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光を見つけることが出来るように


 ロロが神殿の奥まった所にある部屋に案内してくれた。

 中は広々としており、彼が言ってたように小さな噴水がある。


 ロロはここで野宿していたようで、カバンが隅に置かれていた。

 ここへ来る時には少しの食料をそのカバンに入れていたらしい。

 あとはランプやナイフなど。


 ……サバイバル……

 本当にハード過ぎない?

 この〝試練〟……


 私は顔を引きつらせながらも、精霊に祈りを込めて魔法を発動させた。


 黄緑と水色とピンクの小さな光の粒がどこからともなく飛んできて、グルグル楽しそうに回りながら噴水にダイブしていった。


「はい。これでちょっとは元気になるはずだよ。精霊の祝福を噴水にかけたから」

 私はロンググローブを外して、噴水の水を手ですくって飲んでみせた。

 

 うん。

 じんわりと体があったかくなって、回復効果をちゃんと感じる。


 私が魔法の効果を確認してからロロにニッコリほほ笑むと、彼も噴水の水を手ですくって飲んだ。

「本当だ。すごく疲れていたけど、元気になってきたよ! リルは魔法が使えるの?」

「魔法とは少し違って、精霊に力を貸してもらってるの。ここでも通用するようで良かった」

 私は柔らかくほほ笑みながら、ゴソゴソとポケットを探った。


「あ、あったあった。良かった。はい、チョコあげる」

 私は、こんな時でもポケットに忍ばせていたチョコレートをロロに差し出した。

「え? 何これ?」

 ロロが不思議そうにチョコの包みを見ながら手に取った。

「甘いお菓子だよ。お隣りの国の王子様が、遊びに行くたびにくれてて……」

 

 私は幼い頃の記憶を思い出していた。


 そういえば、ある時を境にその王子様はパッタリと遊んでくれなくなったな……

 たまに会うと何故だか怯えてる感じだし。

 こうしてチョコを輸入する関係は続けているんだけど……


 ちょっと寂しくなる記憶を思い出してしまい、それ以上考えるのはやめにしといた。

 気を取り直してロロに続きを伝える。

「その時から大好きなお菓子だから、こうやっていつもポケットに入れて持ち歩いているの。食べてみて」

「……リルの大好きなお菓子なんでしょ? ボクが食べていいの??」

 ロロがその大きな瞳で不安そうに私を見つめる。

「うん。いいよ。私は今、お腹すいてないし」

 私はニッコリ笑って答えた。


 ロロは昨日から何も食べていない。

 いくら水に回復魔法をかけたからって、何か食べ物をお腹に入れた方がいいと思う。


 しかもこんな子供が飢えているなんて。

 不憫すぎるっ。


 ロロがパァァと表情を明るくさせた。

「ありがとう!」

 やっぱりお腹がすいて辛かったのか、ニコニコ笑いながらチョコを食べた。


 そしてハムハムと食べ終わると、満面の笑みを私に向ける。

「おいしい〜」

 フニャっと笑うロロは、目が見事なハの字になり愛らしかった。


「…………」

 私は思わずロロのほっぺを両手で挟み、ムギュムギュした。

「え? え? 何??」

 私にムギュムギュされたまま、困惑気味のロロが聞く。

「……目が落ちそうだったから、思わず……」

「……??」

 私は変な言い訳をした。


 この白いフワフワ王子は、本当に可愛い。

 癒される……


 私は追加でもうひとムギュすると、満足して手を離した。




**===========**


 次に私たちは敵の視察ということで、聖獣がいる場所を探した。


「……た、多分、こっちなんだけど……」

 極度に怖がっているロロが、私の横に並んで神殿内を案内してくれる。

 ブルブル震えすぎて、防具や剣がぶつかっているカチャカチャ音が激しい。

 見ているのも可哀想なほどだ。


「ロロ、大丈夫だから。聖獣がどんなのか観察するだけで、いきなり戦うわけじゃないよ」

「う、うん……」

 顔面蒼白のロロが、何とか答えて何度も頷く。


 白い。

 全体的に白くなってるよ。

 ロロ……


 私はそっとロロと手を繋いだ。

 やりたくない試練に立ち向かおうとしているロロを、励ましたかった。

「ロロ……あなたたち一族には大事にしている考え方があるんだと思うけど……私ならこんな〝試練〟受けないかな」

「…………?」

 ロロが顔を上げて私を見る。


「だって、ロロは〝試練〟をクリアして力を授かって……どうなりたいの? お兄様たちを蹴落として、王様になりたいの? それともその力を見せつけたいの?? 私はそんなことを望まないから、必要ないかなって」

「…………ボクは…………」

 ロロが必死に何かを言おうとして、口をつぐんだ。


「うん。ロロはいい子だから、きっとお父様とお母様のためなんだよね。2人の期待に答えたい。その気持ちだけでとっても立派なことなんだよ」

 私は握っている手にギュッと力を込めた。


「困難に立ち向かおうとしているロロを、私は尊敬するよ。だから自身を持って」

「…………」

「ね?」

 私が優しく説くと、ロロはちょっと考え込みながらも私を見つめ返してくれた。


「ありがとうリル」

 そう彼が返事をすると、恐怖からくる震えが(おさま)っていた。




 ーーーーーー


 神殿の深層部。

 そこには大きな大きな広間があった。


 真ん中には(さかずき)のような台座があり、中には何もないのに赤々と大きな炎が燃え盛っている。

 不思議な力で燃え続ける聖なる炎だ。


 それを上から眺めるためか、2階部分は真ん中が吹き抜けになっていた。

 2階のフロアの端に立つと、下から舞い上がる炎が間近で見ることが出来た。


 1階にはその聖なる炎を守るように、そばで聖獣が鎮座していた。

 一つ一つの羽毛が炎をまとう、赤くて大きな鳥だ。

 赤く光輝くようなその佇まいは、異様なほど美しく、威圧感もすごかった。


「あれは……」

 ロロが目をこぼれんばかりに見張りながら呟いた。


「フェニックスだ……」





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