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枯れた世界に一滴の水を〜奇跡の水、【聖水】で砂漠となった世界を蘇らせる〜  作者: 神楽坂 炎


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第3話 魔術の歴史と今後

 あれから一日が経った。

 人間、一日水を飲まないとここまで苦しい思いをするとは思わなかった。


「俺は刀職人になるはずだったのに…」


 喉が渇いて渇いて仕方が無いというのに、この言葉がなぜか口から出てきてしまう。


 父の夢を、俺は叶える事が出来なかった。

 俺が幼すぎたせいで。


「父さん…俺ももう直ぐそっちへ行くからな」


 この砂漠の世界で生き残る目処なんてあるはずなかった。

 あとは死ぬだけ。運良く生き残ってもその先が悪ければ何も変わらない。

 気を抜くと意識が無くなりそうになる。


 というか、核の威力が馬鹿げている。

 たった一つの核でここまで荒廃するか。

 きっと魔術で爆発力を高めているんだ。


 *


 魔術。この世界に革命を起こした特殊な力。

 この魔術というのは、今から千年前に人類が突如として獲得したスキルだった。


 魔術という存在が認識されてきた時には、まだ魔術を使える者が少なかったが、今では当たり前の力となっている。


 魔術の研究で、空気中に微細に存在する『魔素』を人間が吸収し、体内で固めて『魔力』へと変化させ、これを消費する事で魔術が使えるらしい。

 つまり、人間は突然進化したというわけだ。


 そして、魔術は人間の脳に刻み込まれているらしく、全員が全員同じ魔術を使えるわけではないらしい。

 才能や遺伝が九割を占めている。


 魔術によって使えること、例えば「炎を生み出す」ことや、「電気を作り出す」ことだってできる。

 さらには「相手を回復させられる」魔術もあるそう。


 この魔術により世界は革命的な進歩を遂げた。

 本来実現不可能だとされていた技術だって、魔術を使えば楽々と突破することができる。

 例えば、物凄い量の電気を消費する電気機器があったとしよう。この電気機器を動かすには電線に流れている電気だけでは足りない。ではどうするか。

 それを解決する方法は、電気を生み出す魔術を使う事だ。

 これをすることで、半永久的に電気機器は稼働し続けられ、燃料の消費を抑えることだってできる。


 そんなに大きな電気量を使う電気機器なんて存在しないが、魔術のスケールについて分かってもらうために非現実的な機器を例として上げたが、つまりそれほどまでに魔術は圧倒的な力という事だ。


 そして、本題の「核の爆発力を魔術で底上げしている」という話。

 この桁違いの威力を出せる魔術は、俺の考えとして二つある。


 一つは「火炎魔術」だ。

 火炎魔術は、簡単に言ってしまえば炎を生み出す事のできる魔術だ。


 魔術というのは、相当な技術を求められるが「物に刻み込む」事ができる。

 例えば、剣に火炎魔術を刻み込んだとしよう。物に魔術を込め、発動させる条件としては「発動条件を決める」ことと「刻み込みたい魔術を彫る」ことだ。


 発動条件を決めるというのは一瞬の「縛り」に近い。

 「剣を振ったら出せる」や「地面に突き刺すと出せる」などを決める。


 そして刻みたい魔術を彫る。

 これがとても大事だ。

 国によってそれぞれだが、日本では「呪文」を彫る。

 彫った呪文に魔力を流し込み、それを解析した魔力が彫ってある具現化することができる、という原理だ。

 例えば「剣を振ったら火炎魔法を撃つ」と剣に魔術を込めたいなら「不礼波比遠波奈川(ふればひをはなつ)」と彫れば、剣を振ることで火を出す事ができる。

 魔術が千年前から使われてきたために、呪文は万葉仮名が使われている。


 さて、話を戻すがつまり、核の爆発部分に高火力の火炎魔法を込めればこれぐらいの規模を爆発するのは可能ではないか、という見立てだ。

 だが、この見立ては外れていると思う。

 理由は無難に強すぎる。

 こんな火力の爆発を起こせるなら、疾うの昔に世界は滅んでしまっているからだ。


 二つ目は「爆発魔術」だ。

 多分これが一番有力だと思う。

 爆発魔術は物を爆発させたりすることが出来る、火炎魔法の派生型だ。

 爆発魔術を込めたボールなんかを沢山核に仕込んでいるのだとしたら、高範囲に均一に爆発させることができる。


 以上、俺の見解だ。


 *


「水…水…」


 砂の上を這いつくばりながら水を追い求めていた、その時だった。


「なんだこいつ? 気持ち悪く地面を這いつくばりやがって」


 男の声が上から聞こえた。

 俺はその声に仰天し、上を見上げてしまった。


 昨日声を出しても誰一人として反応しなかったはずなのに。

 それに、気配に全く気付かなかった。


「あんたは…?」


 その男を見ると、黒いマスクをし、つばが黒く他全体は白い帽子を被り、何よりも、刀を持っている。


 不気味な背格好に俺は冷や汗をかき始めた。


 そして、この男の後ろに少女がいた。

 白い髪に宝石のように輝く青い目。

 砂漠の世界とは思えないような華やかな格好をしている。

 もしかしてこの男の娘か何かか。


「俺の名前なんてどうでもいい。それよりも、物資は何かないか」


 そう言いながら俺に刃を向けてくる。


 俺はその場で静かに立った。


 ああ、何年も刀と語り合ってきたから分かる。

 これは刀の望んだ使い道じゃない。

 刀は脅しの道具ではない。何故、もっと清らかな人間の元へ行かなかった。

 可哀想に。俺が今、その男の元から突き放してやる。


「持ってるわけ無いだろ。物資あったらとっくに使ってるし」


 と言っても、俺は今手ぶら状態。

 それに対して相手は刀を持っている。

 これは俺にとって分が悪過ぎる。

 ここは相手の動きや癖を見て、行動パターンを考える。


「ああ? お前今、この世界はどうなってるのか分かってんのか? 今、この世界は砂漠になってんだぞ。無法になったこの世界でやる事は、少しでも長く生きる事だ。そのためには相手から物資を得る。それが得策だろうが!」


「だから刀を使って相手から無理矢理物資を得ようと?」


「当然だ。昔からこの世界は弱肉強食だ。強い者は優遇され、弱い者は淘汰される。これは世界の理だ。この刀はな、俺の家に飾られていた特別な刀だったんだ。この刀を持って遊んでいたら、爆発に巻き込まれてこの有様だ。だが、運よく刀を掴み続けていたおかげで、家は消えちまっても刀は消えなかった。これは神のお告げだ。『この世界で最強になれ』というお告げ。魔術を得られなかった俺への慈悲というわけさ!」


 男はそう言いながら刀を振り回す。


 刀を掴み続けていたら刀は消えなかっただと。

 信じ難い話ではあるが、実際こいつは刀を持っている。

 じゃあこの砂漠になった原因は爆発魔術ではない。爆発魔術なら全てを壊し、呑み込むはずだ。


「魔術を得られなかった、同情するよ」


「なんだと? 魔術を持っているから弱者を哀れんでいるのか?」


「いや、俺だって無い。現実とは非情だよな。人は無心で人を蹴落とすんだから」


 魔術を使えない。それはこの世界で「死」と同等の意味。

 魔術によって世界は発展したとはいえ、根本的な話、そもそも魔術を持っていなければ話にならない。

 魔術を持っていない、つまり才能に恵まれなかった者は恵まれた者に一生見下され生き続ける。


 何度も何度も何度も、同じ目に遭い続ける。

 俺もその一人だった。

 周りは全員魔術を使えるのに、俺だけは使えない。幼少期は絶望的な人生を送ってきた。

 学校へ行けば傷が増えるばかり。

 先生も魔術を持つ生徒を優遇する。


 俺は、こんな世界が嫌いだった。

 滅びてしまえと何度思ったことか。


 本当は「父の夢を叶えたい」とか思って無くて、「自分の存在を証明したい」と思って刀職人を目指していたのかもしれないな。


 そう考えていると、胸が軽くなってきた。


 俺は拳を構えた。こいつの癖は見つけられた。

 あとは行動に移すだけ。

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