5th offense: Never move ACT.5
先ずは腕と足を捕まえる
そして、足の指から手の指先まで
髪の毛先すらも拘束して
やがては瞬きすらも拘束する
そして呼吸さえも拘束して
最後には心の臓すらも捕まえた
―神ノ拘束具の全て から抜粋―
◆
轟音が異常な形状の鎖が銃口の下から飛び出る。
鎖は青年の腕を貫き、壁に突き刺さる。
「どうだ? 驚いたか? だがな、まだコレは前菜に過ぎないよ」
「あらら……身動きできないじゃ…ないですか。 コレじゃ本番にあり付けないではないですよ」
「大丈夫ですよ、私が貴方によそいますから」
青年の血が鎖に滴り、地面に水滴が落ちる。
「旅人さん!?」
少女が青年に突き刺さる鎖を掴む。
ローディウムは青年の前に近づき、少女を蹴り飛ばす。
「はは、妻の次には娘に手を出しますか。 最低な親ですね、反吐が出ます」
「何の事だ?」
ローディウムの眼が鋭くなるが、青年は笑い出しそうな表情で口を開ける。
「いやぁ、一つ噂話を聞いたんですよ。 ある一人のお偉いさんが必死に上り詰めた御席に、彼はゆうゆうと座り込んでました」
彼が物語を語る口調で次々に話す。
妻に恵まれ、子に恵まれたそのお偉いさんは幸せな生活を営もうと考えていた矢先、とんでもない事が起こりました。 そう、娘が横線入りだったのです! お偉いさんはそれを知った途端、こう思いました。 ばれたら人生の終わり……そうだ、娘を貧民区に捨てよう! そう妻に話すと、妻は大激怒! 彼と大喧嘩になった挙句、お偉いさんは机にあった神に授かったある物で妻を殺しました。 そう、神ノ拘束具です。
お偉いさんも、「彼女がまがい物の血だったんだ」と思い込み、その場は一安心しました。
しかし、そこにある問題ができました。
只でさえ、国で問題視されている神ノ拘束具なのに妻に私情で使ってしまった。
神ノ拘束具は銃の為、弾と言う物があります。 その弾数が受刑者と合わなくなってしまいましたのです!
「――――――という話です。 まぁ、長々となりましたが…この話、貴方も知っているでしょう?」
彼の眼光は話が進むに連れ、鋭くなっていく。
「貴方はどうしても『誰も知らない不動刑の者を探したかった』……理由は、弾数を合わせる為」
「そうだな、その者を殺せば……弾数はあってしまうものな」
「まぁ、それが貴方ですよ。 この横線入りの少女が……貴方の娘、ですね?」
青年は痛みを堪え、笑顔でそうローディウムに告げる。
「そうだ、そのまがい物の餓鬼は私の子供だ……が、それがどうした? 元を断てば問題無しだろう?」
「さすが、最低な人間だ」
ローディウムはゆっくり、銃口を青年の額に当てる。
「褒めてやろう。 よく知りすぎた、と。 だがな『無知は罪』だが、『全を知る事も罪』だって事を知らなかったようだな」
「私をソレで殺すと、また弾が合いませんが?」
「安心しろ、反信者は『2人だった』。 だから弾を二つ使ったと。 そこの出来損ないを殺るには普通の弾で充分だ」
「それは、大変だ。 神の子として……その罪は見逃せません、ね」
必死に青年は手を伸ばし、銃身を掴む。
ローディウムは「無駄な抵抗だ」と呟き、引き金を引き抜いた。
「悪戯、しにきたよ」
彼は不敵な笑みを浮かべながらそう呟いた瞬間、銃から白き火花が散った。