強盗殺人事件2
よろしければ、読んで下さい。
しばらくして、コーデリアとケヴィンは現場を後にした。
「……フォール警部。絶対犯人を捕まえましょう」
「……ああ」
幸いと言っていいのか、犯行時大きな棚の中に隠れていたアビーは、犯人の会話を聞いていた。犯人は複数人いたらしい。
アビーは、犯人の言葉に訛りがあるのを正確に聞き取っており、コーデリア達の前で再現してみせた。耳と記憶力が良いのだろう。
「あの訛りだと、北の方のコミュニティの人間が犯人でしょうか」
「決めつけるのはまだ早いが、コミュニティを調べてみる価値はあるかもしれないな」
小説の中でも今回と同じ事件があったので、コーデリアは事件の真相がわかっているようなものなのだが、黙っていた。転生したなんて言っても信じてもらえないだろうし、本当に小説と同じ真相だとは限らない。
◆ ◆ ◆
数日後、地道な捜査の結果犯人達の目星がつき、コーデリア達は夜、そのアジトに乗り込んだ。石造りのその建物の中で、犯人達が次々と制圧されていく。
犯人の一人が、ナイフを持ってコーデリアに向かってくる。コーデリアは、犯人の手からナイフを叩き落とすと、犯人を地面に組み伏せた。そして、仰向けにすると、拳銃を犯人の頭に突き付けた。
「ま、待ってくれ。殺さないでくれ」
「……あの子の両親を殺したお前がそれを言うのか」
「おい、そこまでにしておけ」
ケヴィンがコーデリアに釘を刺したのもあり、犯人を殺す事はしなかったが、コーデリアはそれでも数秒、引き金から手を離さなかった。
犯人のアジトから帰る途中、コーデリアは例によって路地裏に逃げ込み、地面に座り込んだ。今回は以前程動悸が酷くないが、少し心を落ち着かせてから警視庁に戻りたい。
「やっぱりここにいたのか」
いつの間にか、ケヴィンがこちらを覗き込んでいた。ケヴィンはコーデリアの隣に座ると、静かに微笑んで聞いた。
「お嬢ちゃん、なんでこんな無理してまでこの仕事してるんだ?」
「……最初は、何というか、不純な動機で頑張っていたのですが、最近は……この仕事に誇りを持っています。確かに無理はしているかもしれませんが、この仕事を続けたいんです。……やはり、こんな体たらくでは駄目でしょうか」
「いや、そんな事は無い。お嬢ちゃんは……オルコット警部補は、立派な警官だよ」
「……ありがとうございます」
二人は、少しの間だけ、月を眺めていた。
翌日、親戚に引き取られたアビーの元に、犯人達が逮捕された旨を報告しに行った。
「……捕まえてくれて、ありがとう……」
アビーは、コーデリアに礼を言った。
アビーの心の傷が癒えるのはまだまだ先かもしれないが、逮捕の報告をする事が出来て良かった。コーデリアは、微笑んでアビーの家を後にした。
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