6th offense: Never move ACT.6
神ノ拘束具から、火花が散った。
それと同時に異変が起こる。
「弾が出ない……!?」
何度も引き金を引くが、出てこない。 勿論、弾を入れ忘れる筈が無い。
その瞬間手に握っていた物が、白い焔に包まれた。
「!?」
ローデゥイムは、反射で銃から手を離す。
何だ、アレは? 熱さを全く感じなかった。
しかし、銃は白い焔で身を纏っている。
銃に眼が行っていた時、死角から腕を捕まれた。
「残念でした! 神ノ拘束具は、神ノ悪戯に燃やされてしまいましたとさ!」
「うわっ…うあぁぁ!!!??」
咄嗟にローディウムは青年の手を振り払い、青年に背を向け入り口へ疾走した。
それと同時に、青年に突き刺さった鎖も白き焔に飲み込まれて、銃と共に脆くも崩れ去る。
ローディウムは部屋のドアを壊れるかと思うほどに大きく開ける。
「ローディウム=グルヴァン殿、それは誠かね?」
ローディウムは前に立ちはだかる3人の人物を見て、眼が見開く。
「何で………!?」
そこに居たのは、冷徹な口調で話すシアカ大臣と、笑みを浮かべるオルディオ大臣。 そして最も敵視していたイズベンザ大臣。
「残念だったな、まがい物はフリーダ=グルヴァンじゃない。 お前だ、ローディウム=グルヴァン」
イズベンザの言葉に『殿』は無かった。
そしてイズベンザはローディウムの胸倉を掴み囁いて、部屋の中に投げ捨てる。
「罪状を告げよう、ローディウム=グルヴァン科学大臣殿」
青年が再びローディウムの胸倉を掴む。
ローディウムは、脅えきった表情で「やめろ」と何度も命乞いをする。
「幼児虐待に加え殺人罪…とっておきの褒美をやろう」
青年の笑みは、いつもの笑みではなくなった。
まるで、悪戯をしようとする時の子供の些細な悪が混じった笑みだった。
「神の愛が欲しかったんだろう? なら、子の私が貴方のハートに火を付けてやろうじゃないか!!」
その瞬間、彼の衣服に火が灯った。
「あぁぁぁぁあああぁ!???!?!?!??!!!?」
部屋には、ローディウムの苦しむ声だけが響き渡った。
◆
「オルディオ殿、まさか全員連れてくるとは思いませんでしたよ……」
「いや、ただ単純に誰か分からなかったもので」
「はぁ、分かってくれると思ったんですがね?」
塔の一回にある大広間で、オルディオと青年が話をしていた。
「何故、貴方は彼の事にお気づきになられたのですか?」
「神の子供ですから」
青年は笑顔でそう答えた。
「まぁ、彼も神の焔に焼かれて、もう一度悔いを改めて貰いたいものですね」
彼は全身を焼かれたが火傷は残っておらず、痛みだけが彼を襲ったらしい。
「アイツ、悔い所か全部改めたんじゃねぇの? 放心状態だったぜ」
イズベンザ大臣が、彼の焼かれた後を見てそう告げた。
「まぁ、それでは。 ココらで御悪戯は終わりと言う事で」
「そうですか、またいらして下さい。 御持て成しはいたしますよ」
オルディオ大臣がそう告げる。
「まぁ、とりあえず皆さんには…神以外にも眼を向けて貰いたいモノです」
そして彼は入り口の方へ歩き寄る。
少女も彼の隣の方へ歩き寄った。
「この少女はお預かりします」
そこでシアカ大臣が、思い出したようにこう告げた。
「そうだ、聞き忘れてましたな…貴方のお名前は?」
青年は笑顔でこう言った。
「グリシティケン Jr.……とでも呼んで下さい」
彼がとっておきのジョークを告げたと同時に、彼の触った入り口から白き火が灯った。
大臣達はそれに見惚れ、火は彼らの後ろの方へと広がっていく。
「ははっ、やられたな……いい悪戯だったよ」
シアカがそう告げる。
後ろの壁が白き焔に包まれて崩れ去っていく。
その先には、この国の誰もが眼にした事のある一つの像。
『お借りしました』との紙に書かれたメッセージが、像に貼り付けられている。
彼らが必死に前を向いて愛を求められていた主人は―――――――――
――――――彼らの後姿を静かに見守っていた。
「さて、神のしるべだ!! 路地子の保護の要請を!!!」
シアカ大臣の声が、大広間に広がった。
◆
「ねぇ? あのにせものの像は、どうやってよ〜いしたの?」
「いいだろう? アレ、神様がくれたんだ」
Never move編 完結です。
次回は未だに序盤すら書き始めていません……
あと、どんどん書き直してスミマセン!!
一回見たのに、もう一回見たら全然違う!!って事もありえます……
矛盾や脱字、誤字などあったらお知らせ下さい!!
あと、感想ドシドシお待ちしてます!!
来たら泣きます!! 本当に!!
あと分かり辛いかもしれませんが、いきなり出てきた『フリーダ=グルヴァン』と言うのは、
ローディウムの妻の名前です。
一応、それで(多分)辻褄があうと思います。