戸締まりは 厳 重 に!
私はバンパイア。結構有名な存在だ。
たまに本屋に行くが、児童書でベストセラーだったらしいじゃないか! 実際は山も谷もない生活だけどね。
バンパイアは夜遅く、人の生き血をすするために住処を出る。
大抵の者と同じく、私は若い女性が一番美味しいと思うね。脂肪が程よくついて、若い血はサラサラ。絶品である。タバコなどを愛用しなければ尚よろしい。
中には脂ぎった中年を好む者もいるが、ちょっとなぁ……ドロドロの血液はキツイんだよなぁ。
住処についても城なら飛び立つのならば格好がつくのだが、私に飛ぶことはできないし、ましてや住処は……いや、話さないでおこう。
なにはともあれ、今夜も生き血をすするために住処を出たわけだ。
そこで、話しは始まる。
今夜も人を求めて歩き、一時間してやっと町についた。
電灯が照らす中、私は電気がついていなくて、雨戸の閉まっていない家を探す。
雨戸なんか閉まっていると、侵入に時間がかかるわ、大きな音がたつわで人目につく。
そもそも、私にそんな技術はもちあわせていない。
おっと、話がそれた。
しばらく歩いて見つけるとそっと忍びこんで窓をピッキングする。(よい子は真似しないでね!)
そして、ついに窓が開いた。
この頃念入りに防犯対策されているが、この家は不用心だ。
私的にはかなり嬉しい限りで感謝でいっぱいなのだが……駄目だろう。
どろぼうに狙って下さいと言っているようなものじゃないか。
『戸締りは、厳重に』だ。
ちなみに、私は二重窓をお勧めする。
どろぼうには手強い強敵であるし、外気温を通しにくくなるので快適に過ごしやすくなる。
まあ、こちらにとっては都合がいいのだけど。
私は家の中に靴を脱いで、小さくお邪魔しますと言いながら入った。
寝室を探し、失礼しますとささやいて入ると……
殺害現場を目撃してしまった。
「ぎゃああああ!」
一目散に逃げ出す。犯人が追いかけてくる。
特殊な事態に混乱する。
長々と生きてきたが、殺人事件に巻き込まれるなんて初めてだ。
いや、まあ、殺人事件に巻き込まれるなんて不幸、そうそうないことなんだけど。
まあ、仲間内で人型のままでも足が速いと評判があるこの私。
他の仲間のように、オオカミに変身したり、コウモリに変身したりなどはできないものの、脚力は人間より強いし、超音波は半径5mくらい発せる。
撒くことくらいはできるだろう。が、地の利がないため、行き止まりに入らないことだけは祈っておこう。
神は私に恩恵を与えたもうた。
犯人を撒くことに成功したのみならず、交番が見つかったのだ。
助かった!
私は歓喜し、交番に駆け込む。
「助けて下さい!」
あれから一ヶ月。犯人は取り押さえられ、被害者は命をとりとめた。そして私は……
住所侵入罪で刑務所に収容されている。
現実って、厳しい……