるなーって思う若い男の子にそういえば、大体連れてってあげる〜ってなるから」
「ヤングエグゼクティブなら、回らないお寿司をカウンター食べてみたーいって」
「これ、私調べで100パー釣れるから」
「ヨネちゃんも機会があったら試してみな、ふふ」
ぴょん子…今すっごく悪い顔してるよ…
「いやーでもヨネちゃんの彼氏だったなんて悪いことしちゃったね、まあ彼女いるって言ってたけど…」
「なんか、一度スカートはいた女の子とデートしてみたかったって言ってたよ、亮太くん」
「ヨネちゃん相変わらずスカートはかないんだ」
私背が高いから似合わないんだな…
そういえば亮太スカートはけ、スカートはけって言ってたなぁ
「連絡来なくなったと思ったらヨネちゃんにシメられてたんだ、亮太くん」
「それから大和だけどさぁ、だれもヨネちゃんと付き合ってたと思ってないよ、多分」
「どー見ても、子供と保護者だったし」
「大和も間違えてヨネちゃんのことお母さんって呼んでたし」
大和よ…
「しかし、あれをよく男として見れるねー」
「私も大和の保護者として怪獣映画付き合ってあげたんだよ?」
「ヨネちゃんって趣味変わってるね」
「亮太くんはふつーだけど」
「大和に、たっちゃん、ぷっ」
確かに…
「でもヨネちゃんは恋愛体質のヤキモチ焼きだったんだねぇ」
「人は見かけによらないわー」
はぁ?恋愛体質?ヤキモチ焼き?
私が?
「私、勝手にヨネちゃんは恋愛とかしないひとだと思ってたよ」
「ちゃんと彼氏作ってたなんて立派、立派」
…すごい上から
「高校んときも結婚相談所とかで相手探すタイプだよねーってみんなで言ってたし」
みんなって誰と誰?
「いやー、でも今日は面白い話聞いたなっ」
「たっちゃんにも教えてあーげよっと、ヨネちゃんが誤解してたこと」
「まあ、あの人過去のことはどーでもいい人だけど、あはは」
私はぴょん子の言うことを全部信じられたわけじゃないけど、なんか結局謝って別れた
帰りのバスの中ではただひたすら心のなかで樹さんに詫びた
私、最後の方なんか人としてどうかと思う態度とってた
既読スルーあたりまえだったし…
せっかく樹さんが秘密の沢に連れてってくれて、蛍の乱舞を見せてくれたのに、私、超無表情でそれを見てた…
ふん、この浮気男と思って
すいません、すいません、樹さん
私は一生あなたの幸せをお祈りします
どうぞ広報のミスキャンパス小沢さんと末永くお幸せに
あ、それと女玩でもヒット商品を生み出せますようにっ
あと、亮太
スカートはけっていうリクエストを無視してごめん
でも、だからって他の女の子にふらふら付いていっていいわけじゃないよ?
バスを降りて自宅に向かう五分程度の道のりを私はふらふら歩いた
なんかまっすぐ歩けなかった
千鳥足ってこういうのを言うのかな…
ふふ、人が見たら酔っ払ってるように見えるだろうな
新興住宅地にある小さな建て売りの家のドアを開けたら、お母さんがパタバタ玄関に出てきて
「あんた、今まで何してたの、連絡もせずに!!」
ってえらい剣幕で怒られた
いつも8時頃には帰ってるからね
あー、もう10時まわってる
ごめんごめん、ラインにも気がつかなかった
「ごめん、友達とばったり会ってお茶してた」
「夕飯はいらない、明日の朝食べる」
「はい、これ」
と言ってお母さんに黒いストッキングを渡して、狭い階段を昇り自分の部屋に向かった




