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ツバメと五月
五月上旬。
気持ちの良い清々しい天気の日、ツバメがこの近所にもやって来た。素早い動きで飛び回っている。近くのクリニックの駐車場の屋根にツバメの巣ができていた。私がよく見ようと巣に近づくと、巣の主がけたたましく鳴き始めた。
「ここはわたしの(俺の)巣だぞ
! 近づくな!」
そんな声が聞こえそうなくらい、大きな声で鳴きながら飛び回った。新しい命が生まれたのかもしれない。
「はい、ごめんね」
私は巣から離れて散歩を再開する。暑くもなく寒くもない心地よい日和だ。川の水面が日光に反射してきらきら輝いている。雲一つのない大空にさっきのツバメが舞っていた。
***
果たしてそれは鳥であろうか?
私は虚空を見つめていた。
そして理解した。
鳥だと思っていたのは、すべて蠅が群れになって飛んでいる姿であったのだ。