『Thelema』
創作意欲の浮き沈みが激しいのは自覚してるんだけどまさかここまでとは……どうも家電戦士です。
ぶっちゃけ平日はやる気でない、学校帰りとかね……。
ソーシャルゲーム大好きなもんでそっちに没頭してしまうことがしばしばありまして〜14日ほどサボっておりました!
まぁ現状誰も読んでないし!急がなくてもいいか!的なノリなんですよね……知名度上げたい。しかし力不足……無念なり
すみません、では本編どうぞ〜!
今年の夏は往年より更に暑く、日差しが容赦なくアスファルトに照りつける。
夏場のアスファルトはおそよ六十度にもなると言われ、現代に起こる環境問題、ヒートアイランド現象、その片鱗を感じさせた。
それも日射を一時間も浴びれば忽ち脱水症状に陥るほどの。
そんな中、紫苑、天保、二名は先程までここまでの道のりを全力で疾駆してきた為かつて無いほどの汗をかきながら、かつて東京都千代田区 永田町と呼ばた街で最も有名な場──国会議事堂、その跡地にいた。
無論、蓮子も走って並走していたもののその顔には汗一つどころか疲れの色すら感じさせない。
そもそも国会議事堂とは国会が開催される場であり、つまりはこの日本の権威の象徴であり、国政の中枢を担う施設である。
しかし──現在の国会議事堂はその体を成してはいない。
現在の国会議事堂は『テロ集団』に占拠されているのだ。
一体なんの目的があって、今はどのようにしているのか……そもそも『テロ集団』が国会議事堂を制圧した際は『奴ら』──12門が襲来した為にゴタつきを見せた為に襲撃を受けた。
だが本来それを行うにはリスクが高すぎるのだ、だが『テロ集団』は実行した。
つまり、なにが言いたいか、そう、タイミングが良すぎるのだ。
国家が破綻するなどという馬鹿げた事態を事前に予見していなければ出来ない芸当だ。
荒れた呼吸を正しながら蓮子が徐に口を開いた。
「前からどうも国会議事堂はきな臭いと思ってたんですけど……ようやく確信に至りましたね」
「ああ、『テロ集団』じゃ語弊があるな……ここにいるのは『異能者集団』ってことか」
紫苑はこの確信に至ってから考えていた、ここにいる異能者に協力を仰げば十二門の一角、日本全域の支配者【辰】を打破出来るかもしれないのではないか。
本来ならば夢物語と一蹴される戯言だが異能者が束になれば、理想を現実に昇華出来るかもしれない、と
すると先程の少女が議事堂正門にある柱から眠たげな顔をぬっと出すと手招きのジェスチャーを始めた。
「こっちに来いってことか」
「紫苑?まさか行くなんて言うんじゃないだろうな、ありゃどうみたって罠だぜ」
一歩踏み出した紫苑の肩を天保が掴み押し留める。
「俺は、知りたいんだ、なんで『アイツ』がいなくなったのか。
その為ならなんだってする、越えちゃいけない一線だろうと越えてやる、だから俺は行くよ」
「……仕方ねぇ、わーったよ、全く…昔からお前は立ち止まるって事をしやしねぇ」
「悪いな」
「決まったみたいですね、それでは行きましょうか」
「そうだ、お前は意見とかないのか?」
「無論ですとも、私はそういう存在ですからね」
三人で苦笑し、柵を難なく飛び越える。
正門入口は至って正常で異能者集団に襲われた痕跡などは一切見つからない。
修復するような能力者がいるのか、それとも余程上手い戦い方が出来る暗殺者の類いでもいるのだろうか、それ程に十二門襲来前の姿を留めている。
緑髪の少女が柱から全身を現そうとしたその時
「───来る!」
少女が異変を感じると同時に紫苑達の元に疾駆し、上空から飛来した落下物を、キィンという甲高い金属音と共に弾き飛ばした。
弾き飛ばされ、アスファルトに打ちつけられた落下物、それは亀だった、甲羅の縦幅だけで十メートルはあるであろう巨大な、巨大な、亀。
「なんだ!?」
天保が驚愕の声を上げる。
それは飛来した亀に対してだろうか、それとも、それを弾き飛ばした少女にだろうか。
──否、その両方である。
「ぼさっとしないの〜」
初めて緑髪の少女が口を開いた。
外見通りの幼い声、しかしその服装は異質と言う他ないものだった。
この炎天下の中、薄桃色のゴスロリドレスを身に纏っているだけでも異様と言うべきだが、その手には両刃を煌めかせる一振りの刀剣が握られていた。
「一度目は助けが二度目はない、亀はお前達が倒せってフォウが言ってた。」
「どういうことだ」
この状況にあっても不思議と紫苑は落ち着いていた。
現実味を帯びていないこの光景を目の当たりにしても尚、紫苑は平静を保っていた。
──いや、平静と言うと、語弊がある。
平静なのは表面上、行動に出していないだけ、内面では嬉しいのだ、嬉嬉としていた。
理由はわからない、しかし、胸が高鳴るのを紫苑は感じた。
「おい!説明しろよガキ!」
「…………」
少女は答えずに霧の様に消えた。
『GYAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!』
すると甲羅に閉じこもっていた亀が怒気を孕んだ咆哮を放つ。
「消えちゃったし、どうやら手伝ってくれそうもないですね!」
「よな、今はこの現状をどうにかしなきゃいけない」
「チッ、やるっきゃねぇか」
天保は自分の握り拳を合わせ『力』を込める。
黒い瞳は赤色に変化し、口元には八重歯が覗いている。
そう、それは狼男やフランケンシュタインの怪物にも比肩する程の知名度を誇る人外の代表格、吸血鬼のそれだった。
普段から天保が日中傘をさしているのは吸血鬼としての特性、弱点が理由だった。
だが今はタイミングがよく太陽が雲によって遮られ影が差している、しかし何時までも日光が陰っている訳もないので当然の如くこの戦いは短期決戦を強いられる事となる。
「来い───宿痾」
紫苑は不治の病の名を冠する愛刀の銘を呼び、虚空より紫苑の手に一刀の日本刀が現れる。
「さーて、私もやりますか」
蓮子の全身が透過し、水の如く、霧の如く……実体を持たぬ幽霊となる。
各々の力を発現させ、魁偉な重亀と正面から対峙する。
「ハァッ!!!」
まず初めに動いたのは天保。
一気に距離を詰め、側面に回り込むと吸血鬼の膂力から成る素早く、そして重い打撃を叩き込むと、亀の巨躯が紙風船の様にフワリと持ち上がる。
「(……!表皮も相当に硬い)」
その刹那を紫苑と蓮子は見逃さない。
『私が賦課するは腐敗の呪い』
蓮子が瞬間移動よろしくと言わんばかりの速度で浮いた亀の腹部に触れ、霞の様に消える。
蓮子が触れた腹部が黒く、グジュグジュとグロテスクな音を立てて壊死していく。
「ぜあっっ───!」
黒く壊死した腹部を狙い澄まし、跳躍した勢いと共に──突く!
そのまま国会議事堂に亀ごと突っ込むという所で、唐突に何かに衝突するような衝撃が紫苑に走る。
「ぐっ、なんだこれは」
亀から剣を抜くとすぐ様飛び退く。
先程まで全く認識することの出来なかった壁は淡い紫色、その壁には幾つもの幾何学的な紋様が刻まれていたが、しばらくすると再び見えなくなった。
紫苑は壁から再び巨大な亀へと視線を移す。
亀からはまだ飢えた獣の様な荒い呼吸を繰り返しているが、際程の様な重圧な覇気は消え失せている。
その眼こそ光を失ってはいないが、肉体そのものが腹部から広がる壊死に耐えきれずに動けずにいる。
「何が目的で、貴方が何かもわかりませんが……慈悲です、私が手を下しましょう」
『させんよ』
闖入者と思われる声と共に一条の雷光が走る。
「くっ、次から次へとなんなんですか!」
衝撃で舞った砂塵から声がした。
『ふむ、花の香りを辿ってみれば我が愛児の苦悶が聞こえてな。
来てみれば……いるいる、いるではないか』
砂ぼこりが落ち着き、その中からとぐろを巻いた一頭の『龍』が現れる。
見るだけで総身の毛がよだつような姿を認識する同時に紫苑たちは戦慄した。
──アレには勝てない。と三人がわかってしまったから。
動けない、絶望感なまでの恐怖が動いてはいけないと全身の細胞が警鐘をならしている。
アレは明らかに本来存在しない者、幻想の類だ。
事実として龍は史実及び伝説には存在するが実在はしない、だが今ここに龍がいる。
つまり───
「お前が、お前が【辰】の星霊かぁぁぁぁぁ!!!」
紫苑が嚇怒を露わにすると即座に地に穴を開けるほどの踏み込みで龍に肉薄し全霊を込めた一撃を叩きこむ。
──だが
『まだ未成熟、喰らうには熟して貰わねば由無し物か』
その剣を凶爪の一つで受け止めていた。
「許さねぇ、お前だけは……絶対に!」
鍔迫り合いながら紫苑は下唇を軽く噛んだ
『クックッ、威勢のいい事よ、だがわかるだろう。
貴様はまだ未覚醒だ、我に傷の一つも付けられん』
すると足元に龍の尾が絡みつくと紫苑を正門の柵の方へ投げ捨て、紫苑は柵ごと車道に打ち出された。
「ぐっ、げほっげほっ」
思い切り口から血反吐を吐き散らしてしまう。
「紫苑!」
「しーくん」
それを見て、天保と蓮子が駆け寄ろうとするが。
『安心しろ、殺生まではせぬ……いいや「殺せない」か
【星の寵児】、その身体はいずれ、必ず余が……。
しかしそこな二人を生かす理由は介在しない故、その命頂こう』
そう小さく零すと龍の口に赤い光が灯り即座に──放つ!
目を焼くほどの輝きを放つ一条の閃光が二人へ逼る。
「「避けられない(です)!」」
「まさか、こんな餌で大本命が来てくれるなんて…僥倖の至りね」
二人の前に聞きなれない声と共に黒い流星が流れた。
それがなんだったのかすら二人は認識出来ずに直後、熱波が直撃し、地を揺るがす程の衝撃が走る。
砂塵が舞い、再び視界が遮られる。
「アメリカンヒーローが如く神籬参上!」
「は?」
「へ?」
まず二人が驚いたのは、自分が生きていること。
あの熱波に当てられたのならば一瞬のうちに骨も残さず蒸発させられていたところだっただろう。
二つ目は明らかに性格難な奴が出てきたということ。
これは……これ以上言うまい。
「ぼーっとしてないでそこでくたばってる男の子助けてあげなさいよ、龍は私が相手するからさ」
腰に届くほどの黒髪の長髪に右眼が碧眼、左眼が日本人らしい黒というオッドアイが特徴的な天保たちと同年代の少女だった。
服装は極暑の環境にも関わらずその髪とは対照的な白を基調としてところどころに蒼いラインの入った隊服を着込んでいる。
「あ、ああ、助かった」
呆気に取られながらも天保たちは紫苑に駆け寄る
「しーくん!」
二人が彼の元に着いたのを確認すると龍の方へと向き直り。
「や、九理、ちょっとぶりね」
友達に話しかける様に、龍にさえ砕けた口調で話しかけた。
『?ああ、記憶にあるぞ。この器の記憶に深く刻まれている』
「その器、返してもらえないかしら」
目をすぼめて龍を見つめる、その瞳は子を想う親のそれであり、彼女の切実な思いが感じ取ることは容易だった。
『返してやる道理はない』
龍は短く返した。
「なら九理と話させて!彼女本人の意思を聞かせて!」
声を張り上げて弁を返す。
『……それは無理だ、余は変わっても構わんが。
器の方が貴様を拒絶している』
「なんでよ!ねぇ!九理!」
『聞きたいなら、余と……器を引き剥がすのだな。
最も今はその時ではない、此度はここまでだ』
龍は伏していた亀と共に雷となって彼方へと飛んでいった。
「…………」
「なあ、あんた」
崖の淵に立っているかの様に恐る恐る天保が少女に話しかける。
「え?ああ、さっきはごめんなさいね。見苦しいところを」
「いえ、気にしてませんよ、それよりも今はしーくんを」
天保の背中におぶさっている紫苑を指さした。
少女は紫苑を一瞥すると。
「治療が必要ね、そんじゃ、付いてきて」
この少女の真意は定かではないが今はそれに縋るしかないと少女に促されるがまま、天保たちは国会議事堂の中へと入っていった。
お疲れ様でした〜
今回はそうですね、よくわからないことだらけだったと思います。
前回にもでた【星の寵児】とかね、【十二門】やら【存在者】とか、その辺の単語は次で説明するので乞うご期待。
この先の知名度にも寄るんですけど、二部構成なんですこれ。
まぁ一部でも敵12体いる訳ですし、そうそう終わらないんですけど、こういうのって12体倒してはいハッピーエンド〜(になるかはわからんけど)最終的に決まるわけじゃないですか。
その辺にちこっと【石ころ】投げるとですね、二部構成が出来てしまうんですよ。
読者様、すみません、何言ってるかわかりませんよね。
でも『石』も盛大なネタバレになるので控えさせて頂きマウス。
次の話ではようやくキャラ紹介及び、世界観に触れていくので待ってて下さいね〜