スパイ事件2
よろしければ、読んで下さい。
バルコニーには、タバコを吸う人が数人佇んでいた。コーデリアが見渡すと、ジュードの左隣にモーリスが立っていた。しかし、二人の間には少し距離があるので、仲が良いと言うわけでもなさそうだった。
モーリスがその場を去ろうとした時、ジュードがモーリスに声を掛けた。
「もし、タバコを落としていらっしゃいますよ」
「ああ、ありがとうございます」
見ると、先程までモーリスがいた辺りに金属製のタバコ入れが落ちている。タバコ入れからは、紙巻きタバコが数本はみ出している。
モーリスがタバコ入れを拾おうとした時、素早くコーデリアがタバコ入れを拾う。
「あら、申し訳ございません。私のタバコ入れかと思いまして・・・。あら、このタバコ、変な紙が巻き付けてあるわ」
わざとらしく言って、巻き付けてある紙を解いていく。その紙には、細かい文字が沢山書かれていた。
「おい、どうした」
ケヴィンがこちらに寄ってくる。そして、コーデリアが持っている紙を見て、眉根を寄せた。
モーリスとジュードは、コーデリア達とは別の秘密警察の人間によって連行された。パーティーはまだ続いており、コーデリアとケヴィンは二人で庭に佇んでいた。
「しかし、よくわかったな。あのタバコに情報を暗号化した紙が巻き付けてあるなんて」
「モーリス・ブレイディがいた辺りには他の吸い殻が落ちていまして、あのタバコ入れに入っていたタバコとは違う銘柄でした。だから、あのタバコ入れはモーリスの物ではないのではと思ったんです」
あのタバコ入れは、ジュードからモーリスへ情報を渡す為の小道具だったのだ。
「・・・お前、バルコニーに行く前からモーリスに目を付けていただろう」
「そんな事はありません。どうしてそう思われるのですか?」
「バルコニーに行く用事といって思いつくのは、タバコを吸うくらいだ。バルコニーに知り合いがいるわけでもあるまいし。だけど俺は、お前がタバコを吸っているところを見た事が無い」
やはり不自然に思われたか。小説の中のコーデリアは喫煙者だが、美智留が転生したコーデリアはタバコを吸わない。
タバコを吸わないコーデリアがたまたまバルコニーに行って、たまたま取り引きの現場を押さえたのだから、出来過ぎだと思われても仕方ないだろう。
「・・・私、たまにタバコを吸うんですよ」
「本当かよ」
「はい」
「・・・まあ、そういう事にしておこう。そろそろ帰るか」
ケヴィンは、コーデリアの前を歩き出した。
「あ、そうそう、言い忘れてたけど」
コーデリアの方を振り返ると、彼は微笑んで言った。
「そのドレス、よく似合ってる」
コーデリアは、しばらくその場を動けなかった。
まだパーティーの余韻が残っていたある日の夜、警視庁に殺人事件発生の知らせが入った。事件が起こったのは、ある一軒家。画家の夫とパン屋で働く妻が二人で住んでいたらしい。
コーデリアとケヴィンが現場に到着すると、後輩のエリオットが状況を説明する。
「被害者は、パメラ・セルウィン。夫がご遺体を発見したようです」
その名を聞いて、コーデリアは固まった。
パメラ・セルウィン。それは、小説の中でケヴィンが起こす連続殺人事件の最初の被害者の名だった。
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