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ぴょん子  作者: 川本千根
13/19

四度のぴょん子

そして今、目の前にぴょん子がいる


今の情況を説明すると…

えーと、昨日が私の24歳の誕生日だったから今日は3月3日


少し時間を巻き戻すと…


私はいつものように工場近くのバス停からバスに乗り家に帰るところだった


そのバスの中でお母さんからのラインの着信に気づいた

「明日隣組のお葬式だけど黒いストッキング買うの忘れた。お願い買ってきて。ハート」


私は乗り継ぎの駅前のコンビニに寄って黒いストッキングを探している時に


「ヨネちゃん?」

「ヨネちゃんじゃん、」

「久しぶり〜」

「私、今この近くの弁護士事務所で働いてるのー」


ってぴょん子に声をかけられたわけだ


四度よたびのぴょん子登場〜


ん?なんで?

今私付き合ってる人いないし、好きな人もいないよ



…まあ、いい機会だ

この際ガッツリぴょん子と話をつけよう


「うさ、今時間ある?」

「ちょっとお茶しない?」





ぴょん子を誘って入った駅構内のスター○ックスコーヒーの奥の席で私は9年間の思いをぶちまけた


謝るべきことは謝ったし、苦情を言うべきことは苦情を言った

そしてぴょん子を非難した


ぴょん子はポカーンとした顔をした


そして十秒くらいたってから


「ちょちょちょ、ちょっと待って」

と話し始めた





「ヨネちゃんなんか、すごーく誤解してるよ?」


「えーっと、わかりやすい話しからすると、上島うえしまたつきはわたしの母方の従兄だよ?」


…っ

はぁ?


「ばあちゃんが脳梗塞で市立病院に入院したとき、お見舞いに行った病院でたっちゃんたち家族にあって、ばあちゃんも様態が安定してたしせっかく久しぶりに会ったからって、一緒にご飯食べに行くところを見たんだね、ヨネちゃん」


「駅北銀座通りは親たちも一緒に歩いてたんだけど」


う、そ…

いや、私も一回は、生き別れの兄妹とか従妹とか、そう思おうとしたんだけど、それは現実逃避かと思って自分の中で却下したんだよ


「あのときたっちゃん、感性のいい会社の娘と付き合ってるって言ってたけど…ヨネちゃんのことだったんだぁ?」


感性のいい…

樹さん、私のこと、そう思ってくれていたんだ…


衝撃と疑いと感傷と反省で頭の中がぐるぐるしている私をよそに、ぴょん子の話は続く





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