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第14話 旅立ちの朝

 夜が明けはじめた王都は、静かで……それでいてどこか痛々しかった。

 影兵との戦いが終わったはずなのに、街の空気には恐怖と疲労の匂いがしみついている。


 石畳には黒い煤が残り、屋根の一部は崩れ落ちていた。

 広場に積まれた木箱や屋台は壊れたまま放置され、パンの焦げたにおいと血の鉄臭さが混じって漂っていた。


 「……ひどい」

 参道から広場を見下ろしたミレイアが、思わずつぶやいた。

 普段は落ち着いている彼女の声が、少し震えている。


 エリシアは無言のまま広場を見つめていた。

 泣きはらした瞳はまだ赤く、顔色も青白い。

 けれど、その横顔は不思議と硬い決意を帯びていた。


 「夜が明けても……影の跡は消えないのね」

 かすれた声でそう言うと、彼女はぐっと拳を握った。


 市民たちも少しずつ外へ出てきていた。

 水を運ぶ者、壊れた屋根を直そうとする者、家族を探して名を呼ぶ者……。

 泣き声も、安堵のため息も入り混じって、まだ混乱は収まっていない。


 「あれ、墓守の子じゃないか?」

 誰かが僕を指差した。


 すぐ近くのパン屋の母親が子を抱えながら、こちらを見て小さく頭を下げた。

「昨日は、ありがとう……」


 でも、そのすぐ後ろにいた別の男は目を細め、僕とエリシアをにらみつけた。

「結局、王女も墓守も影を呼んだだけだ。次はもっと大きなのが来るんじゃないのか?」


 その言葉に、周りの人たちがざわつく。

 感謝と疑いが入り混じった視線が僕らに注がれる。


 (そうだよな……。感謝してくれる人もいるけど、まだ信じてもらえない人も多い)

 胸の奥がずしんと重くなる。


 「……仕方ないわ」

 エリシアが小さくつぶやいた。

「王都を守れなかったのは事実。だから、民が私を責めるのも当然よ」


 その言葉は冷静に聞こえたけど、拳を強く握る指先は真っ白に見えた。

 昨夜の涙がまだ乾いていないのだとわかった。


 「エリシア……」

 声をかけようとしたけれど、何も言葉が出てこなかった。


 そのとき、犬の鳴き声が聞こえた。

 「ワン!」


 振り返ると、黒犬のクロがしっぽを振りながらこちらに駆けてきた。

 泥にまみれてはいたけど、無事だった。

 その姿に、僕の胸に少しだけ明るいものが差し込んだ。


「クロ!」

 しゃがみこんで抱きしめると、クロは嬉しそうに舌を出して僕の手をなめた。

 その温かさに、昨日の戦いでこわばった体がほぐれていく。


 エリシアも小さく笑った。

「……あなたは強いわね、クロ。民に責められても、しっぽを振れるなんて」


 彼女の声はかすかに震えていたが、それでもほんの少し元気を取り戻したように思えた。


 夜明けの光が広場を照らし、煙の向こうに青空が見え始める。

 新しい一日が始まった――けれど、その光は王都の傷を癒すにはまだ弱すぎた。


 僕はランプを見下ろす。

 炎は小さく揺れながらも、まだ燃え続けている。


 (この光を、絶やさない。どんなに小さくても……)


 心の中でそうつぶやいたとき、背後から重い足音が響いた。


「ルカ、エリシア殿下。――陛下がお呼びだ」

 近衛の兵士が厳しい顔で告げた。


 僕らは互いに顔を見合わせる。

 王の間。そこへ再び向かう時が来た。



 王の間は、まだ昨夜の影の記憶をまとっていた。

 豪奢な柱も赤い絨毯も、荘厳さより重苦しさのほうが強い。

 玉座の背後には、影が潜んでいた名残の黒い染みがまだ残っていた。


 僕たちが入ると、国王はすでに玉座に腰を下ろしていた。

 大きな背中。けれど、以前より小さく見える。

 疲れと痛みが、その顔に深い影を落としていた。


「……よく、生きて戻ったな」

 国王の声は低く、かすれていた。

 でも、その瞳は娘をまっすぐに見ている。


「父上……」

 エリシアが膝を折り、頭を下げる。


 その姿を見て、国王の表情がわずかにやわらいだ。

 けれどすぐに、厳しい声に戻る。


「エリシア。お前は……王都を離れよ」


「……え?」

 エリシアが顔を上げた。驚きと戸惑いの色。


 国王は視線を外さずに続ける。

「王都は影に汚された。民の心もまた、不安に満ちている。

 お前がここにとどまれば、その不安はさらに大きくなるだろう」


「でも……! 私は王女です。民を置いて逃げるなど……」


「逃げよ、とは言っておらん」

 国王の声が玉座の間に響く。

「影を追え。影を断つ方法を探せ。それがお前に課す役目だ」


 エリシアの瞳が大きく揺れる。

「……私が、影を……」


 国王はゆっくりとうなずいた。

「お前がいなければ、王家は滅ぶ。

 影に立ち向かえるのは、もはや王族の血と……墓守の声だけだ」


 その言葉に、僕は思わず息をのんだ。

 玉座の前で名指しされるなんて思ってもいなかった。


「僕が……?」

 小さな声が勝手に漏れた。


 国王は僕を一瞥した。鋭い眼差し。でも、そこに敵意はなかった。

「墓守よ。お前の“声”は、影の居場所を暴いた。

 その力を王都に閉じ込めるのではなく、外へ向けよ」


 (外へ……? でも僕は、墓に仕える者で……)


 心臓がどくんと跳ねる。

 墓守としての役目と、この場で求められる役目が、頭の中でぶつかり合った。


「父上……」

 エリシアが震える声を出す。

「それは……私に旅に出よと命じることですか」


「そうだ」

 国王ははっきりとうなずいた。

「王都は私と残る者たちが守る。

 だが、お前は影の根を探し、断ち切る方法を見つけねばならん。

 それこそが王女としての務めだ」


 玉座の間に沈黙が落ちた。

 その沈黙の中で、エリシアの拳が震えていた。


「……わかりました」

 やがて、か細い声が響いた。

「父上の命に従います。私……この王都を離れます」


 国王の目が、ほんの少しだけ優しく細められた。

 でもその奥には、王としての決意が変わらず宿っていた。


「行け、エリシア。王家の名を背負い、必ず戻れ」


「はい……」

 エリシアは深く頭を垂れた。


 僕はその姿を見つめながら、胸がざわついていた。

 (王都を離れる……? 僕も、行くべきなのか? 墓守として、ここを離れていいのか……?)


 玉座の影が、静かに揺れたように見えた。



 「王都を離れよ」――国王の言葉が、ずっと胸の奥で響いていた。

 エリシアはうなずいた。父の命を受け入れ、旅立つ決意をした。


 でも、僕は違った。

 墓守は、本来なら王都に残るべき存在だ。

 墓に仕え、死者の声を聞き続けるのが役目。

 そんな僕が、街を離れていいのだろうか。


 玉座の間を出てからも、その迷いは消えなかった。

 参道の石段を下りる足が重い。ランプの炎が心臓みたいに揺れて、余計に落ち着かない。


「ルカ、大丈夫?」

 隣を歩くミレイアが心配そうにのぞきこんでくる。


「……わかんない」

 正直に答えるしかなかった。

「墓守って、本来は町を離れないものなんだ。死者の声を伝えるのが役目なのに……僕が旅に出たら、ここに残る人たちはどうなるんだろうって」


 エリシアは前を向いたまま、歩みを止めなかった。

「でも、ルカの声がなければ……私の旅は始まらない」


 その言葉に、胸がぎゅっと締めつけられる。


「私ひとりでは影に立ち向かえない。ミレイアがいても……声がなければ影の居場所もわからない。ルカがいて、初めて戦える」


 エリシアの背中はまだ細くて、泣きはらした跡も残っている。

 けれど、その声には確かに決意があった。


「……僕が必要、なのか」

 つぶやいた自分の声が小さすぎて、消え入りそうだった。


 そのときだった。

 耳の奥で、囁きがまた聞こえた。


 ――墓守よ。見届けるだけでは、誰も救えぬ。


 「……っ」

 心臓が跳ねる。

 まるで、僕の迷いを見透かしているようだった。


 ――共に歩め。声を使い、未来を刻め。


 冷たい声なのに、不思議とその言葉が胸に深く刺さった。

 (未来を……刻む? 見届けるだけじゃなく……?)


「ルカ」

 ミレイアが優しく声をかける。

「墓守ってね、“墓に縛られる役目”じゃないと思う。

 本当は、“死者の声を生者に届ける”のが役目なんだよ」


「生者に……?」


「うん。昨日、あなたが導いた言葉。あれで何人もの命が救われた。

 つまり、墓守の声は……生きてる人を守るためにもあるんだよ」


 僕はハッとした。

 墓守は死者のためだけじゃない。生きてる人の未来のために、声を届けることもできる。


 ランプの炎が、ふっと大きく揺れた気がした。


「……僕も、行くよ」

 気がついたら、口が勝手に動いていた。

「エリシアと一緒に。王都を離れて、影を追う」


 エリシアが振り返った。驚いた顔。でも、すぐに安堵の色が浮かんだ。

「ありがとう、ルカ……」


 その一言で、迷いはすっと消えていった。

 墓守としての役目は変わらない。

 でも、僕は“旅をする墓守”になるんだ。


 ――見届けよ。そして、守れ。


 耳の奥で声が囁いた。

 今度は不気味さよりも、背中を押されるように聞こえた。



 王都の城壁の上からは、まだ煙が上がっているのが見えた。

 影兵が消えた後も、火の手は残り、人々は必死に復旧に走っていた。

 その光景を見ながら、僕たちは城の外れに近い渡り廊下を歩いていた。


 エリシアは前を見つめ、無言だった。

 昨夜からずっと泣き続けて、ようやく涙は止まったけれど……表情には疲労がにじんでいた。


 僕もまた、胸の奥がざわついていた。

 「旅に出る」と口にしたのはいい。けど本当に、それが正しいのか。

 墓守としての自分に、まだ自信がなかった。


 そんな僕の横で、ミレイアがふっと笑った。


「二人とも、顔が暗いわね」


「えっ……」

 思わず変な声が出る。


「エリシアは泣きはらした目。ルカは悩みすぎて青ざめてる。これじゃ旅の前から負けてるわ」

 冗談めかして言ったけど、その声には優しさがあった。


 エリシアは視線を落としたまま、小さく答えた。

「……だって。民に声が届かなかったの。王女としての私に、意味なんて……」


「意味がない?」

 ミレイアは首を振った。

「いいえ。昨日、民を守るために立ち続けたその姿。誰もが見てたわ。言葉は届かなかったかもしれない。でも、行動はちゃんと届いてる」


「……行動、が」

 エリシアの声が少しだけやわらいだ。


 ミレイアは続ける。

「それに、声は一度で届くとは限らない。繰り返して、積み重ねて、ようやく人の心に入ることもある。ルカがそうだったように」


 不意に僕の名が出て、心臓が跳ねた。

「僕が……?」


「ええ。最初は自分の声を信じてなかった。でも、昨日は人々を導いた。『ここを狙え』って叫んだ時、兵士たちが動いて影を退けたでしょう?」


「あ……」

 思い出す。鐘楼の戦い。僕の声が確かに人を動かした瞬間。


「だからね」

 ミレイアはにっこり笑った。

「二人とも、自分を信じなさい。エリシアは王女として。ルカは墓守として。私も聖女見習いとして。――三人だから、旅ができるのよ」


 その言葉に、エリシアの表情が少しずつほころんでいった。

「……ミレイア、あなたって……本当に強いのね」


「強くなんかないわ」

 ミレイアは首を振った。

「ただ、誰かが泣いていたら、その涙を無駄にしたくない。それだけ」


 その答えに、エリシアは少し笑った。

「ずるいわね。私もそんなふうに言えたら……」


 僕は二人を見て、胸が温かくなった。

 (そうだ。僕たちは一人じゃない。三人で進むんだ)


 ちょうどその時、黒犬のクロが廊下の先から走ってきて、嬉しそうに吠えた。

 「ワン!」


 まるで「早く進もう」と言っているみたいに。

 その声に、僕たちは顔を見合わせて笑った。



 王都を離れると決めた僕たちは、その日のうちに旅支度を始めた。

 といっても、豪華な装備を整えるわけじゃない。

 背負える荷物は限られている。食糧袋、地図、ロープ。

 そして僕のランプ、ミレイアの聖具、エリシアの短剣。

 それだけあれば十分だった。


「王女様が旅支度なんて、信じられませんね」

 準備を手伝っていた侍女の一人がぽつりとつぶやいた。

 声は小さいけれど、皮肉っぽさがにじんでいた。


 エリシアは顔色を変えずに答えた。

「私は王女である前に、王都を守れなかった一人の者。だからこそ外に出て、真実を見つけます」


 その毅然とした返しに、侍女は驚いたように頭を下げた。

 でも、その背中が小さく震えているのが見えた。

 ――感謝か、不安か、僕にはわからなかった。


 城下町へ降りると、人々がちらほらと僕らを見ていた。

 中には睨みつけるような視線を送ってくる人もいた。

「王女は逃げるのか」

「墓守のせいで影が来たんだろ」

 そんな声が耳に入るたびに、胸が重くなる。


 でも、その一方で。


「墓守さん……」

 昨日助けた鍛冶屋の青年が駆け寄ってきた。

 包帯を巻いた腕をかばいながら、それでも真っ直ぐ僕を見る。

「俺、あなたのおかげで生きてます。……どうか、道中ご無事で」


 手渡されたのは、磨かれた鉄の釘数本だった。

 「困ったら使ってください。どんな木でも石でも打ち砕けるはずです」


 その言葉が、心にじんと響いた。


「エリシア様……!」

 別の女性が近づき、涙を浮かべて頭を下げた。

 昨日、子を抱いていたあの母親だった。

「私はまだ信じ切れません。でも、あなたが娘の前で影に立ちはだかった姿だけは……忘れません」


 エリシアは一瞬言葉を失ったが、すぐに小さく微笑んだ。

「ありがとう。私は必ず戻ります。その時まで、娘さんを守ってあげて」


 母親は深くうなずき、娘の手をぎゅっと握った。


 その光景を見て、僕の胸に少しずつ勇気が満ちてきた。

 不信の声もある。でも、確かに届いた声もある。

 (まだ全部じゃない。でも……一歩ずつなら、きっと届く)


 荷物を背負い直したとき、クロが「ワン!」と吠えた。

 しっぽを振って、まるで「早く行こう」と急かしているようだ。


 エリシアがクロの頭をなでながらつぶやいた。

「この子がいるだけで、不思議と前に進める気がするわね」


「そうだな」

 僕も笑ってうなずいた。


 王都の人々の視線はまだ重い。

 でも、その中に確かに温かいものも混じっていた。

 旅立ちの足音が、ゆっくりと始まっていた。



 旅支度を終えた僕たちは、城門の前に立っていた。

 東の空はまだ淡い色で、夜の残り香が石畳に漂っている。

 門の両脇には兵士が立っていたが、誰も言葉をかけてはこなかった。


 ただ、重たい沈黙。

 民衆の視線が背中に突き刺さる。

 その中には冷たいものも、わずかな期待も、どちらも混じっていた。


「行くのね」

 誰かが小さくつぶやいた。


 そのとき――。


 「ワン!」


 クロが吠えた。

 黒い毛並みを朝風になびかせ、まっすぐ前を向いている。

 しっぽを振るでもなく、ただ地面を見据えるように。


 「クロ……?」

 僕が呼ぶと、クロは再び吠えて門の外を指すように前足を踏み出した。


「まるで……道を示しているみたい」

 ミレイアが目を細めてつぶやく。


 エリシアも小さく笑った。

「やっぱり、この子はただの犬じゃないのね。影が迫ったときも、真っ先に吠えて知らせてくれた……」


 クロは振り返り、僕たちの顔を順番に見た。

 その瞳は黒曜石みたいに澄んでいて、まるで「迷うな」と言っているようだった。


 ――墓守よ、犬を追え。道はそこにある。


 耳の奥で声が重なる。

 僕は息を呑んだ。

 (クロが……導く? 声も同じことを言ってる……)


「……クロが進む道を、僕らも進もう」

 僕はランプを握りしめて言った。


 エリシアがうなずき、ミレイアも聖具を胸に抱いた。


 門の前に立つ兵士が、無言で槍を持ち上げた。

 通行を許す合図だった。

 彼らの顔には迷いもあったけれど、目の奥には確かに「託す」色が見えた。


 クロが一声吠える。

 その鳴き声は、夜明けの空気を震わせ、まるで鐘の音のように響いた。


「行こう」

 僕たちは歩き出した。


 石畳を越え、まだ冷たい朝露の残る土の道へ。

 クロの足跡が先に刻まれていく。

 その小さな足跡が、僕らの進むべき未来を照らしているように見えた。


 ――墓守よ、遠回りを恐れるな。


 声が再び囁いた。

 けれど、もう以前ほど冷たくは聞こえなかった。

 むしろ、不思議と背中を押すように感じられた。



 城門を抜けると、目の前に広がるのはまだ眠りの中にある王都の外の道だった。

 夜明けの光が少しずつ空を染め、東の空が朱色から金色へと変わっていく。

 冷たい空気を吸い込むと、胸の奥まで透き通るように感じられた。


 「……行くんだな」

 背後から兵士の声がした。振り返ると、城門の上に何人もの人が立ってこちらを見ていた。

 険しい顔もあれば、ただ無言で見守る顔もある。

 けれどその視線の中に、昨日よりも少しだけ光が混じっている気がした。


 エリシアは門を振り返り、まっすぐに声を張った。

「必ず戻ります! そのときまで……王都を守ってください!」


 その言葉に答えるように、何人かが槍を高く掲げた。

 無言の合図。でもそれは確かな「約束」だった。


 僕はランプを握り直した。

 炎は揺れながらも、夜を抜けた朝の光と重なって輝いている。

 (この光を絶やさない。遠回りでも……守るために進む)


「ルカ」

 エリシアがこちらを見た。

 昨日までの弱さは影を潜め、王女としての強さが少し戻っていた。


「ありがとう。私、もう逃げない」

「僕もだよ。……一緒に行こう」


 そのやりとりに、ミレイアが微笑んだ。

「やっと三人そろったわね。あとはクロも」


「ワン!」

 クロが勢いよく吠え、土の道を駆け出した。

 朝露をはじく足音が、やけに頼もしく響いた。


 僕たちは顔を見合わせて笑い、歩き出した。

 王都を背に、未知の道へ。


 風が吹き、背中の荷物を押した。

 新しい旅が、今ここから始まる。


 東の空で、太陽が完全に顔を出した。

 その光は王都の屋根を照らし、焦げ跡さえも黄金色に染めていた。

 ――まるで、「新しい一日」を約束するかのように。

 ルカたちは王都を離れ、ついに旅へと踏み出しました。

 それは不安と希望が入り混じる第一歩。

 次回、第15話「追跡の始まり」で、彼らは早速試練に直面します。

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