1. はじまり
神様はとても忙しく走り回ってた。
「神様っ!またサボっていましたね!今日という今日は許しませーーーんっ」
ドドドドドドという表現が1番近いであろう、幼い容姿の天使が逃げる神様を追いかける。
「いやじゃ!わしはまだ寝不足なんじゃ!今日から始まるイベントもあるんじゃ!またまだわしは遊ぶんじゃ!」
……忙しいという表現は間違っているかもしれない。
神様は、げえむとやらを片手に逃げ回っているご様子です。
「ゆるしません!今日は魂を入れる日です!そんな日に遊ぶ?考えられませんっこらーまてー!」
どこから出したのか不思議ではあるが、ロープを投げ付ける。
「ぐぅ…魂だけじゃぞ…そのあとは遊ぶんじゃ…」
神様の言葉に追いかけ回した天使がぴくぴくと怒りに震える。
「早く…魂をいれましょうねっ」
ロープで縛られた神様は、ずりずりと廊下を天使に引きずられていく。
「天使様〜」
引きずる途中、学生に呼び止められる。
「お忙しいところすみません…2、3点質問がありまして…」
構いませんよ。とにっこり微笑み、天使は学生の質問に答える。
「魂を入れる方法ですか。」
はぁ、とため息を零し、視線を神様に向ける。神様は神様で、わしはしらんもーんと言いたげに視線を逸らししらんぷりをする。
「はい…具体的な方法は教科書に載っておませんから…神様の側仕えでらっしゃる、天使様にお尋ねしようかと…」
ノートを片手に、持ち上げられて相談されたのだ。天使は断ることなど出来ず、人差し指を立てながら説明する。
「そうですねえ!魂の実がなる木があるのですが、その木から実をもぎとり、付近にある池に落とすのです。その池に生まれる子らを意識して落とすことで、腹に子が宿るのですよ。」
「なるほど…つまり、子を宿す時に魂を池に…?」
「ええ、そうです。」
「またひとつ賢くなりました!」
ぺこっとお辞儀をし、学生は去っていく。
「さあ、行きましょうか。」
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とても広い神様の家には、魂の実がなる木がある。
そこには、所謂人魂のような実がなり、それをもぎ取ることで“魂の実”から“魂”へと変わるのである。
それを付近の池にー「僕が説明済みです!」…すみませんでした。
魂の実は、ロの字に囲まれた家の中心にある。
囲まれていることから、安全と言える場所だが、念には念をということで、木を守る兵士がいる。
「さあ、神様。お仕事です。」
脚立を。と天使が兵士に声をかけると、直ぐに脚立が準備される。
「うむ、それでは実をとろうかの」
熟した実が、たまたま、横に並列していた。実には遺伝子情報が入っているため、間違えると大変だ。2つもぎ取ったことを知ると天使は焦ったように声を上げる。
「神様!だめです。実はひとつずつでなければ!どっちがどっちの実か分からなくなります!」
パタパタと羽を動かし、神様を止めようと何度も声をかける。
「横にある実をわざわざ1つずつ取るのは面倒なのじゃ!」
神は言うことを聞かない
「かみさま!」
「いやじゃ!」
「かみさま!!!」
「いやじゃ!!!」
神様は脚立を降りようとすると、突然強い風が吹く。
いくら神といえど、風には勝てないし、そもそも老人だ。
風に煽られれば落ちる。
天使は飛ぶことは出来るが、なにより幼子、老人を支えることで手一杯だ。
「「「かみさまっ」」」
兵士が走る、天使が飛ぶ。
目をぎゅっと瞑る。
ドサッという音で、皆が目を開けると、天使が神様を支えており、音の割には平気そうな様子であった。
「よ、よかったです…それで、実は?」
「うむ、実のことは守らねばと思い、ほらここに……」
神様が手を上に出すが、実はない。
「「「「………え」」」」
ぎぎぎぎぎ…まるで古びたロボットのように、油の刺していないロボットのように。
池の方へ視線を向ける。
ぽぼちゃん
魂が2個、落ちていった。
「神様急いで!」
「う、うむ!」
池に落ちたことで二人分の魂の行き先をイメージする。
二人分の魂の行先は同じでないため、片方片方、イメージするが、どちらの実がどっちにいくか、わからない。しかし、イメージしないと魂は死滅するため、イメージするしかないのだ。
「一応…イメージはしたぞ。」
「様子を、みましょう…」
2人は顔を見合わせて、急いで現世を見る準備を始める。
「「あぁ…だめだ。」」
魂と肉体はいれかわっていた。
天使は自分を責める。
何故あの時、神様をとめれなかったのか。
ひとつずっと伝えたのに。
何故風が吹いたところを支えきれなかったのか。
何故魂を優先しなかったのか。
あれ、これ僕悪くなくない?
「かーみーさーまー…?」
こうして、髪の叫び声が下界まで届いたとか、届かなかったとか。
完全処女作になります。
お見苦しいところもありますが、よろしくお願いします。