不死の男の話
とある世界で戦争が起こっていた。
ドルベディア王国とディアステア帝国で諍いが起き、それが大きく悪化した。
ドルベディア王国は文明の機械兵を投入した。
それに対抗するべくディアステア帝国がとったのは一人の兵士の投入だった。彼は機械に吊るされて来て、敵の機械兵を殲滅していく恐ろしい兵士だった。それも致命傷を負わせたはずなのに次の日には平然とした様子で戦いにくる。
ドルベディア王国は恐ろしくてたまらなかった。
そんなディアステア帝国に一人の若者が兵士として入った。
「これから、帝国最前線に連れていく。勿論帝国内だ。そこで起きたことを目に焼き付けろ」
「はい!」
上官に連れていかれた場所には男が一人機械に吊るされていて、少女が泣いていた。
「お父さん。もういいよ。私の事なんか良いから」
「いいんだ。お前が幸せなら良い」
その親子に不思議と目が奪われた。
「彼を戦場へ!!」
「起動開始!!」
テンガロンハットを被った剣を2振り腰に帯び、拳銃を2丁持つ男はその声を聞いて、娘を離れさせた。
そして、機械が男を運んでいく。
1時間して戻ってきた男はボロボロだった。
「痛え。痛えよ」
そう言いつつ、悶えているうちに傷が消えていく。
少女は泣いて、この姿が許せない自分がいた。
男はずっと吊るされているらしい。
夜はここの警備も手薄になるらしい。
軍事会談がある日、俺はこっちの警備が手薄になった時、男に近づいた。
外し方は分かっていた。
事前に見ていたのだ。
少女を連れてきて、そばに置く。
「逃げてい下さい」
「君は?」
「新入りです。覚えなくていいです」
「こんなことをすれば」
「しー!いいから、逃げてくださいね」
機械の警備システムを落とし、機会を外した。
「動けますか?」
「大丈夫。ありがとう」
「いえ、早く。すぐ気づかれます。俺も逃げますから」
「ありがとうね」
娘を抱きしめて、渡した軍服に着替えて、去っていった。
これでいい。俺は死んでも。これでいいと思ったのだ。
そして、戦争は帝国の負けで決した。
あの不死の男はと言うと、どこかで幸せに暮らしているとか。
それは彼の耳に入ることなく終わったが、感謝しか無いとずっと言っていたらしい。
それが誰の幸せか、分からぬまま。