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スパイ事件1

よろしければ、読んで下さい。

 「パーティーですか?」

警視庁の中で、コーデリアはケヴィンに聞き返した。

「ああ、貴族や商人が参加するパーティーに潜入する」


 ケヴィンの話によると、帝国の軍事機密を共和国に流しているスパイがパーティーに参加し、取り引きをするという情報があるらしい。ケヴィンは国籍こそ帝国のようだが、共和国の人間の血が流れているので、やり辛いだろうなと思う。

 「どうやって潜入するんですか?」

「商人を装う。・・・それと、少し言い辛いんだが」

「何でしょう?」

「俺達は、夫婦を装って潜入する事になる」

無表情を貫いたが、コーデリアにとっては、ご褒美である。


 数日後、コーデリアとケヴィンはある貴族の屋敷に足を踏み入れていた。大規模な舞踏会だったらどうしようと、ダンスが苦手なコーデリアは戦々恐々としていたが、ダンスをしなくても構わない比較的カジュアルなパーティーのようで安心した。

コーデリアはブロンドの髪をアップにして纏めていて、青いドレスに身を包んでいる。一方のケヴィンは、黒いタキシードを見事に着こなしていた。いつもと違い前髪を上げているが、それも格好いい。

ケヴィンに見とれながら、コーデリアは「神様、姉さん、ありがとう」と心の中で呟いた。

コーデリアには、現在二十八歳の姉がいる。シャロンという名で、ふわふわの金髪がトレードマークだ。シャロンは既婚者だが、一人暮らしのコーデリアの元をよく訪れる。

コーデリアが自宅でクローゼットの中のドレスを着ていると、「そんなドレス流行らないわよ」と言って、街に連れ出した。そして、コーデリアは今回の青いドレスを購入する事になるのである。

 ケヴィンの隣に並んでも恥ずかしくないドレスを選んでくれた姉に、コーデリアは感謝した。ちなみにシャロンは、コーデリアが警官になった事は知っているが、秘密警察に属している事は知らない。

 なので、パーティーに参加する経緯をコーデリアは誤魔化している。


二人は会場に入り、早速挨拶をして回る。

主催者に挨拶した後コーデリアが辺りを見回すと、武器商人のジュード・シーウェルが目に入った。年齢は五十代で、人当たりが良く見えるが、秘密警察は彼がスパイに軍事機密を教えていると疑っている。


「失礼。お話してよろしいでしょうか」

コーデリア達二人に話しかける者がいた。振り返ると、二十代くらいの眼鏡を掛けた男性がこちらに笑いかけていた。

「私、製薬会社を営んでおりますモーリス・ブレイディと申します。お二人とお話しするのは初めてですよね?」

「お初にお目にかかります。私は、貿易業を営んでおりますケヴィン・ガードナーと申します。こちらは、妻のコーデリアです」

ケヴィンが自己紹介する。名字だけ偽のものを名乗った。

「お美しい奥様で羨ましい。今後またお話しする機会がございましたら、よろしくお願い

致します」

そう言って、モーリスは去って行った。


 今回のパーティーは、立食形式だ。食事を取りながら、コーデリアは悩んでいた。今回のスパイの件も小説に載っていたので、スパイが誰かは見当がついている。先程話をしたモーリスだ。

 しかし、それをどう証明しようか。小説とこの世界では、ある状況が違っている。多少不自然ではあるが、小説と同じ流れで証明するしかないか。

 コーデリアは決めると、ケヴィンに一言だけ言った。

「ちょっと、バルコニーに行ってきます」


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