王女は幸せな夢を見る
とある国があった。
そこには王女が生まれたばかりで、お祝いムードが漂っている。
しかし、王女は目を開けることはない。
息もしてるし、たまに話したりするが、目だけは開けないのだ。
病気かと医者に見せたりしたが、理由は分からず、そのまま17年が過ぎた。
王女も17になり、座って口頭で説明をしながら仕事することが多くなった。
しかし、父と母である王と王妃は遠巻きにして、住む場所も少し遠い宮殿の中に暮らしていた。
乳母からお世話になっているメイドのシアラだけが心の拠り所だった。
そして、弟や妹が生まれても、会うことは無かった。
そんな時、妖精の国から使者が来て、こう言った。
「妖精の加護を持つ者を王の嫁にしに来た」
と。
妖精の加護なんて分からないもの持つものは居ないと思うと言うと、そんなことはないと言う。
「目に異変があるものが居るだろう?」
と言われて17歳になった王女を呼んだ。
そして、この者です!と叫び喜んだ。使者は王を呼び、迎えに来ると言う。
王女はわかりましたとだけ伝えた。
この王宮で私は厄介者だから、居なくなれば周りも安心するだろうと思ったのだ。
その日の夜、王女は夢を見た。
王も王妃も大臣たちも口を揃えて見目の麗しい王女だと褒め称えて、頭も良く、何より目が見えている王女をとても良く言ってくれる。
それに涙が出るほど嬉しくて、夢が覚めなければいいのにと思うのに、結局、目は覚めて朝が来てしまった。
嫁に行くとなり、妖精の王が迎えに来た。
そして、妖精の王は目に触れた。
そうするとあんなにも開かなかった目が開いた。
母から受け継いだ金と父から受け継いだ赤い瞳が初めてものを捉えた。
妖精の王の顔を見て、微笑んだ。
「素敵な人ね」
「君もね」
そのあと、父と母を見ると何処か余所余所しくて、今まで私を疎遠にしてきたそんな余所余所しさだろうともう心は動かなかった。
「今まで有難うございます」
一応礼を言い、そして、周りを見渡して呼ぶ。
乳母もしてくれたメイドのシアラを呼ぶと王女は泣いて貴女が育ててくれたのねと嬉しく思ったと告げて、一緒に来て欲しいと言った。
「私で良ければ、どこまでもついていきましょう。私の可愛い王女様」
そうして、二人と妖精の王と従者はその足で妖精の国へ行くことになり、王宮は何も用意せず、自分の物だけ馬車列に乗せて貰った。
そんな事が在ったこともあったのか、妖精の加護をもらえなくなったその国は衰退の一途を辿ることとなった。
妖精の国はというと、生まれてからずっと加護を持っていた王女が来てから活気が前にもまして出てきた。
幸せの魔法を持って生まれたのだから、当たり前だよと王は言う。
「ねぇ、私と暮らして幸せ?」
「ああ。幸せだよ。素敵な奥様」
「私も幸せよ」
今を生きる、王女は今は妖精の国の民の幸せな夢を見る。