麻薬密売事件1
よろしければ読んで下さい。
ある日、警視庁の中でコーデリアは溜息を吐いていた。今、秘密警察のメンバーは国際的な麻薬密売組織を追っているのだが、捕まえる事が出来ないのだ。麻薬の取り引きがあるという情報を掴んで現場に乗り込んでも、そこはもうもぬけの殻という事が、何度もあった。
小説の中に今回のような事件は無く、捜査のヒントになるようなものが全く無い。
「なかなか尻尾を掴めませんね」
エリオットがコーデリアに話しかけた。
「そうだな。組織が販売した麻薬のせいで中毒者も出ているし、早く何とかしたいな」
「もうすぐフォール警部が異動になるし、早く捕まえたいですね」
「は?」
初耳だった。
「あれ?聞いてませんか。フォール警部、地方の警察署の幹部になるそうですよ。まあ、栄転と言えますね」
秘密警察の所属ではなく、地方警察の所属になるという事か。しかし、何故ケヴィンはコーデリアに何も教えてくれなかったのか。秘密警察に所属になったばかりのエリオットが知っていたのに。
その日の昼、コーデリアが大衆食堂のような場所で食事を取っていると、ケヴィンが入ってきた。
「よお、隣いいか?」
「はい、どうぞ」
ケヴィンはコーデリアの隣に座ると、仕事の話を始めた。
「例の組織、まだ新しい情報は掴めないのか?」
「はい。エリオットと一緒に情報屋等を当たっていますが、まだ何もわかりません。・・・フォール警部、最近お忙しそうですね」
「ああ、色々あってな」
「エリオットから聞いたのですが・・・フォール警部、地方警察に異動になるというのは本当ですか?」
「・・・ああ、本当だ」
本当だったのだ。異動になったら、ケヴィンとは、あまり会えなくなる。コーデリアは、寂しい気持ちを抱えたまま、昼食を口に運んでいた。
昼食から戻ると、エリオットが犯罪者らしき男と何やら言い合っていた。しかし、その男は異国の者なのか、帝国の公用語とは違う言語を使っていた。エリオットはその言語があまり理解できないようで、苦戦している。
コーデリアが間に入って、男から情報を聞き出す。コーデリアは前世で英文学の研究をしていたのもあり、外国語の勉強は苦にならない。秘密警察の所属になる前から、周辺の国の言語を勉強していた。
「助かりました、オルコット警部補」
男の事情聴取が終わった後、エリオットが礼を言った。
「礼には及ばない。しかし、異国の者に話を聞く機会は今後もあるかもしれない。辞典のようなものを用意した方が良いかもしれないな」
「そうですね・・・。俺はどうも外国語の勉強が苦手で・・・」
「外国語の勉強は楽しいんだがな。知らない世界を旅しているようで」
その瞬間、エリオットが大きく目を見開いた。そして、恐る恐るコーデリアに聞いた。
「あの、もしかして・・・桜庭先輩・・・?」
今度は、コーデリアが目を見開く番だった。
「どうしてその名を・・・」
「やっぱり・・・。俺、市原勇人です。大学で同じサークルだった・・・」
「市原君!?」
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