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転生騎士の輪廻賛歌  作者: 七時雨
第1章「デジック・アンセム」
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第3話「ベイルアウトpart1」

ポケットからペンダントを取り出し、ふたを開ける。そこには、シエラたち家族の写真が収められていた。シエラと、桃色の髪を持つ、翡翠のような瞳の少女シキ、そしてその両側で笑みを浮かべている両親。

 シキが抱えている白い鳥は、ティアという。賢い鳥で、よくシキと追いかけっこをしていたものだ。


「シキ……お前は今どこにいるんだ……?」


 愛おしそうに写真を親指の腹でなでる。両親が死んでから、彼女のために精一杯尽くしてきた。いつも彼女の傍にいた。


『シエラ様、現在スケジュールより0.8ポイント遅れています』


 パタンと蓋を閉め、リボルバーを仕舞うと、決意を持った表情で前を見据えた。感傷に浸っている場合ではないと自分に言い聞かせ、手に持ったペンダントを強く握りしめる。


「想定の範囲内だ。さぁ、こっから出るとしよう」


 フードを被り、顔を覆うマスクを展開させると、正面のドアに相対した。


◇◆◇


 ちょうどその頃、ドアの向こう側では、銃を持ったロボット兵たち――赤く光る単眼を持ち、生体部品とそれを制御する思考エンジンをグレーの装甲が覆っている――が集結しつつあった。


 シエラがハッキングして開かなくなったドアに爆薬を仕掛け、爆発とともに突入しようとした、その瞬間。

 セットしたタイミングより早く扉が爆発し、その前で待機していた兵士たちは紙吹雪のように散った。


 バラバラに散った破片を踏みつけつつ黒煙から姿を現したシエラは、腰に佩いていた赤い剣、スカーレット・ムーンを引き抜くと、上に大きく伸びをした。


偽神(アルコーン)、ねぇ……さて、もうひと暴れしますか!」


 正面の廊下をふさぐように偽神(アルコーン)たちが集まり、銃口をこちらに向けた。退路はなく、後にも先にも引けぬ状況だが、シエラは大きく深呼吸をしただけだった。


 それと同時に引き金が一斉に引かれ、ブラスター弾の雨が襲う。だが、殺到した弾は体を貫くことはなく、赤いコートの上でむなしく火花を散らせるだけだった。

 弾を蹴散らしながら、シエラは走り出した。そして素早く右手のひらを兵士たちに向けると、その手を握った。


 全身に纏った『魔導衣(ローブ)』に刻まれた紋様が光り輝き、最前列にいた兵士たちは見えない力に押しつぶされるように圧壊した。

 鉄くずになった偽神(アルコーン)たちを飛び越え、剣を横に一閃。圧壊を免れた五体分の首が飛んだ。切断面から噴き出した黒いヌメヌメとした液体が、赤色灯の光を受けて妖しく輝く。


『脱出方法は? 通常脱出、ダストシュート、緊急手段、どれですか?』

「緊急手段!」

『了解、ナビゲートします』


 剣に付着した液体を振り払ってから鞘に納めながらも、シエラは先を急ぐように走った。

 ランデブーのタイミングは一度っきりだ。これを逃せば、逃げられなくなる。

 だが目標地点の手前にある十字路に差し掛かったとき、細身の白い剣がこちらの首めがけて突き出された。


「ッ⁉」


 それをスライディングで避けると、滑りながら剣を引き抜き、反転して剣の主に向いた。

 急に突き出された剣に驚いたのも確かだが、それ以上に相手の気配を全く感じなかったことに驚愕した。全身が粟立ち、背筋を冷たいものが走る。


 廊下から現れたのは、白い人型の『何か』だった。その体の表面は陶磁器のように滑らかで、表面を奔る金色のラインは、左胸から噴き出しているように見える。

そして顔を覆うのっぺりとしたマスクからは、左の黄色い瞳の眼だけが露出していた。


「不気味な奴……何者だ!」

「答える義理はありません」


 その声は空っぽのツボの中で反響するような女性のものだった。それがますます無機物のような印象を抱かせる。


 シエラは久々に感じた悪寒に身体を震わせた。



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