雨と彼女と僕
私は愛されて育った。
しかし、生まれた時に魔女に呪いを受けた関係で、頭の上に雨が降っているから、特殊な防水加工の布やものを使っていたり、いろいろ不安なことが多い。
それでも愛されているけれど、社交場には行けないねと言われてきていた。
勉強だけはずっとしていた。
「シエラ。今日も外に行くのかい?」
「雨が室内だと水溜まりになっちゃうから申し訳なくて」
「そんなこと気にしなくていいのに」
「でも、世話係のリア達が大変でしょう? 少しでも楽させてあげたいし」
「シエラが良ければいいんだけどね」
「うん。私は外好きよ楽しいし。行ってくるわ」
外に行くと、歩いて街中を歩く。
「お嬢さん。素敵な傘だね」
見知らぬ男性に声をかけられた。
「ええ。私、雨が降ってしまうから、傘は可愛いものを差しているのよ」
「好きなのかい?」
「傘は好きよ」
「君のことが知りたいな」
「あら、ありがとう。そんなこと言ってくれる男性いなかったから嬉しいわ」
そう笑うシエラに男は嬉しそうに手を取った。
二人でひとつの傘に入り、歩く。
特別な時間だった。
街を案内してくれて、楽しく歩いた。
「そろそろ帰らないと」
「そうだね。今日はありがとう。本当は送りたいけど」
「いいの。気にしないで。じゃあ、また会えたら会いましょう」
そうして、帰ると婚約者に欲しいと王族が言っているという話を聞いた。
つかの間の恋は叶わない。
そう思っていた。
婚約者を喜んでお受けしますと手紙を送った。
そうすると返事はすぐ来た。
会いたいというものだった。
その頃から、雨の調子がおかしくなった。
降ったり止んだりするのだ。
「寝てる間はいつも止んでますから」
リアが言った。
「嘘?!ほんとに?」
「ええ。お嬢様が寝てる時は降ってません」
「知らなかった」
「シエラ、王城へ行く時間ですよ」
「はーい」
気が進まないまま、王城へ行く。
その道もなんだか、気が進まない。
王城へ入っても気が進まなかった。
「婚約者シエラ・ブランシュエット。こちらへ」
言われた通り、雨に降られながら、カーテンシーをする。そしたら傘を差してくれた。
男の王族を見るとあの男性だった。
「貴方は!」
「びっくりした。僕の恋人になってくれる?」
「勿論」
そうして、時期王様となる第1王子フランティスと婚約を交わした。
それから雨は降らなくなったけど、傘が好きな夫人のために王子はよく傘を贈ったそうな。