本の紹介51『消える総生島』 はやみねかおる/著
館ミステリーの傑作。人が、山が、そして島が消える。
はやみねかおる先生の作品は小学生の頃に夢中になって読んでいました。ミステリーというか、読書を好きになったきっかけがこの「名探偵夢水清志郎シリーズ」だったので、自分にとって忘れ難い存在です。
三つ子の中学生岩崎亜衣、真衣、美衣とその隣人である夢水清志郎という探偵が様々な事件、謎に挑むシリーズで、青い鳥文庫という児童向け文学のレーベルで展開していたのですが、大人が読んでも十分に面白い内容です。本当に子供を楽しませることができる作品は、大人をも魅了するのだということを教えてくれます。生半可なものでは、忖度する大人を騙せても子供には通用しないのです。
4作目の「魔女の隠れ里」や6作目の「機巧館のかぞえ唄」はかなりトリッキーな作品で本格ミステリーと言っても差し支えない内容かと思います。
シリーズ3作目の本作はミステリー定番の館もので、映画のイメージガールに選ばれた岩崎三姉妹と同伴者の夢水がロケ地である総生島で島に伝わる鬼伝説にまつわる事件に巻き込まれるという内容です。
孤島に佇む館に、怪しげな伝説、そして突如姿を消す宿泊客という王道ミステリーの展開を見せる本作ですが、意表をついたトリックで読み応えがあります。ミステリーファンや映画ファンは思わずニヤリとする小ネタもあるのですが、そこは元ネタを知らなくても楽しめるのでご安心ください。
館の設計者に関するネタは最初に読んだ時は全く反応できなかったのですが、高校生になってから有名な館ミステリー作品を読んだときに得心がいきました。知らなくても問題ないけれど、知っている、もしくは後で気がつくと面白いというネタの仕込み方は非常に塩梅が難しいもので、この点も作者の技量を感じさせます。
最後に読者に提示される事件の真相には、ちょっとヒヤリとするものがあるのですが、それが作品に深みを与えています。
本シリーズの最大の魅力は夢水清志郎のキャラクターにあるかと思います。大学で論理学を教えていた経験を持ちながら、一文なし、常識0の探偵として岩崎3姉妹の家の隣に引っ越してきた変人という設定で、飄々とした人物です。
名探偵を自称する胡散臭いおじさんで、生活力もない困った人なのですが、優れた推理力と、他者への優しい視線が魅力的です。事件の真相を明らかにすることを絶対の正義とはせず、場合によっては真相を自分の胸にしまい、より多くの人が幸せになるよう立ち回る姿は、ある意味で理想的な探偵像と言えるかもしれません。
シリーズはすでに完結しているのですが、私は終盤の何作かを未読のままにしています。いつか読もうと思っているのですが、思い入れが強すぎて終わりを見届けるのを躊躇っている状態ですね。何か特別なタイミングで本を開こうと思うのですが、もうちょっと先延ばしにしたいという気持ちです。
余談ですが、このシリーズはドラマ化しており、その際原作からアレンジが加えられているのですが、最大のアレンジは岩崎3姉妹が双子になっている点です。双子タレントの三倉茉奈さんと三倉佳奈さんが亜衣と真衣を演じていました。さすがに三つ子のタレントはいなかったのでしょうね。今はいるのでしょうか。
ちなみに夢水清志郎役は狂言師の和泉元彌さんでした。
舞台やキャラクター設定を色々といじっているのですが、独特の味が出ていて面白く観ていた記憶があります。終わり




