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転生騎士の輪廻賛歌  作者: 七時雨
第1章「デジック・アンセム」
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第8話「スター・コクーンpart2」


「あそこまでしてこの子を狙うのには、何か理由があるんだろ?」

『パンドラだ』

「あぁ……パンドラはどうして狙われる?」



『彼女はな……この世界の女神なんだ』



 女神ぃ? とリュウトは素っ頓狂な声を出した。そして思わず取り落としそうになり、慌ててその小さな体を抱きなおす。


『そしてな、お前を呼んだのも彼女なんだ』

「なんだってそんな……」

『さぁな。オレはただの守り人。女神の意思など、分かるワケがない。だが、きっと理由があってお前を選んだのだろう』

「うーん、何だか複雑な気分」

『そうだろうが……そろそろ地表だ』


 目の前の扉が開き、気圧差で吹き込んできた強い風に腕で目元を覆う。風が収まり、掲げていた腕を下ろして正面を見ると、その飛び込んできた光景にリュウトは唖然とした。


 灰色の空に浮かぶ巨大な構造物、その周囲を飛び回る鳥のような物体。強い風が吹き荒れる地上で、ただ立ち尽くすしかなかった。


 その時、首元に鋭い刃が当てられ、それに驚いたリュウトは思わず尻もちをついた。

 真横に立っているのは、真っ赤なコートを着た女性。目深に被ったフードと、顔を覆うマスクのせいで表情は分からない。


 左眼部分に眼帯の意匠を施したマスクが、鋭い視線をリュウトに投げかける。


 とっさにパンドラをその女性から遠ざけるようにして、目の前の女性を睨みつけた。さっきのように殺意は感じ取れなかったが、あのロボットの仲間かもしれない。今はクラーク以外、信用できなかった。


「君、名前は?」

「そっちこそ、何者なんです」


 そう言った直後、その女性の背後から、こちらに向かって何かが飛んでくるのが見えた。それは煙の尾を引き、まるでミサイルのようだった。


「やっぱりこの子が狙いか!」


 飛来するミサイルに背を向けるようにしてパンドラの盾になる。ローブの防御力があれば、防げるはずだ。

 だが起こるはずだった爆発と衝撃は来ず、代わりに遠くで爆発音が響き、少し強めの風が吹いただけだった。


 正面に視線を戻すと、リュウトに剣先を向けていた女性が、背後に向かって手を掲げているのが見えた。そのローブの紋様が、ゆらゆらと輝いている。


「……一緒に来て」

「は?」


 リュウトの返答を待たずに、女性はその腕を掴んで無理やり立たせると、見た目からは想像もできないような力でリュウトを引っ張りあげた。そんな二人の頭上を、二機の戦闘機が飛んでいく。


『彼女もローブを!』

「ちょっと、離してくださいよ!」


 驚いているクラークを尻目に、リュウトは踏みとどまって女性の拘束から逃れようとした。そして何とかその手を振りほどいて、距離を取るように一歩下がる。


 そんな二人を分け隔てるかのように強い風が吹きすさび、互いのローブの裾を激しくはためかせた。


「さっきミサイルから助けてあげたのに、まだ信用できないの?」

「名前も顔も分からない人を、信じろって言うんですか!」

「……手厳しいね」

「人を信じるのって、難しいですよ」


 すると女性は被っていたフードに手をやって、それを脱いだ。と同時にマスクも収納され、彼女の顔が露になる。


 クラークのローブと同じだ……


 その機構に自分のローブとの類似性を感じていると、フードの中に無理やり押し込まれていた、その長く赤い髪がさらりと垂れた。


「私の名前はシエラ・マキャベリ。魔導士よ!」

「俺はリュウトです!」


 それから、名乗るべき名字がないことを思い出して、


「ただの、リュウトです」


 シエラはニヤリと笑うと、こちらに手を差し伸べた。


「なら、ただのリュウト君。私を信じて、ついて来てくれるかな?」

「あなたの目的は何です?」

「私の目的は、困ってる人を助けること」


 ね、とシエラはこちらにウィンクしてみせたが、リュウトはその言葉の真意を見いだせず、ただ困惑した。



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