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エルフの旦那と双子の子供達  作者: さつき けい


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 土産物店の厨房の中、小さなテーブルに座る3人と側に立つ護衛が一人。

店主でエルフのギードは、妻のタミリアの妹であるリデリアと、その恋人らしい若者と話をしている。

「結婚しよう、と言ったのはタミちゃんだよ」

そして自分は何も言わなかった。自分が彼女の役に立つとは思えなかったから。

「その頃、店の前の教会で結婚すると、ある能力が付与されたんだ」

狩りの役に立つ能力。それがタミリアの願いだった。

タミリアの役に立つなら、何でもよかった。断れるはずはなかったんだ。

「愛とか恋とか、全く関係なかったんだよね」

ギードは笑った。

「でも、でも今は愛し合っているでしょう?」

「さあねー?」

ギードは不思議そうにリデリアを見る。彼女の瞳に涙が浮かんでいる。

「相手の気持ちなんて、そうそう分からないよ。自分の気持ちもね」

そしてそれはあっという間に変わっていく。

「そ、そんなっ、じゃあ、何を信じていけばいいの?」

「リデリア」

泣き出す彼女を、隣の青年が悲しげに見ている。




 ギードはその彼に聞いてみたくなった。

「ドリアルさん、でしたね。貴方はどう思いますか?」

「ぼ、ぼくは」

ただリデリアをいい子だと思っている。こんなにかわいくて、性格も良くて、商売上手な女の子がお嫁さんになってくれたらうれしいと思っていた。

だけど貴族の若様がやってきて、彼女を口説き始めた。

「くやしかった。自分には無いものを持っている若様がうらやましくて」

金や地位や、そんなものに彼女がかれるとは思わなかったが、それでも心配だった。

そんな時、若様と一緒にいた従者と言い合いになった。

「リデリアはエルフには劣ると、そう言われて」

容姿をエルフと比べるのは間違っていると言えば、腕力もないくせにと返される。

しかしその時、若様が「リデリアはエルフと違って子供が産めるからな」と言ったのだ。

女性を子供を産むための道具のように。そんな言葉にリデリアは怒りを収められなかった。

「それで、エルフの子供はいる、そういう話になったわけだ」

「……はい」

ギードは青年が正直者だと感じた。でもそれはエグザスのように生きにくい性格だろうと思う。

彼の両親は彼女を解雇することで店を守ると同時に、彼女を息子から遠ざけようとしたのではないだろうか。

リデリアの実家まで知られているところを見ると、表向きは彼女のためにと言いながら、貴族と揉める嫁はいらないってことだろう。

実家は彼女をきちんと隠した。完全に消息を絶てるタミリアのいる所なら大丈夫と。

だから彼女が手紙を出して初めて、彼らが現れた。

(こっちはこれくらいでいいかな?。向こうの話も聞きたいな)

ギードは目を閉じ、ユイリの状態を探る。まだ子供部屋のようだ。

「カネルさん、二人の護衛をお願いします」

立ち上がったギードはリデリアを呼び寄せ、ドリアルには聞えないように囁いた。

「ドラゴン討伐の招待状を出したのは何処どこと何処でしたか?」

涙をぬぐいながら彼女は答える。

「ご迷惑をかけたドリアルの雑貨屋と、常連のご隠居様です」

ギードは黙って頷き、改めて彼女に後のことを頼んだ。




 領主館に着くと、黒騎士隊長が待っていた。

「どう収めるつもりだ?。上流貴族の子供のようだが」

部屋へ案内されながら、ギードは頭を掻く。

「当人達だけの問題、ではなさそうですが」

そう言いながら、ギードは彼らの事を収めるつもりも無い。 

「結局は当人達の問題でしょう」

扉を叩き、シャルネの声に答え、部屋に入る。

その部屋に三人の従者はいなかった。別室で待機させられているようだ。

「先ほどは失礼しました」

立ち上がり、ギードに対して礼をする。貴族の子供らしく、大人の対応だ。

「いえ、こちらこそ失礼な態度をとりました」

ギードも頭を下げる。

シャルネの指示を受け、彼の隣に座る。

入って来た扉の前に黒騎士隊長が立っている。シャルネの後ろには女性騎士ヨメイアが立っている。

そんな中でも平然として若い貴族の青年は使用人が入れてくれたお茶を飲んでいた。

「リデリアの姉の夫でギードと申します」

やっと自己紹介である。

「存じ上げております。『黄金の守護者』様ですよね」

彼は上流貴族家の次男坊で、祖父は変わり者と有名な御仁らしい。庶民の雑貨屋を贔屓ひいきにするなど、しょうがない人だとため息をついた。

「リデリアを見初めたのは御祖父様だったんでしょう?」

「ええ、そうです」

若い女性のはつらつとした姿に、祖父は心が癒されたと言って、益々足繁あしげく通うようになった。

そしてやがて孫とその女性が結ばれることを夢見た。そうすればずっと一緒にいられると。

「祖父には子供の頃からかわいがってもらっているので」

老い先短い祖父を安心させるために、リデリアに気がある振りをしていたそうだ。

 シャルネが会話に入れず、むすっとしている。

ギードは罰が悪そうに彼女を見て、これは早く終わらせないとまずいかなと感じる。

こほんっとひとつ咳をして、貴族の若者を見る。

彼もまっすぐにこちらを見ている。

「お聞きしたいことがあります」

「何なりと」

「ご婚約者がいらっしゃるそうですが、ご結婚は何時いつ頃でしょうか?」

「さあ?。親が決めた事なので、まだお会いしたこともありません」

これにはギードも驚いた。ふぇえ、貴族って大変だなあ。

「エルフにご関心がおありでしょうか?」

何故かこの質問に彼が動揺を見せた。ふむ、やっぱりエルフが揉め事の中心のようだ。

ギードは彼がエルフの出産の事を知っていたのを不思議に思った。そしてギードの二つ名を知っている事も。

貴族だから当たり前だと思われるかも知れないが、彼は自分の婚約者の事も知らなかった。興味がない事は知らないという事だ。

「わ、私は、エルフは美しい方が多いと、それくらいしか」

エルフ族との婚姻は貴族家では許されない。子孫を残せないからだ。

王家の第二王子は、それゆえ結婚出来ず、周りからは馬鹿扱いなのである。


 そこへいきなり扉が叩かれる。隊長が扉を開けようとする前に魔術で扉が開かれる。

「ギドちゃん、ここにいるんでしょう?」

タミリアである。

「いるよー」

椅子に座ったまま手を上げ、ここにいると知らせる。

両手に子供達を抱き、傍に来ると、ユイリを渡してくる。

「申し訳ありません。昨日までドラゴン討伐で忙しくて、こちらに預かっていただいていたもので」

引き取りに来たんですよーと、若様ににっこり笑って見せる。

「うぁーう」ユイリが小さな手を伸ばし、貴族の若者に触ろうとする。

「おや、珍しい。この子はあまり他人に興味を示さない子なんですが」

貴族の若様の目が小さなエルフに釘付けになっている。若干頬が赤くなっているようだ。

「あ、あの、触っても?」

何故か上目遣いでこちらを見る。ギードが頷くと、うれしそうに手を差し出す。

ユイリはギードと同じで自分に対する相手の感情に敏感なので、エルフに偏見のある人族には決して近寄ることはない。

この若様がエルフに好意を持っている証拠である。

「か、かわいぃ……」

おそらくだが、ユイリを見せただけで事がすべて片付いた気がする。

「でしょー?。この子達は天使です!」

何故かシャルネが答える。

それからその部屋の中は、いかに双子達がかわいいかの自慢大会になった。主にシャルネがしゃべっていたが。




 数日後、リデリアは王都の実家に帰った。

貴族の若様は祖父に自分はエルフ好きで、人族の女性には興味がないことを告白したそうだ。

もう貴族に怯えることは無い。実家からも帰って来るように連絡が来た。

雑貨屋の息子は、両親がリデリアにとった態度に疑問を感じるようになり、自分も家を出て修行したいと言い出だした。

「いらっしゃいませー」

そして、そのドリアルはこの土産物店にいる。

「お前もしつこいな」

お客はあの貴族の若者である。

「お前に関係ないだろう!。フーニャさん、受け取ってください」

花束を差し出す。王都から足繁く通って来る。かわいがってくれていた祖父からも呆れられ、家からも勘当同然らしい。

当然、あの従者達ももういない。

おかげで、この二人は仲良くなり、こうして改まった言葉を使わず言い合いをするようになっている。


 どうしてこうなった!。ギードは頭を抱える。

「リデリアがギドちゃんに感謝してたわよ」

事情をすべて聞いた彼女はしばらく恋愛はいらないと言ったそうだ。

タミリアにそう言われても、実際にはギードは特に何もしていない。

「ただ話を聞いただけだけどな」

人族もエルフも同じで、泣き、笑い、恋もする。でもまあ、リデリアにもいろいろと事情はあるのだろう。

「複雑だよね」

ギードが言うと、タミリアが笑う。

「ギドちゃんは邪魔くさくなるとすぐ森に引き篭っちゃうじゃないー」

子供達が寝静まり、二人っきりで過ごす時間は大切にしている。

修行中のタミリアのために、お酒は軽めのモノを用意した。

「愛とか恋とか、私もあんまり分かんないけど」

ギドちゃんがあの時、自分のいう事を何でも聞いてくれるのがうれしかった、とタミリアは言う。

力も金もいらなかった。ただ側にいてくれるだけで安心できた。

「タミちゃんにご飯作るのが楽しかったなー」

とギードが懐かしそうに言うと、タミリアはうふふと笑う。

「これからもよろしくね!」

「太らない程度にね?」

もーっ!、と膨れるタミリアがかわいいーなー。

殴られても蹴られても、ついからかってしまうギードであった。




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