生の苦しみ
私はうずくまったまま、がくがくする足を抱えていた。その時誰かの心の声が聞こえ始めた。柔らかな声質でありながら、それには確かに、ぶれない強い覚悟が秘められていたのだ。
***
生きるのがどんなに辛くとも、僕は今日まで生きてきました。馬鹿にされ、憎まれ、妬まれ、誤解された日々。
ただ喜んでもらいたくて。
なぜ……。
笑ってもらいたくて。
誰に……。
よかれと思って駆けずり回った日々。
冷たい視線と剣のように刺す言葉の仕打ちにからだが穴だらけになった。
なんの為に僕は生きているのでしょう。
ただ受け入れてもらいたくて。
誰に……。
人に喜んでもらいたくて、他人からの認め印がほしくて、僕は自分自身を傷つけてきたのでしょう。全く無意味で無駄な人生の歩み方をしてきたのでしょうか。
そんな僕とは今日で卒業です。これからは自分のために生きるのです。と言うものの、これまでそうしてこなかったのですから、どうしたらいいのか分かりません。
闇の中でもがいてもがいて、途方に暮れる。その繰り返しが始まるのです。
やはり、こうなるのですね。
とりあえず、今日まで生きてみました。そして、明日も生きていくのです。
生きる苦しみを肩こりの肩に担いで。
他人の目に縛られて。
いつまでですか……。
この苦しみからの解放は。
***
私はこの声の主を探してみたが、人の姿は見えない。まんまるだった月はいつの間にか大きく欠けて、糸屑みたいに細くなっていた。
そもそもどうして、私はここに来たのだろう。私はどこから来たのだろう。
そんなことを考えていると、さっきから誰かがこっちを見ている気がした。視線の先に目を凝らす。
かさかさと葉が鳴っていただけか……。
いや、違う。
それは、歌うような軽い囁き声。